カストル

 真冬の宵の空で東天を見上げると、同じくらいの明るさを持つ明るい星2つが、斜めに並んでいるのが目につきます。これはふたご座のカストルとポルックスです。このうち、カストルは上側の星になります。

星名 学名 星座 バイヤー符号 フラムスティード番号 赤経 赤緯 実視等級 絶対等級 距離 スペクトル型
カストル Castor ふたご座 α星 66番 07h34m36s +31゜53’18” 1.58等 0.62等 64.1光年 A1

カストルの位置

双子の頭

 カストルはギリシャ神話に登場する双子の兄弟のうち、兄の名前です。アラビア語でも「ふたごの兄の頭」という呼び名があります。星座絵で見るとカストルとポルックスは、双子の兄弟の頭の部分で輝いています。

ギリシャ神話

 ギリシャ神話では、カストルとポルックスは、大神ゼウスとレダの間にできた2つの卵のひとつから生まれてきた双子の兄弟です。カストルは兄でポルックスは弟になります。二人がアルゴ船に乗り込んでコルキスへ金の羊の毛皮を奪い返しに行った冒険の話は有名です。弟のポルックスは不死身な体をしていたのですが、兄のカストルが戦いで亡くなると、ゼウスに頼んで双子の星座にしてもらったのだそうです。 

カストルは2等星

 カストルはポルックスに比べるとやや暗いのですが、その差は0.4等ほどしかありません。しかし、ポルックスは1.15等星なので1等星に分類されます。これに対し、カストルは1.58等星なので2等星に分類され、差がつけられてしまっています。

六重星

 カストルを天体望遠鏡で見ると、2.0等星と2.8等星の星が7秒の間隔を開けて並んだ二重星であることがわかります。実際この2つの星は、445年の周期でお互いの周りを回りあっています。詳しい観測によると、これら2つの星はそれぞれが9.2日と2.9日の周期で互いに回りあう連星系であることがわかっています。つまりカストルは、四重星ということになります。
 
 さらに面白いことに、これらの四重星から1000天文単位ほど離れた場所には、0.8日周期で回りあう9等星の連星系が、1万5千年の周期で四重星の周りを回っているそうです。結局カストルは六重星ということになります。実にややこしい星ですね。