暗い月食

 「皆既月食中の月は赤銅色になる」などと表現されますが、実際の色や明るさは毎回異なります。特に暗い月食は、火山の噴火によるケースが多いと言われています。

1993年の皆既月食

 暗い月食の例としてよく引き合いに出されるのが1993年6月4日に起きた皆既月食です。この時の最大食分は1.5617で、地球本影の奥まで入り込むものではありましたが、特筆すべきほどのものではありません。それにもかかわらず、近年では月の明るさが最も暗い皆既月食でした。

暗かった皆既月食の例 1993年6月4日

ダンジョンスケール

 皆既月食中の月の明るさと色合いを示すのにはダンジョンスケールが使われます。0は最も暗く、肉眼では月がほとんど見えなくなるぐらいに暗い月食です。そして、1、2、3と大きくなるにつれて月は明るくなります。4が最も明るくて、月の色は赤銅色やオレンジ色となります。

火山の影響

 先に紹介した1993年6月4日の月食は、ダンジョンスケールが1.0から1.3程度という、近年ではほとんどないくらいに暗い月食となりました。これは、2年前に起きたフィリピンのピナトゥボ火山の大規模な噴火が影響したと言われています。つまり、噴火によって大気中に撒き散らされたチリによって太陽光が遮られ、通常の皆既月食時の10%以下の光しか月に届かなかったのです。

 それ以前にも、1761年5月18日にスウェーデンで見られた月食では、望遠鏡でも見えないほど暗くなりましたが、これは、インドネシアのマキアン火山の噴火が影響していると考えられています。

 また、1982年12月30日の皆既月食では、つるちゃん自身も体験しましたが、月の色が灰色に見えました。そして、気をつけないと月の存在に気が付かない程度の明るさしかなくて、非常に驚かされたことを覚えています。これは、メキシコにあるエルチチョン火山の噴火によるものでした。