バレンタインデーに見る星空 2003年

 今年もやってきますねぇ、バレンタインデー。といっても、つるちゃんはあまり気合が入らないので、適当に解説しておくことにします。

(全然やる気ないぞ、興味ないんか)
−−>ふふっ、そういうふりをしているだけや。でないと、全国の女性ファンに申し訳ないやろ。
(ウソつけー! 言うてて恥ずかしないんか?)
−−>・・・。(泣)

東の空

バレンタインデー、20時頃の東の空

2003年バレンタイデーの月

最初は月から

 今年のバレンタインデーは、満月1日前の大きな月が夜空を照らしています。まずは、この月から見ていくことにしましょう。

 夜の20時頃なら、お住まいの地域によって多少の違いはありますが、月は高度60度付近に見えるはずです。そして今この時間、月の見えている方角が東となります。月の形は右のように見えます。ほぼ満月といってもよいでしょう。月の「うさぎのもちつき」を見るには満月頃が良いのですが、月の光っている面積が大きくなる分、その月明かりによって夜空は明るく照らし出され、暗くて小さな星たちは見えなくなってしまいます。

木星も見えるよ

 月を見た後は、そのまま視線を20度ほど下げてみましょう。付近のどの星よりも明るく金色に輝く星がすぐに見つかることと思います。この星は木星です。木星は太陽系で最も大きな惑星として知られていますが、それだけに地球と太陽の距離の5.2倍も離れた軌道を回っているにもかかわらず、明るく輝いて見えます。

 木星は英語読みをするとジュピターとなりますが、これはギリシャ神話に登場する大神ゼウスを意味します。ゼウスは神々の中でも一番偉い神様なのですが、たいそう女好きな神様だったようで、あちこちで恋物語を展開します。例えばギリシャ神話の英雄ヘルクレスは、ゼウスの愛人(?)アルクメーネに産ませた子供です。

ふたごの兄弟星

 今度は月の左側やや上方向へ目を移しましょう。良く似た明るさの星が2つ、斜め方向に並んでいるのがわかるかと思います。これはふたご座カストルポルックスです。両者の明るさの違いは0.4等ほどですから大差ありませんが、言われてみれば右下のポルックスの方が少し明るいかなという気がします。

 ギリシャ神話では、ふたご座は先に登場した大神ゼウスとレダとの間にできた卵から生まれたふたごの兄弟です。弟のポルックスは不死身な体をしていたのですが、兄のカストルが戦いで亡くなると、ゼウスに頼んでふたごの星座にしてもらったのだそうです。

南の空

 今度はグルリと体を90度、右方向へ回転させましょう。今あなたが向いている方角は南になります。南の空には冬の夜空を謳歌するかのように、きらびやかな冬の星座たちがたくさん見えます。

バレンタインデー、20時頃の南の空

オリオン座を見つけよう

 冬の星座は明るい星が多くて華やかなのですが、中でも特に豪華な星座がオリオン座です。1等星2個と、2等星5個で構成されており、鼓に似たその形や、中央に並んだ三つ星は非常に美しく、天上の芸術作品といっても過言ではありません。そんなオリオン座が、バレンタインデーの20時頃にちょうど南中します。

 まずは星の色に注目してみましょう。左上の1等星ベテルギウス、右下の1等星はリゲルといいますが、ベテルギウスの方は赤色で、リゲルの方は青白い色をしています。色が違って見えるのは、星の表面温度の違いによります。ベテルギウスは3800度と低温であるのに対し、リゲルは12000度もの高温です(ちなみに太陽は6000度です)。

 次に、オリオン座の中央部に3つの星が並んだ三つ星の下あたりを見てみると、小さな星が縦に3つ並んでいるのがわかります。この3つの小さな星は小三ツ星などと呼ばれていますが、その真ん中の星をよく見ると、ボーッとした小さな雲のように見えます。これが有名なオリオン星雲です。ここでは星が次々と誕生していて、星の苗床といったところでしょうか。ただし、この日は月明かりが大きいので、肉眼でオリオン星雲を確認するのは難しいと思います。月のない暗夜にもう一度チャレンジしてみてください。

 オリオンはギリシャ神話では、名高い狩人です。しかし、「この世でおれ様ほど強い者はいない」と、いばりちらしたので、神々の反感をかってしまいました。そしてオリオンのもとに、毒さそりが放たれたのです。オリオンはさそりに刺されて毒が回って死んでしまいました。その後、さそりもオリオンも星座となりましたが、今でもさそりが東の空から昇ってくる頃になると、オリオンは西の方へ隠れて沈んでいくのだそうです。

冬の大三角

 オリオンの左方向にはこいぬ座のプロキオン、オリオンの左下方向にはおおいぬ座のシリウスという1等星があります。これに先ほどでてきたオリオン座のベテルギウスを加えると大きな三角形ができますが、これが冬の大三角です。冬の大三角は正三角形に近い形をしているのが特徴です。また、冬の大三角の一番下側に位置するシリウスは、全天で一番明るい恒星で、その明るさはマイナス1.4等星に達します。ギラギラと輝いている、そんな表現がピッタリな星です。

土星も見えるぞ

 今度はオリオン座の上方へ視線を上げてみましょう。見上げていると首が痛くなるほどの、高度75度から80度付近には、土星が見えています。土星の明るさは0.4等星と明るいので、簡単に見つけられるはずです。オリオン座上方で鈍く黄色に光っている明るい星があれば、それは土星と思って間違いありません。高度80度付近にはもうひとつ、ぎょしゃ座のカペラという明るい星も見えていますが、こちらは黄色ですし、オリオン座からたどると、体をそり反らせないと見えないので、間違うことはないと思います。

 天体望遠鏡で見ると、土星は環を持った天体であることがスグにわかります。天体望遠鏡が押入れの奥で眠っている方はいませんか? そんな方はぜひこの機会に天体望遠鏡を引っ張り出して、土星をのぞいてみてください。きっと感激を新たにすることと思います。

北の空

 最後に、回れ右をして180度反対の方向を見てみましょう。今度見るのは北の方角になります。

バレンタインデー、20時頃の北の空

北斗七星

 北東の空低くには、あの有名な北斗七星が昇ってきています。ひしゃく型をした、小中学校の教科書にも出てくる、あの北斗七星です。2等星6個と、3等星1個という明るい星で構成されている上に、特徴のある星の並びをしているので、簡単にわかるかと思います。北極星をはさんだ反対側には、W字型で有名なカシオペア座も見えていますので、両方いっしょに見ておくとよいと思います。

 北斗七星やカシオペア座からは、北極星を探すことができます。探し方は下のリンクを参照してください。

   北極星の探し方

北極星

 真北の方角には、いつものように2等星の北極星が見えるのですが、うまく探せましたか。よく北極星は「北の空で動かない星」とか、「全ての星は北極星を中心に回っている」といったことが言われますが、これは北極星が地球自転軸の延長方向(天の北極といいます)にあるためです。そんな北極星ですが、実は2つの意味で北極星も動いているんですよ。

 北極星は天の北極から0.8度ほどズレでいます。ですから、長時間見ていると、北極星自身も小さな円を描きながら少しだけ移動しています。これが1つ目です。

 そして2つ目ですが、地球の自転軸は約2万6千年の周期で少しずつブレています(歳差運動といいます)。ですから、北極星は少しずつ天の北極から移動していき、遠い将来は別の星が北極星となります。例えば1万2千年後には、あの織姫星(こと座のベガ)が北極星になるんですよ。その様子は、「つるちゃんのプラネタリウム for Javaアプレット」の中にある「過去と未来の星座−1−」でシミュレーションしてみてください。

注:ここで、ラブラブなふたりを目指すあなたに重要な注意事項があります。今お話したような話を、デート中には決してしないようにしましょう。

  男 「ほら、あれが北極星だよ。」
  女 「わぁ、きれい!」
  男 「空に見える星は、全て北極星の周りを回っているんだ。」
  女 「へえー。」 (彼って頭いいかも)
  男 「でも、北極星は天の北極から0.8度ずれているから、北極星自身も少しだけ動くんだ。」
  女 「そうなの?」 (何だかわけわかんない)
  男 「地球の自転軸は約2万6千年の周期で動いていて、将来は北極星が北極星でなくなる日が来るんだ。」
  女 「はー??」 (2万6千年? この人、絶対に変!)
  男 「つるちゃんのプラネタリウムでは、それをシミュレーションできるんだよ。今度一緒にやらない?」
  女 「やりたくない。こんな天文オタクはもうイヤ!」

 ここでは20時の星空ということで解説しましたが、「他の時間帯ならどう見えるんだ」と言われる方がいるかもしれませんね。そんな方は、「つるちゃんのプラネタリウム for Javaアプレット」の中にある「万能プラネタリウム」で、別の時間に星座がどのように見えるのかを表示させてみましょう。

つるちゃんのプラネタリウム バレンタインデーの星空