中秋の名月

 中秋の名月といえばお月見。丸〜いお月様を見ながらおだんごを食べて・・・。風流でいいですね。でも、必ずしも真ん丸な満月とは限りません。しかも日付を注意してみると、9月であったり10月であったり、年によってまちまちです。果たして中秋の名月とはどういうものなのか、以降で詳しく解説しましょう。

2023年の中秋の名月は9月29日

 今年の中秋の名月は9月29日です。暑さ寒さも彼岸までと言いますが、今年はそれよりも後です。近年は夏が長く、もしかすると涼しげにとはいかないかもしれませんが、名月を愛でながら風流な気分を味わいましょう!
 
 下の星図は2023年9月29日に東京で見られる中秋の名月です。21時頃に東よりもやや南側の方角をご覧ください。空の中ほどよりもやや低い位置に、真ん丸な月が見えます。
 
 今年の中秋の名月は満月で、3年連続です。このように書くと、満月でない中秋の名月があるのか、不審に思われるかもしれませんね。しかし意外と、満月でない年も多いのです。詳しく知りたい方は、下の記事で詳しく書いていますので、そちらをご覧ください。

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中秋の名月を見よう

 中秋の名月はほぼ満月に近い月ですが、満月頃の月は太陽が西の空へ沈む頃、東の空から顔を出してきます。ですから宵の空でお月見をしようと思えば、東から南東にかけての方角が開けた場所で見るのが良いでしょう。もっとも、月の出から少し時間が経てば月の高度が上がってくるので、低い障害物ならあまり影響を受けなくてすみます。

 双眼鏡や天体望遠鏡で見ると、満月なのでさぞかしクレーターがたくさん見えるかと思いきや、満月頃の月はクレーターを見るのに適していません。でも、なぜ? それは、満月頃の月は正面から太陽の光を受けるので影ができにくく、立体感がなくなってしまうからです。クレーターを見るのなら、クレーターの縁に影ができる三日月や半月頃の方が適しています。ちょっと残念ですが、日を変えてご覧になるとよいでしょう。

 それはともかくとして、お酒を飲みながら、おだんごを食べながら、あるいはごろ寝をしながら、見方はさまざまですが、この機会に名月を眺めながら少し風流な気分を味わってみたいですね。

お月見

 毎年9月頃に中秋の名月を迎えます(※年によっては10月となることもあります)。この日は月を眺めて楽しむ月見が行われます。月が見える場所にすすきを飾って、月見だんごやお酒、里芋、枝豆、栗などを供えて美しい月を愛でるとともに、秋の収穫に感謝するのです。地方によっては芋を供えることから、中秋の名月は「芋名月」と呼ばれることもあります。

旧暦について

 中秋の名月を説明するには旧暦の説明をしなければなりません。現在使用されている新暦が、明治6年に誕生するまで使われていたのが旧暦または太陰暦と呼ばれるカレンダーです。現在旧暦は正式には使われておらず、過去の慣わしとして便宜的に、一部で使われることがある程度にすぎません。

 新暦は太陽の動きを基準にして日付を決定しているのに対し、旧暦は月の満ち欠けを使って日付を決定ます。つまり、新月となる日がその月の1日となり、新月から何日目にあたるかで日付をカウントします。月齢が増えて月が太っていくとともに、日付の方も2日、3日と増えていき、満月になる頃が15日となります。その後は月は細っていき、次の新月となった日に、カレンダーの月も新しい月に変わります。

旧暦の8月15日

 中秋の名月の話に戻りますが、中秋とは秋の真ん中のことを指します。旧暦の秋は7月、8月、9月ですから、秋の真ん中といえば8月15日になります。いわゆる旧暦の8月15日(八月十五夜)で、十五夜の月とよばれたりするのもこのためです。

 ところで旧暦の15日といえば、新月から数えて15日目ですから、満月に近い月が見えるのは当然でしょう。満月が十五夜のお月様などと言われることからもわかります。現在の太陽暦では、新月となる日は毎年違っていますので、旧暦8月15日となる日も年によって違ってきます。

中秋と仲秋

 中秋の名月ではなく仲秋の名月と書かれることがありますが、両者が持つ意味合いは異なります。中秋が旧暦8月15日を指すのに対して、仲秋は秋の真ん中の月、つまり旧暦8月のことを指します。別の意味となるので注意しましょう。本来は旧暦8月15日にお月見をするので、中秋の名月と書くのが正しいといえます。

中秋の名月は満月でない?

 先に旧暦8月15日には満月に近い月が見えると書きましたが、実際には中秋の名月が必ずしも満月であるとは限りません。むしろ、満月でない年の方が多いといってもよいでしょう。これは月と地球の公転軌道の関係で、新月から満月までの日数が15日とは限らないために起こります。

 満月と中秋の名月の関係は下の表を参考にしてください。

満月 旧暦8月15日
中秋の名月
2000年  9月14日  9月12日
2001年 10月 2日 10月 1日
2002年  9月21日 同左
2003年  9月11日 同左
2004年  9月28日 同左
2005年  9月18日 同左
2006年 10月 7日 10月 6日
2007年  9月27日  9月25日
2008年  9月15日  9月14日
2009年 10月 4日 10月 3日
2010年  9月23日  9月22日
2011年  9月12日 同左
2012年  9月30日 同左
2013年  9月19日 同左
2014年  9月 9日  9月 8日
2015年  9月28日  9月27日
2016年  9月17日  9月15日
2017年 10月 6日 10月 4日
2018年  9月25日  9月24日
2019年  9月14日  9月13日
2020年 10月 2日 10月 1日
2021年  9月21日 同左
2022年  9月10日 同左
2023年  9月29日 同左
2024年  9月18日  9月17日
2025年 10月 7日 10月 6日
2026年  9月27日  9月25日
2027年  9月16日  9月15日
2028年 10月 4日 10月 3日
2029年  9月23日  9月22日
2030年  9月12日 同左
2031年 10月 1日 同左
2032年  9月19日 同左
2033年  9月 9日  9月 8日*
2034年  9月28日  9月27日
2035年  9月17日  9月16日
2036年 10月 5日 10月 4日
2037年  9月24日  同左
2038年  9月13日  同左
2039年 10月 2日  同左
2040年  9月21日  同左
2041年  9月10日  同左
2042年  9月30日  9月29日
2043年  9月19日  9月17日
2044年 10月 7日 10月 5日
2045年  9月26日  9月25日
2046年  9月15日  同左
2047年 10月 4日  同左
2048年  9月22日  同左
2049年  9月12日  9月11日
2050年 10月 1日  9月30日
*2033年は旧暦(天保歴)の置閏法を適用すると矛盾が生じます。当サイトでは閏7月を通常月としたうえで閏11月を挿入することとし、中秋の名月を9月8日としました。

中秋の名月と仏滅

 大安吉日なんていう言葉がありますが、大安とは旧暦の頃に使われていた曜日のひとつです。現在の曜日は月、火、水、木、金、土、日の7つですが、旧暦の頃の曜日は大安、赤口、先勝、友引、先負、仏滅の6つで、六曜と呼ばれています。

 ところで六曜の場合、旧暦で毎月1日の曜日が月ごとに決められていて、旧暦8月の場合の1日は友引とされています。2日目からは先の順に、先負、仏滅、大安、赤口、先勝、友引、・・・と順番にローテーションされていきます。

 ということは、この順番でいけば中秋の名月となる旧暦8月15日は必ず仏滅となります。大安の日にお月見がしたいと言う方がおられるかもしれませんが、残念ながらかなわぬ願いです。しかも絶対に仏滅となるのですから、そりゃないよという気がしないでもありませんね。

名月にまつわる言葉

 雨名月という言葉があります。意味は読んで字のごとく、雨で見えない中秋の名月のことです。せっかく名月を愛でようと思っているのに余計なことを言うなと言われるかもしれませんね。

 次は片見月(かたみづき)です。旧暦の9月13日に見える月のことを十三夜月といいますが、もう一つの名月として知られています。中秋の名月と十三夜月のいずれかしか見られない場合は片見月と言って、良くないこととされています。またよくない話でごめんなさい。

 気を取り直して、月夕(げっせき)という言葉。こちらは月が明るい夜のことで、特に中秋の名月の夜を指します。これなら月光が明るくていい感じです。

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