9月の星空 夜空は秋の気配

 日中はまだまだ暑い日も多い9月ですが、夜になると次第に心地よい夜風が吹くようになり、秋が近くにしのびよってきているのを実感します。空気中の水蒸気も夏の頃に比べると次第に少なくなってきて、空気の澄んだ日が多くなってきます。澄み切ったきれいな夜に星空を眺めていると、体ごと夜空へ吸い込まれて、心の奥まで洗われるような気がします。

    8月15日23時
    9月 1日22時
    9月15日21時
    9月30日20時
   10月15日19時

西の空

 西の空は夏の星座でいっぱいです。2ヶ月前には天頂付近に見えていたかんむり座やヘルクレス座ですが、9月になるとさすがに高度が下がってきました。この時期のヘルクレス座は、左側を頭にして仰向けに寝そべったような格好をしています。代わって、今月西空の高い位置に見えているのはこと座です。0等星のベガを頼りにすると、かわいらしい平行四辺形がすぐに見つかります。

 一方、西空の低い位置では、へびつかい座とそれを取り巻くへび座の高度が下がってきて、小さな星が多いへび座は見えにくくなってきました。 さらに低い位置には、春の星座の1等星アークトゥルスがかろうじて見えていますが、もう9月なんですけどって感じですね。

9月15日21時 西の空

南の空

 先月までは夏の星座一色といった感じだった南の空ですが、夏の華やかな星座に見とれているうちに、秋の星座が東側(左側)から進出してきました。

 まず、西側(右側)ですが、こちらは夏の星座です。天の川は地平線から立ち上がっていて今月も見ごろなのですが、さそり座は半分沈んでしまっていますし、いて座も少し傾いてきていて、先月に比べると見劣りがします。天の川の上方にはわし座の1等星アルタイルも見えています。

 一方、東側(左側)の空には秋の星座がいっぱいです。秋の星座の先頭バッターはやぎ座ですが、逆三角形に並んだその星の並びは、寂しい秋の星座の中では意外と目につきます。やぎ座の左下方向には秋の唯一の1等星フォーマルハウトが見えています。フォーマルハウトはみなみのうお座の口にあたりますが、その口へ向けてみずがめ座から水が流れ落ちていきます。

9月15日21時 南の空

やぎ座

 南の空ではやぎ座の星々が逆三角形の形に並んでいるのが目にとまります。暗い星が多いので、街明かりの激しい場所では見つけにくいかもしれません。しかし、少し郊外へ出ると星の並びがはっきりとわかり、秋の星座の中では比較的見つけやすい星座だと思います。

 ギリシャ神話では、森と羊の神パーンが怪物テュホンに襲われたとき、魚に変身して川へと逃げ込みました。しかし、慌てていたため、水につかった下半身だけが魚に化けて、上半身はやぎの姿のままでした。大神ゼウスはこれを見て大笑いし、記念にしようと天へ上げた姿がやぎ座だということです。星座絵で見ても右半分はやぎですが、左半分は魚の姿が描かれていて楽しくなります。

みなみのうお座

 秋の星座の1等星はみなみのうお座のフォーマルハウトひとつだけしかありません。また、フォーマルハウトのまわりには、これといって目立った星もありません。このため、フォーマルハウトは「秋のひとつ星」と呼ばれています。みなみのうお座の星たちは、フォーマルハウト以外は暗い星ばかりで、みなみのうお座も形がよくつかめません。星座絵では、みずがめ座からこぼれ出した水が、みなみのうお座の口へと吸い込まれていく姿が描かれています。

みずがめ座

 秋の星座は暗い星が多くて、形がつかみにくい星座が多いのですが、その代表がこのみずがめ座でしょう。黄道十二星座のひとつで有名ですから簡単にみつけられるのかと思いきや、暗い星ばかりで全然イメージがつかめません。その中にあってYの字に並んだ三ツ矢と呼ばれる部分だけがちょっとだけ目立ちます。

 ある時、大神ゼウスは美少年ガニメデスに目をつけ、大わしにさらわせてオリュンポス宮殿でお酌をさせたのですが、この美少年ガニメデスが水瓶をたずさえた姿がみずがめ座だと、ギリシャ神話は伝えています。

それにしても、つるちゃんには美少年ガニメデスが水瓶をたずさえている姿などとても想像できませんが、みなさんはいかがでしょうか。余談ですが、つるちゃんの星座はみずがめ座です。

北の空

 北西から北の空低くには北斗七星が見えています。北斗七星の斗は中国でひしゃくを意味しますが、今はちょうど水をすくう時のひしゃくの形に見えるので、その形を連想しやすいと思います。しかし、何といっても高度が低くなって見にくくなってきたのが残念なところです。

 北東の空からはカシオペア座が次第に高度を上げてきて、すっかり人目につきやすくなりました。この時期なら、カシオペア座の左方向へ視線を移動していくだけで、2等星の北極星を見つけ出すことができます。その北極星のあるこぐま座も小さなひしゃく形をしていますが、こちらのひしゃくは北斗七星とは反対に、ひしゃくをひっくり返した格好をしているので、水がこぼれ落ちてしまいそうです。

 また、今月から来月にかけては、ケフェウス座が最も見やすい位置にきています。アンドロメダ姫の父親にあたる古代エチオピアのケフェウス王の姿をご覧になるには、最適な季節です。が、暗い星が多くて見分けにくいのが難点です。ホームベースを逆さにしたような、いびつな五角形を目印にしましょう。

9月15日21時 北の空

東の空

 東の空からは秋の星座が本格的に姿を見せ始めました。秋の星座は明るい星が少なくてさびしい星座が多いのですが、丹念に星をたどって星座を見つけましょう。

 まず目につくのが空の中ほどにみえる大きな四角形のペガスス座でしょう。この四角形は、秋の大四辺形とか、ペガススの四辺形と呼ばれており、秋の星座のシンボル的な存在です。先月までは高度が低かったアンドロメダ座やうお座も、ジワリと高度を上げてきました。また、三ツ矢が目印となるみずがめ座や、秋の唯一の1等星フォーマルハウトは南の方へと移動しました。

9月15日21時 東の空

ペガスス座

 東の空を見上げると、2等星3つと3等星1つでできた大きな斜めを向いた四角形が目に止まりますが、これがペガススの四辺形です。秋の星座はさびしい星座が多いのですが、その中にあって、2等星と3等星でできたペガススの四辺形だけは目立ちます。ペガスス座は羽の生えた天馬に描かれていますが、どういうわけか上下が逆さを向いています。ペガススの四辺形は天馬の胴体の部分になります。ペガススの四辺形の西側(右側)が首になりますが、結構わかりやすい星の並びをしているので、天馬の姿を連想するのは容易ではないかと思います。ただし、星座絵では上下が逆さを向いている点に注意してください。

アンドロメダ座

 ペガススの四辺形の東側(左側)の星から左下方向へ2等星が3つ連なっていますが、この付近がアンドロメダ座になります。一番右側の2等星(ペガススの四辺形の星でもあります)がアンドロメダ姫の頭で、真ん中の2等星が腰、左端の2等星が足になるのですが、なかなかお姫様の姿を想像するのは簡単なことではありません。

 ギリシャ神話によると、勇者ペルセウスは天馬ペガススの背中に乗って、化け鯨のいけにえになりそうだったアンドロメダ姫のそばを通りかかり、化け鯨と戦ってアンドロメダ姫を救ったのだと伝えられています(四季の星座の中にあるアンドロメダ座を参照してください)。

 アンドロメダ座には有名なアンドロメダ大星雲が肉眼でもボーッと見えています。田舎の澄んだ空のもとでは意外と簡単に確認できるのですが、明るい都会の空では望むべくもありません。そんなときには双眼鏡を使うと、小さな楕円形をした雲の切れ端のような星雲を見つけられると思います。ただし、やみくもに双眼鏡を振り向けても、なかなか視野に入ってはくれません。正確な位置を星図などで事前に確認しておくようにしましょう。

天頂の空

 10月には一番天高く上り詰めているのははくちょう座です。この時期のはくちょう座を見ていると、優雅に飛ぶ白鳥の姿を簡単に想像することができます。はくちょう座のデネブと、先月天頂付近に見えていたこと座のベガ、さらには高度60度付近に見えるわし座のアルタイルを結ぶと、夏の大三角が出来上がります。

 天の川は夏の大三角の中央を通っていますので、先月に引き続いて今月も天の川は見ごろとなります。天の川ははくちょう座付近で濃くなっていることや、空気が澄んでいることを考えると、はくちょう座付近の天の川に限って言えば、先月8月よりも今月9月の方が見やすいといえるかもしれません。

 北の空50度から60度付近には高度を上げてきたケフェウス座が見えます。暗い星が多いのであまり目立たないのですが、つぶれた細長い五角形が目印になります。

 高度70度付近の南の空にはいるか座が南中しています。3等星と4等星でできた小さくてかわらしいひし形が特徴ですが、付近では以外と目につきます。いるか座が宵の空で南中するのを見ると、秋も近づいたなあと思います。

9月15日21時 天頂の空

いるか座

 わし座のアルタイルからやや北東(左上)寄りに目をやると、小さなかわいらしい平行四辺形に並んだ星が目にとまりますが、これがいるか座です。付近には意外と明るい星はなく、いるか座の星の集まりは結構目立っています。いるか座は夏の星座のラストバッターとなります。

 ギリシャ神話では、ある時、海の神ポセイドンは女神アンフィトリーテを見初めたのですが、いるかに口説かせて妃として迎えることができました。いるかはこの功によって天へ上げられたのだそうです。

<恒星の凡例> <星雲・星団の凡例>
大きさにより1等星から6等星までを分類しています。 銀河、散開星団、球状星団、散光星雲、惑星状星雲、超新星残骸などを分類しています。