そろそろ秋も終わりに近づいた頃、宵の空でくじら座が南中します。ギリシャ神話に登場するくじら座は普通の鯨ではありませんで、アンドロメダ姫を襲った恐ろしい怪物です。ミラはそんなくじら座の心臓の部分に位置しています。
星名 | 学名 | 星座 | バイヤー符号 | フラムスティード番号 | 赤経 | 赤緯 | 実視等級 | 絶対等級 | 距離 | スペクトル型 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
ミラ | Mira | くじら座 | ο星 | 68番 | 02h19m21s | −02゜58’40” | 2.0−10.1等 | 0.93等? | 299光年 | M0 |
ミラはラテン名で「ステラ・ミラ」といいます。これは「不思議な星」という意味で、ミラは変わった星です。
星図を見ると、ミラは2等星のο星として記載されていますが、実際には10等星くらいにまで暗くなってしまうことがあるという、大きく明るさを変える変光星です。
最初にこの星の異常な振る舞いに気づいたのはドイツのデビッド・ファプリチウスです。1596年8月13日に水星を観測した際、明るくなったミラを見つけました。この時、昔の星図にミラが載っていないことを不思議に思ったのです。きっと新星に違いないと思ってこの星を調べ始めましたが、その後ミラは見えなくなってしまいました。しかしその後、1609年2月15日に再び同じ位置でミラを発見しました。これによってミラは明るさを変える星ではないかと考え、最初の変光星発見となったのです。
ミラは約332日という長い周期で2.0等星から10.1等星まで大きく明るさを変える変光星です。その周期や極大の光度は必ずしも一定しているわけではありません。2007年2月17日には1.9等星まで増光して、非常に明るい極大となりました。
ミラが変光するのは、ミラ自身が大きく膨らんだり小さく縮んだりすることによります。大きく膨らむと密度が下がって、核融合反応が起こりにくくなり、その結果ミラは暗くなります。逆に小さく縮むと密度が上がって、核融合反応が活発になり、ミラは明るくなります。このような現象は、恒星の一生の最後の段階を迎えて星自体が不安定になった赤色巨星に多く見られる現象です。このような原因で変光する星のことを脈動変光星とよび、変光周期が長いものをミラ型長周期変光星とよんでいます。
ミラが大きく膨らんだ時は、太陽の大きさの400倍もの大きさになる巨星です。これは火星の軌道まで飲み込んでしまうほどの大きさです。小さくなった時でも太陽の250倍もの大きさがあります。ミラには13光年にも達する彗星の尾のような構造が見つかっています。これはミラが高速で星間を移動しながら収縮する際に、外層部が取り残されたものではないかと考えられています。
ミラには0.9秒離れたところに10等星の伴星があり、ミラBとよばれています。この伴星はミラから150天文単位離れたところを750年の周期でミラの周りを回っている実視連星です。ミラBも明るさを変える変光星で、白色矮星ではないかと考えられています。