ちょっとマニアックな楽しみ方 2014年10月8日

 2014年10月8日の皆既月食で、ちょっとマニアックな楽しみ方を紹介します。

場所によって欠ける方向が違う

 月食では、場所によらず食の進行(欠ける割合)は同じですが、欠ける方向は少しだけ違います。欠け始めの頃は各地とも同じように左下方向が欠けていて、ハッキリした違いはわからないかもしれません。しかし終了が近づいた頃で比較すると、札幌では右方向からやや下側が欠けているのに対し、那覇では右方向からやや上側が欠けていますね。
 
 あなたの地域ではどの方向が欠けるでしょうか?

月食開始から5分後、月が欠ける方向を比較

月食終了から5分前

皆既中の月と天王星が並ぶ

 この日、月が天王星に0.9度まで近づいています。月の視直径はおよそ0.5度ですから、月を2個並べたくらいの間隔です。双眼鏡なら同一視野で見ることができるでしょう。
 
 天王星の明るさは5.7等しかありませんから、理想的な条件でも肉眼で見るのは難しいとお考えください。通常ですと、満月のすくそばにある天王星は、肉眼はおろか、天体望遠鏡を使っても見えないでしょう。しかし、皆既中は月の光が和らぎますから、双眼鏡や天体望遠鏡を使えば見えなくもありません。天王星を見つける絶好の機会ですよ!
 
 ということで、皆既中の月と天王星を同時に楽しまれてはいかがでしょうか。下の星図を参考に、うお座のδ星やε星との位置関係から探してください。

皆既が始まる頃、天王星は月の右隣にある

半影月食を見よう

 半影とは、地球が作る影のうち、太陽光の一部が月に届いている影のことです。半影に入った月面から太陽を眺めると、地球によって部分日食が起こった状態になっています。地球で部分日食になっても、地表は明るいままですね。同じように半影に入った月面は、それほど暗くなりません。したがって、肉眼で見ても半影月食になっているとは、なかなか気づきません。しかし、方法はあります。
 
 本影月食が始まる少し前ごろ、欠け始める方向に注目しましょう。月がなんとなく薄暗くなっているのがわかりませんか。これは、半影月食になっている証拠です。双眼鏡や天体望遠鏡で観測するとわかりやすいでしょう。さらに写真撮影すると、よりハッキリとわかります。
 
 下の図は月食開始5分前、18時9分における月の位置を示したものです。本影は赤いエリアで、半影は薄い黄色で示されています。当日は、本影に近い月の左下と、まだ半影にも入っていない右上を見比べてくださいね。 

本影食が始まる5分前

双眼鏡や天体望遠鏡を準備

 皆既中の美しい月をじっくり観測しようと思ったら、やはり天体望遠鏡に勝るものはありません。といっても天体望遠鏡は大掛かりになってしまいますから、双眼鏡をお持ちの方はそれでもよいでしょう。
 
 いずれも肉眼で見た場合よりも大きく拡大されて細かい部分が見えますから、感動の度合いが違います。特に天体望遠鏡を通して見た皆既中の月は、同じ月面上でも場所によって色合いや明るさが違っているのがハッキリとわかり、格別なものがあります。肉眼よりも双眼鏡。双眼鏡よりも天体望遠鏡がオススメです。

見えないクレーター

 天体望遠鏡を使って欠け際を観測してみてください。クレーターが見えるかな? と思いきや、ハッキリしません。デコボコがわからず、むしろツルッとした印象ですが、これには理由があります。
 
 普段なら欠け際付近は太陽光が斜めから当たるので影ができ、クレーターが立体的に見えます。ところが月食中の月はあくまでも満月です。太陽光が月の正面から当たって影ができないため、立体的に見えないのです。

星座が見える

 満月ごろの月明かりは強烈ですから、暗い星はよく見えません。しかし、皆既月食になると月の光が和らぎ、星座がよく見えるようになります。次の星図をご覧ください。最大食を迎えた頃は東の空で、秋の星座が勢ぞろいしています。皆既は1時間ほど続きますから、星座も楽しんでみられてはいかがでしょうか。

皆既が始まった頃、東の空には秋の星座が勢ぞろい