秋も深まった頃、南天の低い空に白く冷たく光る1等星がすぐに見つかります。これがフォーマルハウトです。東京付近の緯度では南中する頃でも25度くらいの高度にしかなりません。
緯度が高いヨーロッパ北部まで北上すると、フォーマルハウトは地平線近くギリギリにしか見ることができません。このため日本でのカノープスのような憧れの存在となっています。
別の探し方として、ペガススの四辺形の西側にある2つの星を南側へ延長していくと、フォーマルハウトに行き着きます。
星名 | 学名 | 星座 | バイヤー符号 | フラムスティード番号 | 赤経 | 赤緯 | 実視等級 | 絶対等級 | 距離 | スペクトル型 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
フォーマルハウト | Formalhaut | みなみのうお座 | α星 | 24番 | 22h57m39s | −29゜37’20” | 1.16等 | 1.73等 | 25.1光年 | A3 |
秋の星座の中で1等星はフォーマルハウトだけしかありません。その上この星が属するみなみのうお座付近には、これといって明るい星もなく、ただ一つフォーマルハウトだけがポツンと寂しげに光っています。そんなわけでフォーマルハウトは「秋のひとつ星」とよばれています。他には、「南のひとつ星」とよばれることもあるようです。
フォーマルハウトはアラビア語のファム・アル・フート・アル・ジャヌービーを略したファム・アル・フートからきていますが、これは魚の口という意味です。星座絵で見ると、みずがめ座から流れ出た水は、みなみのうお座の口の中、ちょうどフォーマルハウトのある付近へと吸い込まれていきます。
赤外線望遠鏡スピッツァーの画像(提供:NASA/JPL)によると、フォーマルハウトのまわりには回転する巨大な塵でできた円盤が存在します。これは、フォーマルハウトが生まれてから2億年しか経っていない若い星だからです。円盤は133天文単位から158天文単位の距離にリング状に広がっていると考えられましたが、その後アルマ望遠鏡の観測により、もう少し幅が狭いことが確認されています。
フォーマルハウトを取り巻く塵の円盤は、惑星が形成された後に残った残骸ではないかと考えられており、太陽系でいうと、エッジ・カイパー・ベルトに相当するようなものではないかと言われています。
また、ハッブル宇宙望遠鏡によって撮影された画像を分析したところ、惑星の存在が確認されました。これは可視光によって太陽系外の惑星を観測した初めての事例となり、フォーマルハウトbと名づけられました。
この惑星はおよそ2千年かけて公転しているとみられます。フオーマルハウトb(その後、Dagonと名付けられた)は、直接観測で初めてみつかった太陽系外の惑星として知られています。
提供:NASA