みんなで皆既月食を楽しもう 2007年8月28日

 2007年8月28日には全国で皆既月食が見られます。全国で見られる皆既月食としては久しぶりな上に、観測しやすい時間帯の月食です。また、子どもさんは夏休み期間中ということもあり、みんなで楽しめる皆既月食ということができるでしょう。子どもさんの夏休みの自由研究にもピッタリかもしれませんね。
 
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ホゲ: 「夏休みの自由研究に」なんて言うけど、夏休みの終わりギリギリまで待って、当日雨が降ったらどないすんねん。
つる: た、た、確かに・・・。汗、汗、、、
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全国で見られる久しぶりの皆既月食

 皆既月食という天文現象。皆既日食とは違ってそれほど珍しくないはずなのですが、つるちゃん自身、「前はいつ見られたっけ?」と考えてしまいます。前回2004年5月5日こどもの日に起きた皆既月食は、西に位置する一部の地域でしか見られませんでした。全国で見られる皆既月食ということになると、2001年1月10日までさかのぼらなければなりません。6年も前になるんですね。
 
 「つるちゃんのプラネタリウム」がオープンしたのは2001年9月のことでしたから、当サイトとしては、初めてむかえる全国版の皆既月食ということになります。
 
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ホゲ: 前回の皆既月食から、もう6年にもなるんか。
つる: 前回は1月10日の早朝だった。冬の寒い時期にお前が早起きしたとは思えんけどなあ。
ホゲ: ばれたか!
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皆既月食って?

月食の起こる理由 月は地球のまわりを回っていますが、月が偶然、地球の影に入ってしまうことがあります。このとき、地球の影に入った部分は太陽の光が当たらなくなるので、地球から見た月は、影に入った部分が欠けて見え、月食となります。そして、月が地球の影の中にスッポリ入ってしまうと皆既月食になります。月食が起こる理由は右の絵も参考にしてください。
 
※絵はつるちゃんの著書「天体観測の達人」より引用しています。
 
 
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ホゲ: 月食って何なのか、よくわからん。
つる: 地球と月が、かくれんぼするということや。
ホゲ: なるほど。たまにはええこと言うなあ。
つる: 一言多い!
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地球の影を通る月

 先ほど、月が地球の影に入ると月食が起こると書きましたが、下の絵をご覧ください。今回の月食で地球の影を通過していく月の経路を示しています。本影と書かれた赤い丸の中へ月が入ると月食になります。半影と書かれた黄色い部分は、太陽の光が一部届いている影です。この中へ月が入っても月食にはなりませんので注意してください。(実際には半影月食とよばれ、写真撮影すると確認することができますが、肉眼では難しいでしょう)
 
 月は19時半過ぎごろに地球の影の最も奥へ入り込むことがわかります。実際には19時37分が食の最大です。また、緑色で書かれた小円は、東京で月の出となる18時12分の月の位置を表しています。月の一部が本影にかかっており、月の出の頃には既に月食が始まっていることがわかります。

地球の影を通る月の経路

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女: 丸がいっぱい並んでおだんごみたい。
男: 君は甘いもんが好きだな。太るゾ。
女: もう〜。

つる: 月食の説明をしている時にイチャイチャするなっちゅうねん!
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欠けた状態で月の出

 今回の月食では、月の出となる頃には既に月食が始まっています。このような月食は月出帯食とよばれています。下の絵は各地における月の出となる頃の月食のようすです。西の地域ほど月の出の時刻が遅れるので、その分だけ月食が進行しており、月は大きく欠けた状態で東の空から昇ってきます。ただしこれは、日の入り直前頃の出来事ですので、月の形をハッキリととらえるのは少し難しいかもしれません。

札幌の月の出   東京の月の出   大阪の月の出   福岡の月の出
札幌での月の出   東京での月の出   大阪での月の出   福岡での月の出

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女: おだんごあげるね。はいっ。
男: あ〜ん。

つる: お前ら〜〜〜!!!
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月食の経過

 日食の場合と違って、月食の経過は全国どこで見てもほとんど同じです。欠け始めは17時51分ですが月はまだ地平線下です。その後、月食のまま月の出をむかえますが、月の出の時刻は地域によって異なります。月が昇ってから月食は進んでいき、約1時間後の18時52分に皆既月食が始まります。この時、東京の場合で月の高度は7度しかありません。低空は地球の大気の影響を受けたり雲が出やすかったりで、必ずしも良い条件とはいえません。
 
 また、皆既をむかえてからも空はまだ薄明中で、空が完全に暗くなりきっていません。ですから、こちらの面からもあまり良い条件とはいえません。良い条件下でじっくりと皆既月食を楽しみたい方は、空が暗くなって月の高度も高くなる、食の最大(19時37分)以降が良いかもしれません。
 
 皆既は1時間半ほど継続し、20時23分に皆既が終わります。この頃には月の高度も東京の場合で23度まで高くなっています。その後月は次第にもとの状態に戻っていき、21時24分に月食は終了します。
 
 月食の進行状況は下の絵を参考にしてください。なお、東京以外の地域でもほとんど同じような経過をたどります。日食とは違って、月食の場合は観測地が違うから欠け方も違うというようなことはありません。

月食の進行のようす(月食の始まり頃〜皆既の始まり頃)
月食の進行のようす(前半)
月食の進行のようす(皆既の終わり頃〜月食の終わり頃)
月食の進行のようす(後半)

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女: 月食を見てたら蚊にかまれちゃった。
男: 僕も蚊になりたいなあ。
女: 何言ってるの。バカッ。

つる: へへっ。ええ調子やんけ!
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各地のデータ

 日本各地で月食の進み方(欠け方)は同じですが、月の出となる時刻や月の高度は、観測する場所によって違ってきます。下表へ主な地点の観測データをまとめておきましたので参考にしてください。

観測地 月の出 日の入り 薄明終了 月の高度※
皆既始まり頃
18:52
食の最大頃
19:37
皆既終わり頃
20:23
月食終わり頃
21:24
札幌 18:15 18:18 20:01 6度 13度 20度 28度
仙台 18:11 18:14 19:47 7度 15度 23度 32度
東京 18:12 18:15 19:45 7度 15度 24度 33度
金沢 18:26 18:29 20:00 4度 13度 21度 31度
大阪 18:28 18:31 19:59 4度 13度 21度 31度
広島 18:40 18:43 20:11 2度 10度 19度 29度
福岡 18:48 18:50 20:17 0度 9度 18度 29度
那覇 18:52 18:54 20:14 −1度 9度 19度 31度
※月の高度は大気差を考慮していません。

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男: 薄明が長く続いたから、月食の前半は少し見づらかったね。
女: 薄明って何?
男: 空が完全に暗くなりきっていない状態のことさ。
女: へえ〜。(彼って頭いいかも)

つる: お前らの仲は薄明じゃなくて薄命や。ギャハハハハッ。
男、女: バコッ!! (つるちゃん、殴られた)
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月食を見るときの注意点

 今回の月食を観測する際には次のような点に注意しましょう。

東から南東の方角が開けた場所で
 今回の月食では、月の出の時点で既に月食が始まっています。月は東の空から昇るのでしたね。その後月は少しずつ南東の空へ移動していきます。また、月の高度は皆既月食が始まる頃で、東京で7度、大阪で4度という厳しさです。
 
 ということは、東から南東の方角が開けた場所でないと、月食を見ることはできないということです。当日になってからあわてないように、あらかじめ東から南東の方角がよく見通せる場所を探しておきましょう。
月の色の変化に注目
 先ほど地球の影に入った月は欠けて見えると書きました。それでは、皆既月食になると月は完全に見えなくなってしまうのでしょうか。実は、そんなことはありません。波長が短い青い光は地球の大気によって散乱されて月には届きませんが、波長が長い赤い光は屈折しながら地球の大気を通過し、月をほんのりと赤く照らすからです。
 
 そんなわけで、月食では食が進むにつれて月の色が次第に赤っぽく変化していきます。欠け始めの頃の月は普段の月と同じ色をしていますが、次第に赤みを帯びてきて、皆既月食となる頃には赤銅色に変わります。しかし、この赤銅色も月食のたびに色が異なり、灰色に近い場合もあれば、赤っぽい色に見える場合もあります。これは地球の大気に含まれるチリや水蒸気などが影響しているのではないかといわれています。果たして今回の皆既月食では、月はどんな色に見えるのでしょうか。
双眼鏡か天体望遠鏡で見てみよう
 もし双眼鏡や天体望遠鏡で月食を観測することができれば、肉眼で見るよりもハッキリと、せまりくる地球の影をとらえることができて迫力も倍増します。お近くの天文施設や同好会などでは観望会が開催されていることもありますので、一度問い合わせでみましょう。
 
 双眼鏡や天体望遠鏡で観測した場合、通常の半月や三日月ではクレーターが見えます。しかし、月食により欠けて見える月は、クレーターがよくわかりません。
 
 通常の半月や三日月の場合は太陽の光がななめから当たるので影ができ、立体的にクレーターが浮かび上がって見えます。これに対して、月食中の月の場合は満月ということもあり、太陽の光は正面から当たっています。したがってクレーターに影ができないため識別しにくくなるのです。
 
 月食中の月はクレーターが見えなくて面白みに欠けるかもしれませんが、この辺りにも注意して見られるとよいでしょう。
皆既月食中に起こる星食
 今回の皆既月食にはオマケがついています。なんと、皆既月食中に恒星食が起こるのです。月に隠されるのは、みずがめ座σ(シグマ)星という4.8等の恒星です。詳しくは、次のリンクをご覧ください。
 
  皆既月食中に起こる恒星食

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男: 月食中の月は赤っぽくてきれいだね。
女: うん。とってもきれい・・・。
男: 僕らの仲も、だんだん赤く染まってきた・・・。
女: ・・・。 (黙って、男に寄りかかる)
 
そして、
そして、、
二人は、、、
 
つる: パンパカパ〜ン。お二人さん、おめでとうございます!
男、女: うるさいっちゅうねん。 ムードぶち壊し! バコッ!! (つるちゃん、また殴られた)
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今後の月食

 今後はどのような月食が見られるのでしょうか。東京で見られる月食を調べてみますと、2008年8月17日に食分0.8の月食が見られますが、最大食となる前後に月の入りとなってしまいます。皆既月食は2010年12月21日に起こりますが、今回のように月は大きく欠けた状態(地域によっては皆既の状態)で昇ってきます。その次の皆既月食は2011年6月11日ですが、こちらは皆既のまま沈んでしまいます。最初から最後まで楽しめる皆既月食ということになると、2011年12月10日まで待たねばなりません。

 「つるちゃんのプラネタリウム for Javaアプレット」の中にある日食と月食を使って、月食の様子をシミュレーションしてみましょう。アプレットの画像表示後、次のように操作してください。
 
  1.あなたのお住まいの場所に近い地点へ観測地を変更
  2.食の種類を[月食]へ変更
  3.2009年の日付になっているので[前回検索]ボタンを2回押す
  4.適当に時間などを変更してみてください
 
※上の絵は、主に「天文ソフト つるちゃんのプラネタリウム」のシェア版による画像を使用しています。(若干の誤差を含みます)

それでは皆さん、皆既月食を楽しく観測しましょう!

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