アークトゥルス

 ゴールデンウィークの頃、東の空の中ほどよりもやや上方を見上げると、オレンジ色をした明るい星がすぐ目に止まります。この星がうしかい座の1等星アークトゥルスです。
 
 アークトゥルスは1等星の中でもさらに明るい0等星に分類されます。春の星座の中で、アートゥルスが一番明るく輝いて見えるのも当然でしょう。

星名 学名 星座 バイヤー符号 フラムスティード番号 赤経 赤緯 実視等級 絶対等級 距離 スペクトル型
アークトゥルス Arcturus うしかい座 α星 16番 14h15m40s +19゜10’57” -0.04等 −0.30等 36.7光年 K0

アークトゥルスの位置を示した星図

熊の番人

 アークトゥルスはアルクトゥルス、アルクトゥールスなどともよばれますが、ギリシャ語のアルクトウロスからきています。その意味は「熊の番人」。なるほど確かに、おおぐま座の後ろから熊を追い立てているように見えなくもありません。

麦星

 日本での和名は、麦刈りが行われる頃の宵の空に天高く輝くことから、「麦星」と呼ばれています。同じようなよび方に「麦刈り星」があります。
 
 他には梅雨のころに頭上で輝くことから五月雨星(さみだれぼし)とよばれたり、地方によっては赤い顔をした天狗に見立てて狗賓星(ぐひんぼし)とよばれることもあります。

春の大三角

 アークトゥルスはしし座のデネボラ、おとめ座のスピカとともに春の大三角を形作っています。春の大三角は冬の大三角よりもひとまわり大きな三角形です。

春の大曲線

 北斗七星の柄の先にある3つの星のカーブをそのまま延長すると、春の大曲線となります。春の大曲線から最初に見つかる星がアークトゥルスになります。

春の夫婦星

 だいだい色のアークトゥルスと、青白い色をしたスピカは、とてもよい対比をなしています。そこでアークトゥルスを男性に、スピカを女性に見立て、二つの星を合わせて「春の夫婦星」とよんでいます。

赤色巨星

 アークトゥルスはオレンジ色に見えていますが、これは表面温度が4600度ほどしかないためです。その直径は太陽の26倍もあり、明るさは太陽の113倍もあるという、赤色巨星の明るい星です。

大きな固有運動

 夜空に見える恒星は不動のものと思われるかもしれません。しかし固有運動によって、ほんの少しずつですが、それぞれの速さでバラバラな方向に動いています。

 アークトゥルスは大きな固有運動を持つ恒星(高速度星)として知られています。1年あたりに2.3秒ずつ移動しており、5万年も経てば、アークトゥルスはスピカの隣で輝くことになります。実際、1718年に天文学者ハレーは、2千年前にトレミーが記録したアークトゥルスの位置とズレていることに気づいたそうです。「つるぷらが描く珍しい天文現象」の中にある固有運動による50000年後の星空でも紹介しています。

このことは、「つるちゃんのプラネタリウム for Javaアプレット」の中にある過去と未来の星座−2−でシミュレーションすることができます。設定を下のように変更してみてください。
 
  日時:5月1日21時00分
  過去・未来:5万年後
  星名にチェックを入れる