七夕の星を見つけよう −彦星(牽牛星)と織姫星−

 7月7日は七夕祭り。一年に一度だけ、牽牛と織姫のふたりが、天の川を渡って会うことを許された日。もしあなたがそんな境遇だったとしたらどうしますか?
 
 バカじゃないの。別のカレをつくればいいのよ!
 
ああ、幻滅・・・。それはともかく、悲しいふたりの伝説を思い出しながら、夜空に願いをかなえてみませんか。

七夕伝説

 まず最初に、七夕にまつわる中国のお話を紹介しましょう。

 天帝の娘は織女(しょくじょ)と呼ばれるたいそう美しい天女でした。織女は天帝から機(はた)を織るように言いつけられ、天の川のほとりで毎日機織りに精を出していました。織女が織る機はとても美しく、さまざまな色に光り輝いていました。

 あるとき天帝は、年頃の娘となった織女をかわいそうに思い、天の川の向こう岸に住む牽牛(けんぎゅう)という働き者の若者と、結婚させてやることにしました。こうして二人はめでたく結婚し、二人の幸せな生活が始まりました。しかし幸せのあまり、織女は機を織るのをすっかりやめてしまいました。

 これを見た天帝はすっかりお怒りになり、二人を引き離してしまいました。織女は泣いて天帝に頼んだところ、年に一度、7月7日だけ天の川を渡って、二人が会うことを許されたのだそうです。そして今でも二人は、織姫星と牽牛星(彦星)として天の川のほとりで輝いているのだそうです。

21時頃の星空

夜空全体を眺めてみると

 夜空全体を眺めてみましょう。総じて言うと、西半分(上の絵では右半分)が春の星座で、東半分が夏の星座といったところでしょうか。

 南西の空には大きな春の大三角が居座っており、おとめ座やうしかい座といった春を代表する星座が見えています。しし座などはもう西の空へすっかりと傾いて沈みかけています。南の空には赤いアンタレスのあるさそり座や、大きな将棋の駒の形をしたへびつかい座など、夏の星座が横たわっています。東の空からはこの日の主役のこと座やわし座をはじめとした、夏を代表する星座が昇ってきています。今日は七夕ですから、東の空に注目しましょう。

7月7日21時頃 星空全体の様子

東の空−彦星と織姫星が昇ってきているぞ

 東の空からは七夕の主役となる2つの星、彦星と織姫星が昇ってきています。見つけ方は次の星図のように、夏の大三角を目印にするとよいでしょう。

21時東天のようす

彦星と織姫星

 東の空を見てみましょう。この日の主役は何と言っても、彦星(牽牛星)と織姫星ですね。

   彦星 : わし座の1等星アルタイル
   織姫星 : こと座の1等星ベガ

 21時頃なら、この2星は東の方角に見えています。ちょうど天の川を挟むように位置しており、七夕伝説のとおりです。天の川の下側に見えているのがアルタイル(彦星)、上側に見えているのがベガ(織姫星)です。
 
 2つとも1等星と明るいですから、明るい都会の夜空でも見つけることができるでしょう。逆に都会では、明るい1等星しか見えないかもしれませんね(悲)。この2星の左側には、はくちょう座のデネブ(1等星)も見えますので、間違わないように気をつけましょう。

天の川

 残念ながらこの時間、天の川の高度はまだ40度あまりしかありません。空が暗くて透明度が良くないと、天の川を見るのは難しいかもしれません。本当に天の川を楽しむためには、もう少し時間が経って天の川の高度が高くならないといけません。次で紹介する0時頃ならOKでしょう。

 七夕伝説では、彦星と織姫星は1年に1度だけ、天の川を渡ってデートすると言われていますが、実際に星が動いていくわけではありません。天の川によっていつも分けられた二人は、ちょっとかわいそうな気がします。その上、実際のふたりの距離は、隔てること14.8光年。そんな遠い距離に置かれたふたりは、ますますもってかわいそうですね。

夏の大三角

 七夕の2星は、はくちょう座デネブとともに夏の大三角を構成していますので、この点も見逃さないようにしましょう。

0時頃の星空

天頂方向の空−天の川も見える!

7月8日0時 天頂付近の様子

彦星と織姫星

 0時ともなると、この日の主役たちは、天頂付近にまで昇りつめています。織姫星のベガはほぼ頭の真上付近、彦星のアルタイルも高度60度付近にあり、見上げるのに首が痛くなりそうです。

天の川

 でも高度が高くなったおかげで、21時頃では難しかった天の川も、条件さえ整えば楽に見ることができます。といっても条件が整えばの話で、明るい都会の空ではまず無理でしょう。可能な限り、田舎の暗い空で眺めたいものです。天の川は非常に淡いので、空の状態によって、見え方が全然違ってきます。空が暗い場所で、沸き立つ雲のように見える天の川を目の当たりにすると、きっと感動しますよ。

彦星から織姫星を見ると?

 ここで、「つるちゃんのプラネタリウム」ならではの、ちょっと変わった星空を紹介しましょう。ナント大胆にも、アルタイルへ行って、彦星から織姫星がどこに見えるか探してみましょう。

アルタイルから見た星座

織姫星はりゅう座の中へ

 上の絵を見てください。彦星から見た星空です。ベガ(織姫星)は、りゅう座の中(右上の方)へ移動し、天の川から遠く外れてしまいました。地球から見た場合と比べると、ベガまでの距離が25.3光年から14.8光年と近づいたため、その明るさも0.0等星から−1.1等星と、明るく見えるようになります。

夏の大三角がないよ

 地球から見た夏の大三角を彦星から見ることはできません。3つの1等星のうち、アルタイルが見当たりませんが、そりゃそうです。アルタイル(彦星)に来て星空を見ているのですから・・・。

他の星座もちょっと変

 地球からアルタイルまでの距離は16.8光年。たったの(?)16.8光年移動しただけで、星座の形はずいぶんと崩れてしまっています。先に出てきた0時頃の星空の場合と見比べてみてください。

 はくちょう座の十字架もちょっと変、左端に見えている秋の四辺形もちょっと変。全ての星座の形が微妙に違ってきています。中央右寄りにあるギリシャ神話の英雄ヘルクレス座などは、見る影もなくなってしまいました。

2023年は好条件

 2023年の七夕の夜、月の出は東京では22時12分です。それ以降は丸みを帯びた月齢19.3の月が昇ってきますが、それまでは暗夜です。月があると淡い天の川は見づらくなってしまいますが、子供さんが見られる時間帯としては大丈夫ですね。
 
 それでは、東を向いて夜空を見上げましょう。都会でも夏の大三角くらいなら見ることができます。上側の1等星が織姫星のベガで、右側の1等星が彦星のアルタイル。七夕の星ですね! 空が十分暗い場所なら、天の川も見えるでしょう。市街地から離れて郊外や山間部から見られることをおすすめします。
 
 地域にもよりますが、あと1、2時間ほどたつと、東の地平線から土星が昇ってきます。1等級ですから肉眼でも十分見える明るさです。黄土色に光りますので、この機会に挑戦してみてください。

夏の大三角と七夕の星

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