7月の星空 夏の星座がいっぱい

 7月の前半は梅雨のシーズン。次第に蒸し暑さが増してきて雨量も多くなり、集中豪雨といった言葉がよくきかれるようになるのもこの頃です。そして7月も後半になると梅雨が明けて一気に夏の到来。天候が安定してきて晴れの日が多くなってきますので、天体観測には良い時期の到来といえるでしょう。ただ、大気中の水蒸気が多くなって空の透明度は落ちてくるのが難点ですが。

    6月15日23時
    7月 1日22時
    7月15日21時
    7月31日20時
    8月15日19時

西の空

 先月まで主力だった春の星座たちが次第に西の空で高度を下げてきています。しし座も頭の部分から沈みかけてきましたし、うみへび座も南西の空でしっぽのの部分しか見えなくなってしまいました。お隣のからす座の四辺形も高度が10度あまりとなり、実際に見るには少し難しくなってきました。

 少し視線を上にずらすと、真珠星のスピカがあるおとめ座がありますが、この時期は空で寝そべったような格好をしています。さらに上方には麦星のアークトゥルスがあるうしかい座があり、まだまだがんばっています。

7月15日21時 西の空

南の空

 7月の南の空はズバリ夏の星座です。真南の空のやや低い位置には、夏を代表する星座であるさそり座が南中しています。さそり座のS字型に描かれた星のカーブは非常に美しく、天の成し得た芸術品としか言いようがありません。

 さそり座の右側には「く」の字を逆さにしたようなてんびん座が見えていますが、ここから天秤の形を思い浮かべるのはちょっと難しいように思います。さそり座の左側には南斗六星の異名を持ったいて座があります。北西の空に見えている北斗七星に比べるとスケールは小さいのですが、その配列は、なるほどとうなづかされます。一度両者を見比べてみましょう。

 さそり座の上方には大きなへびつかい座と、それを取り巻くへび座が南中しています。両方あわせて見ると医神アスクレピオスが蛇を持ち上げた姿が浮かび上がって楽しいのですが、へび座の星は小さな星が多いので、できるだけ空が暗い場所で見るようにしましょう。

 このように、7月の南天の星座を見つけるには、さそり座を目印にするとよいと思います。

7月15日21時 南の空

いて座

 南天の沸き立つ天の川の中に、半人半馬の姿に描かれているのがいて座です。野蛮なケンタウロス族の中にあって、優しくて賢いケイローンの姿だとギリシャ神話は伝えています。

 いて座のメインとなる6つの星は、その配列から、北天の北斗七星に対して南斗六星と呼ばれています。しかし北斗七星と比べると、星の明るさやスケールの点で見劣りするのは否めません。

 いて座の方向に銀河系の中心があるだけに、天の川はいて座付近で幅が最も広くて濃くなっています。M8(干潟星雲)、球状星団のM22をはじめとし、星雲や星団がいっぱいですので、双眼鏡や天体望遠鏡で眺めていて興味は尽きません。

北の空

 8月の北の空では、北西の空の中ほどで、北斗七星が真下の方向を向いているのが目につきます。ひしゃくがまっ逆さまに地平線をめがけて落ちていくように見えます。北斗七星の大きく右側の真北の方角には北極星があります。北極星を含むこぐま座も小さなひしゃく形をしていますが、こちらは北斗七星とは逆に真上方向に立った形をしているので、両者の向き対比させてみるとおもいろいでしょう。

 こぐま座のひしゃくを取り囲むように星が連なっているのはりゅう座です。全天で8番目の広さを持つ星座なのですが、あまり目立たない星座です。最も見やすくなるこの時期に、金のりんごの木を守っていたと伝えられるこの星座にも、ちょっと気を止めてみてください。

 北東の空からはW字型に見えるカシオペア座が昇ってきました。

7月15日21時 北の空

東の空

 東の空で目につくのは、何といっても夏の大三角でしょう。高度60度付近で輝く夏の最輝星ベガ(織姫星)、織姫星ベガのパートナーで彦星として名高いアルタイル(彦星、牽牛星)、天の川の真っ只中で白鳥の尾の部分に位置したデネブの3つの1等星で構成されているのですから、豪華そのものです。天の川の下側、真東の空には小さいながらよくまとまった星座のいるか座も見えます。

 東の地平線からは秋の星座も顔をのぞかせてきましたが、少しまだ季節が早いようです。

7月15日21時 東の空

わし座

 七夕祭りの牽牛星(彦星)で有名な1等星アルタイルがある星座がわし座です。星の並びから、大きく羽を拡げたわしの姿を想像するのは比較的簡単です。上の絵では、アルタイルを頭として右側がしっぽになり、上下に羽を拡げた格好になります。どう、わかりやすいでしょう?

 ギリシャ神話では大神ゼウスの遣いとして、下界の様子を探っていた黒い大鷲だということです。

はくちょう座

 天の川の真っ只中に5つの星が十字型に並んでいるのがすぐ目にとまりますが、これがはくちょう座です。上の絵では1等星のデネブがしっぽになり(頭ではないのでご注意を)、右側にある3等星のアルビレオが白鳥の頭になります。そして羽は上下方向に拡がっています。白鳥の姿を想像するのは、わし座の場合以上に簡単でしょう。南半球の南十字星に対して、はくちょう座は北十字星と呼ばれる場合があります。

 この白鳥は、大神ゼウスがスパルタのレダを見初めた時に、レダに近寄るためにゼウスが化けた白鳥だと伝えられています。

 白鳥の頭の部分に位置する星はアルピレオと呼ばれていますが、機会があればアルピレオを天体望遠鏡でのぞいてみましょう。この星は非常に美しい2重星で、金色とエメラルド色の星が並ぶ姿には、思わずため息が出てしまいます。

夏の大三角

 大三角は春、夏、冬、それぞれにありますが(秋は大四辺形)、最も細長い形をしているのが夏の大三角でしょう。そして濃い天の川を背景にしているだけに、一番迫力があるように思います。7月中旬の21時前後でしたら、ほぼ真東の高度40度から60度付近に見えます。こと座のベガ、わし座のアルタイル、はくちょう座のデネブの3つの1等星で形作られています。夏の大三角が東の空から昇ってくると、いよいよ夏だなあと感じます。

天頂の空

 今月天頂付近に見えているのはかんむり座とヘルクレス座です。

 かんむり座は小さな7つの星が半円形に並んでいて、酒の神ディオニソスが妻のアリアドネに送った冠だとされています。小さな星座のわりには印象に残る星座のひとつです。かんむり座の星は暗い星が多いので、なかなか半円形に見えないかもしれません。天頂高くにまで昇って大気の影響を受けにくくなるこの時期が狙い目かもしれません。

 一方のヘルクレス座はギリシャ神話で大活躍するヘルクレスです。へびつかい座のアスクレピオスと面を合わせたような格好をしており、頭が南の方を向いている点に注意してください。

7月15日21時 天頂の空

<恒星の凡例> <星雲・星団の凡例>
大きさにより1等星から6等星までを分類しています。 銀河、散開星団、球状星団、散光星雲、惑星状星雲、超新星残骸などを分類しています。