ゴールデンウィークに星を見よう

 季節のいい時期にまとまって休みの取れるゴールデンウィーク。普段だとなかなか腰が重くてお出かけできない人も、「ゴールデンウィークだし、ちょっと出かけてみよう」なんていう人も多いのではないでしょうか。山間部や田舎へ泊まりで出かけるという方は、夜にちょっと空を見上げてみてください。普段とは全く違った素晴らしい星空の世界に、きっと感動されることでしょう。お出かけの人はもちろん、お出かけでない人も、このゴールデンウィークという機会に、夜空の探索なんていうのもいいかもしれませんよ。

21時頃の星空

西の空

5月3日21時頃 西の空の様子

 ゴールデンウィークともなればすっかり春ですね。夜空の方でも、冬の夜空でいばっていた冬の星座たちは、すっかり西の空へと傾き、冬の夜空の象徴であった冬の大三角も半分地平線へ沈んでしまっています。冬の星座の王者オリオン座も、ベテルギウスを残して西の空へ沈んでしまって見ることができません。

 そんな中にあって、北西の空で黄色もしくはオレンジ色に明るく輝いて見える明るい星はぎょしゃ座のカペラです。付近では一番明るい星なので、すぐにわかるかと思います。ぎょしゃ座のメイン部分は、カペラをひとつの頂点とした五角形の星の並びなのですが、すっかり高度が低くなってしまっていて、実際には見えにくいことと思います。

 かろうじて踏みとどまっている冬の星座をもうひとつ紹介しましょう。ほぼ真西でふたつの明るい星が並んでいるのが目に付きますが、これはふたご座のカストルポルックスです。この2星はギリシャ神話では双子の兄弟で、やや暗い方(右側の星)が兄のカストル、やや明るい方(左側の星)が弟のポルックスです。この時期は兄弟ふたりが立って並んでいるように見えるので、一番双子らしく見える時期かもしれません。同じ時間であっても、日が経つにつれて次第に高度が下がってきますので、こちらもそろそろ見納めとなりそうです。

南の空

5月3日21時頃 南の空の様子

 次は南の空を見てみましょう。こちらは春の星座がいっぱいです。

 南西の空高くで優雅に空に横たわっているのはしし座です。しし座でもっとも明るい星は1等星のレグルスですが、そこから上方向にハテナマーク(?)を裏返しにしたような星の並びがあることに気づきます。この形は農作物を刈り入れるときに使う鎌の形に似ていることから、ししの大がまと呼ばれています。しし座はとてもきれいな星の配列をしており、ししの頭からしっぽの2等星デネボラまで、よく形が整った美しい星座だと思います。

 デネボラから東の方向へ視線を移動していくと、だいだい色に光る0等星に出会いますが、これはうしかい座のアークトゥルスです。これと南方に見えるおとめ座の美しい1等星スピカを結ぶと、大きな三角形が出来上がりますが、これが春の大三角です。

 今度は、先に出てきたしし座のレグルスより下方向へと視線を下げていきましょう。星数の少ないところに2等星がポツンと光っているのですが、これはうみへび座の主星アルファードです。どこかで聞いたことがある名前だなあと思ったら、トヨタの車の名前ですね。アルファードは「孤独なるもの」という意味ですが、確かに付近にはこれといって明るい星もなく、名前のとおりアルファードは孤独で寂しそうに見えます。アルファードを含むうみへび座は、とても大きな星座で、その大きさは東西方向へ実に102度にも達します。ですから、頭の先からしっぽの先まで、全部を一度に見渡せる機会は少ないのですが、21時頃でしたらゴールデンウィーク前後が最適です。見れば見るほど、大きな星座だなあと感心させられてしまいます。

0時頃の星空

 星空を眺めているうちに、夜も更けてきました。現在の時刻は0時です。

東の空

5月4日0時頃 東の空の様子

 今度は東から南東の空へ目をやってみましょう。こちらは、早くも夏の星座が見え始めています。まず、南東から南の空で、さほど高くない高度で赤く光るのはアンタレスです。アンタレスはさそり座の1等星ですが、ちょうどさそりの心臓部に位置しています。アンタレスの右上方向から下方向にかけて、星がカーブしながらS字型に並んでおり、ここからさそりの姿を想像するのは簡単です。S字の先には毒針まで備わっていて、見ているだけでも楽しい星座のひとつです。さそりは、冬の星座オリオンを刺し殺した功績によって、天へ上げられたのだと言われています。

 南東の空の中ほどで、横向きに大きな五角形が横倒しになったような格好で見えますが、これはへびつかい座です。へびつかい座の上側にはへびの頭、下側にはへびの尾があって、小さな星がグネグネと長く連なっているのですが、少し空が明るいと見づらいかもしれません。反対に、空気の澄んだ田舎の空では、へびつかい座とへび座が一体となっている様子を見ることができて、こちらも楽しい星座のひとつだと思います。

 へびつかい座から東寄りに左方向へと視線をずらしていくと、1等星3個が大きな三角形を作っているのがわかります。これが有名な夏の大三角です。3個の星の名前はベガ、アルタイル、デネブですが、このうちベガは織姫星、アルタイルは彦星として有名ですね。夏の大三角は夏の天の川の真っただ中にあるのですが、この時期はまだ高度が低くいため、相当に条件が整わないと、天の川を満喫するのは難しいでしょう。なにしろ、まだゴールデンウィークなのでしょうがないかな。