2017年の本田・ムルコス・パジュサコバ彗星 45P/Honda-Mrkos-Pajdusakova

 本田・ムルコス・パジュサコバ彗星(本田・ムルコス・パイドゥシャーコヴァー彗星)が2017年の2月中旬に、地球へ 0.08AU(*) まで近づきます。このため6等台まで明るくなり、双眼鏡でも観測できそうです。この機会に本田・ムルコス・パジュサコバ彗星を観測しましょう。

*AUは太陽系内での距離を表すのによく使われ、天文単位という。1AUは地球と太陽間の平均距離で約1.5億Km。

本田・ムルコス・パジュサコバ彗星とは

 本田・ムルコス・パジュサコバ彗星は、1948年に日本人の本田実氏と他2名によって発見された彗星です。符号は45Pと「P」がついており、軌道が確定している周期彗星です。公転周期は5.26年で、1959年を除いて2011年までに12回の出現が記録されています。

軌道

 彗星というと二度と帰ってこないものや、数千年から数万年という非常に長い公転周期を持つものが数多く存在しています。しかしこの彗星は、5.25年という非常に短い公転周期を持った短周期彗星です。
 
 地球と彗星の公転軌道が交わる傾きを示す軌道傾角は4度しかありません。惑星で最も大きい軌道傾角を持つ水星は7度ですから、本田・ムルコス・パジュサコバ彗星の軌道は、地球軌道面との傾きが小さいといえます。

明るさと距離

 下の図は本田・ムルコス・パジュサコバ彗星の光度変化を表したグラフです。これを見ると 2月10日前後に、6等台前半でピークを迎えます。これは彗星が地球に0.08AUと大きく近づくからです。その後は地球から離れるとともに、太陽からもどんどん離れていきますので、光度は一気に落ちていきます。

光度変化のグラフ

地球との距離

移動経路

 下の星図は2月に本田・ムルコス・パジュサコバ彗星が通る経路を示した星図です。彗星は星図上で左から右へ移動します。
 
 2月上旬はわし座にあります。この頃は動きが小さいですが、地球へ近づくとともに動きが大きくなまります。これに合わせて2月末にかけて、ヘルクレス座、かんむり座、うしかい座、りょうけん座へと順番に移動します。

見え方

 彗星は恒星と異なり、面積を持った天体です。このため本田・ムルコス・パジュサコバ彗星の見え方は全体的にぼんやりしており、光が拡散して見えます。肉眼や双眼鏡で探すときは、モヤモヤしたとらえどころのないボーツと光る天体を探してください。尾はあまり発達していないと思われますが、双眼鏡で見ると少し細長く見えるかもしれません。

 明るくなった頃は6等台前半の明るさです。肉眼で見える最微光星は6等星ですから、空が暗い山間部などで観測条件が整っても肉眼で見つけるのは難しいでしょう。最低でも双眼鏡が必要になります。

見える位置

 ここでは本田・ムルコス・パジュサコバ彗星が見える位置を紹介します。いつもより少し拡大し、暗い星まで表示した星図を載せておきました。

2月5日

 2月になると本田・ムルコス・パジュサコバ彗星が夜明け前の東天に姿を見せるようになります。2月5日の明るさは6.6等ですから、双眼鏡でも見つけられます。朝5時ごろには、わし座の1等星アルタイルの右側に見えますので、目印にされるとよいでしょう。月がなくて暗夜で観測できます。

2月8日

 2月8日の早朝4時ごろ、本田・ムルコス・パジュサコバ彗星が見える位置はほぼ真東の方角で、比較的低い場所です。東京では月が沈んだ直後ですから、以降1時間ほど暗夜で観測できます。明るい星が少ない領域ですので探すのに少し苦労するかもしれません。明るさは6.4等で、ほぼピークに達しています。

2月11日

 本田・ムルコス・パジュサコバ彗星が地球へ最接近する頃です。明るさは6.4等です。低空に見える2等星のラス・アルハゲから左上方向を双眼鏡で探すと、ぼんやりした天体が見つかるでしょう。月齢13.7の大きな月が夜空を照らしているのが残念です。

2月14日

 彗星が大きく移動した関係で、以前よりも早い時間帯に見られるようになっています。位置はうしかい座の「のし」を作るδ星(3.5等)の近くです。この星を目印にすると、すぐ右上に見つかるでしょう。少し離れますが、かんむり座の2等星ゲンマからたどるのもよいでしょう。今日も残念ながら、月齢16.6の大きな月があります。
 
明るさは6.8等と早くも暗くなり始めており、この後、彗星は一気に暗くなります。例えば3日後の17日には7.5等、1週間後の21日なら8.5等といった具合です。双眼鏡で見つけるのが難しくなってきますから、できるだけ早いうちに見ておかれることをおすすめします。

シミュレーション用データ

 これまで紹介した画像は天文ソフト「つるちゃんのプラネタリウム フリー版」を使って簡易的にシミュレーションすることができます。ソフト起動後、次のようにして彗星データの設定を行ってください。プログラムは当サイトトップページの[ダウンロードとご購入]から、無料でダウンロードしてご使用いただけます。(Windows版 PCのみ)

 1.プログラムを起動して表示設定画面を表示する。
 
 2.日時や観測地を適当に入力して[OK]ボタンを押す。
 
 3.プラネタリウムが表示されたらメニューバーより、[ツール]−[オプション]−[彗星データ設定]を選択。
 
 4.彗星データ設定画面の左下にある[次へ]ボタンを何度か押す。
 
 5.空白行へ下の画像のように「本田ムルコスパジュサコバ」のデータを入力する。
   ※左端のチェックボックスへチェックを入れること。
 
 6.[OK]ボタンを押せば設定完了。

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