土星を探そう 2002年

 環のある惑星、土星。天文ファンならずとも、土星の環の美しさと、その不思議さに魅了される方も多いことと思います。あなたも一度、土星をこの目で見てみたいと思いませんか。えっ、肉眼で土星なんて見えないんじゃないの? と思われるかもしれませんが、そんなことはありません。土星は肉眼でも簡単に見つけることのできる惑星なんですよ。

 ここでは、土星を見つけるための方法や、さらには天体望遠鏡で土星を見る場合のポイントなどを解説したいと思います。皆さんもこの機会にぜひ、土星を探してみてください。

土星のマメ知識

 まず土星を探す前に、土星とはどんな惑星なのでしょうか。土星に関するマメ知識ということで、ごく簡単にですが復習をしておきましょう。

太陽系の第6惑星
土星が衝の頃の太陽系の様子
 太陽系には9つの惑星があります。太陽に近い方から、水星、金星、地球、火星、木星、土星、天王星、海王星、冥王星の順ですね。土星は内側から数えて6番目の惑星です。
ガリレオが見た土星

 人類で初めて土星へ天体望遠鏡を向けたのは、ガリレオ・ガリレイです。ガリレオの観測結果によると、「土星には耳がある」とのことでした。当時の性能の低い天体望遠鏡では、土星の環が耳のように見えたのも、いたしかたがないことでしょう。
ガスでできた惑星

 土星の大部分は水素やヘリウムなどのガスでできた木星型惑星です。そういう意味では、土星は岩石でできた地球よりも、ガスでできた太陽に似ています。土星の比重は0.7ほどしかありません。大きな水槽に土星を入れたとしたら、水の上にプカプカと浮かんでしまいます。
土星の環

 土星といえば何といってもその環でしょう。1675年に環を発見したのはオランダのホイヘンスです。ガリレオが「土星には耳がある」と言ってから45年後のことでした。

 環は小さな岩石や氷のかけらからできていると言われています。今ではボイジャー探査機などによって、環は何重もの細い環からできていることがわかっています。「天文用語ミニ解説」の中にある土星の環を参照してください。

土星の詳しいデータ

 土星に関する詳細データは、「天文用語ミニ解説」の中にある次の項目を参照してください。

    惑星の諸元表

    環の諸元表

    衛星の諸元表

土星は肉眼で見える惑星のひとつ

 地球から見た惑星のうち、水星、金星、火星、木星、土星の5つの惑星は明るく輝くので、その存在は古くから知られていました。これらの惑星を肉眼で見た時の特徴は次のとおりです。

水星

 太陽の近くを回っているので、地球から見た水星は太陽にくっついて移動しています。このため、なかなか見るチャンスがありません。観望の好機には薄明の中でポチッと光っているのが確認できます。

金星

 宵の明星、明けの明星として親しまれています。光度もマイナス4等星と非常に明るく、ひと目でそれとわかります。たまにUFOと間違う人もいます。

火星

 地球から見ると真っ赤に輝いて見えます。特に地球との大接近の頃(2003年!!)には、マイナス2等星以上にまで明るくなり、じっと見ていると不気味な感じさえします。

木星

 天の大神ゼウスの名(ユピテル、ジュピター)にふさわしく、明るくて安定した輝きを放ちます。マイナス2等星くらいの明るさで金色に輝いて見えます。

土星

 地球からは鈍い黄色で0等星くらいの明るさで見えます。5つの惑星の中では太陽から最も離れているため、一番ゆっくりと星座間を移動していきます。

 ということで、地球から見た土星は0等星くらいの明るさで見えます。0等星といえば、1等星よりもワンランク(約2.5倍)明るいので、明るい都会の夜空でも簡単に見つけることができるというわけです。

観望の好機

 そんな土星ですが、12月18日には衝となって土星の観望期を迎えます。衝とは太陽−地球−土星の順番で一直線上に並ぶことです(厳密には違いますが、細かい話はやめておきます)。衝の頃には地球と土星の距離が最も近くなりますし、真夜中に南中するので、土星を一晩中観測することができます。そんなわけで、文字通り観望の好期となるのです。
 

土星の見える位置

 先に、土星は0等星くらいの明るさで見える明るい惑星で、簡単に見つけられると書きましたが、トンチンカンな方向を見ていては、簡単に見えるものも見えません。空を見上げる前に、次のことがらを確認しておきましょう。

星座で言えば何座?

 土星は日々少しずつ位置を変えているのですが、地球との距離が遠いために、1日や2日でそんなに大きく移動するわけではありません。おおまかに星座で言えば冬の星座になり、おうし座の東の端付近、ちょうどオリオン座とふたご座の境界付近にいます。というと、「じゃあ、おうし座はいつどこに見えるんだ」と言われそうですね。

方角は?

 日付や時刻にもよりますが、11月から12月頃でしたら、おうし座の方向は概ね東の空に見えるといっておけば大きな間違いはありません。下の絵は12月7日21時の東の空の例です。絵の中央付近に緑色で表示されているのが土星です。ちょうど真東の高度40度くらい、空の中ほどあたりに土星が見えるはずです。

12月7日21時の土星の位置

日付や時刻による位置変化

 上の絵はあくまでも12月7日21時の例です。実際には、見ようとする日付や時刻によって、土星の見える位置は違ってきます。

 また、先にも少しふれましたが、地球も土星も太陽の周りを公転しているために、地球から見た土星の位置は日々少しずつ変化しています。しかし、両者の距離は離れているため、その動きはあまり大きなものではありません。

   土星の星座に対する位置変化はこちらを参照してください。

 これに対して、時刻による位置変化は大きなもので、1時間の間に15度くらいも移動します。これはもちろん地球の自転によるもので、太陽が東から昇って西へ沈むのと同じ理屈です。

これらを加味し、日付や時間ごとの星図へのリンクを用意しましたので活用してください。

 11月 9日の     21時 23時
 11月23日の 19時 21時 23時
 12月 7日の 19時 21時 23時
 12月21日の 19時 21時 23時
  1月 4日の 19時 21時 23時
「つるちゃんのプラネタリウム for Javaアプレット」の中にある「万能プラネタリウム」でも土星の位置を確認できます。

土星を探してみよう

 ご覧になりたい日時に近い星図を上のリンクから確認しましたか? さあ、準備万端です。それでは実際に星空を見上げる際の注意点などをあげておきましょう。

観測場所探し

 土星は明るい天体なので、どこで見ても見えるのかもしれません。しかし、せっかく夜空を見るのですから、少しでもキレイな星空を見たいものですね。それにはやはり、空が暗く光害の少ない場所から眺めるのが一番です。できれは田舎の方まで移動できればよいのですが、必ずしもそうはいきません。

 そんな時は近くに水銀灯などの人工の光が少ない場所を探しましょう。また、土星は東の空に見えますので、東の方角に高い建物や木などがある場所は避けるようにします。

方角の確認

 観測場所は決まりましたか。次に観測場所から見た方角を確認しておきましょう。アホらしいと思われるかもしれませんが、方角の確認は非常に大事なことです。今回は東の空を見るのでしたね。東の方角は、太陽が昇ってくる方角ということからも、およその見当はつきます。(季節によって真東からブレがあります。今頃の時期の太陽は東南東から昇ります。)

満月の頃は避ける

 さらに注意点があります。それは月明かりです。できれば東の空に大きな明るい月が見えない日を選びましょう。月明かりにじゃまされて、土星の光がかき消されてしまう恐れがあるからです。もちろん、土星は明るいので、月明かりがあっても見えないことはありません。しかし、初めて見る場合には、やはり暗夜で見るにこしたことはありません。

「つるちゃんのプラネタリウム for Javaアプレット」の中にある「月齢カレンダー」で、月の満ち欠けや、月の出没時刻などを確認しておきましょう。

いざ、観測!

 あとは晴れた夜を待つだけです。空が晴れたら、まず東の方角を確認し、そのまま空を見上げてみましょう。先に出てきた、日付と時間ごとに用意した星図と比べてみればわかりやすいかと思います。

 付近で一番明るく、鈍く黄色っぽく光っている星があれば、それが土星です。近くにはカペラというぎょしゃ座の0等星もありますが、こちらはだいだい色をしているので区別はつきます。また、おうし座の1等星アルデバランも近くにありますが、こちらもだいだい色をしていますし、土星よりも少し暗い明るさです。

 一般的に惑星は、普通の恒星と比べて、チカチカと瞬くことが少ないのも特徴ですので覚えておいてください。これは惑星に面積があるためで、光が地表に届くまでに大気の乱れによる影響を受けにくいためです。

位置がわからなかったよ・・・

 土星の位置はわかりましたか。何、わからなかった? しょうがないですね。真東からやや南よりには有名なオリオン座が見えています。1等星が2つに、2等星が5つもあるという、非常に豪華で冬を代表する星座です。ちょうど今は東の空から昇ってきているところなので、鼓を横あるいは斜めに寝かせたような格好をしています。三つ星もたて方向に並んで見えています。

 このオリオン座のちょうど左手やや上方向に土星があります。どう、わかったでしょ!?

<おい、わからんぞー。>
−−>わからん? わかるまで寒い中でずっと立っとけ!

それでもわからない方へ

 それでもわからなかった方は、「ずっと立っとけ」と言いたいところですが、それもかわいそうなので、これ以上ない究極の方法をお教えしましょう。

 先ほど月明かりのない方が望ましいと書きましたが、いっそのこと月と土星が並ぶ時を狙ってみてはどうでしょうか。これなら絶対に見つかるでしょう!! 月と土星が接近する日を表にしておきましたので、絶対に見逃さないようにしてください。

 なになに、空が曇って月も見えないので位置がわからないって? そんなもん知るかいな!

日付 おすすめ時刻と、その時の土星 出没時刻など ※2 月齢
時刻※1 土星の高度
※2
月から見た
土星の位置
土星の出 月の出 日の入 空が暗
くなる
11/22 21:00 32度 18:15 18:02 16:31 18:00 17.6
(満月3日後)
12/19 19:00 31度 右下 16:20 15:58 16:30 18:02 15.1
(満月)
1/15 19:00 54度 14:25 13:51 16:50 18:20 12.6
(満月2日前)
※1 時刻は何時でもよいのですが、ひとつの目安としてください。
※2 東京の場合の値です。

天体望遠鏡で見てみよう

 さあ、土星は見つかりましたか。めでたく見つけられた方は、今度は天体望遠鏡で土星をのぞいてみましょう。

どんな天体望遠鏡が良い?

 土星の環を天体望遠鏡で見てみたいと思う人は多いでしょう。「でも、土星の環が見えるような大きな天体望遠鏡なんてとても買えない」、と思っている人も多いかと思います。でも実際にはそんなことはありません。土星の環の存在を確認するだけなら、市販されているような小型の天体望遠鏡でも十分です。「天体望遠鏡なんて久しく使ったことがないよ」という方や、「よし、これを機会に天体望遠鏡を買ってみよう!」と思われる方は「天体観測入門」の中にある天体望遠鏡の選び方のページを参考にしてください。

倍率についてひとこと

 天体望遠鏡に関して、ひとつ覚えておいてほしいことがあります。それは、天体望遠鏡の性能は口径の大きさで決まるということです。口径の大きなものほど高い倍率で見ることができるのです。よく宣伝文句として「倍率360倍!」などと謳われていますが、惑わされないようにしてください。360倍の倍率を出せる点ではウソではありませんが、まともに見える保障はありません。

 観望会などで天体望遠鏡を見かけた時、「この望遠鏡は何倍?」と聞いてはいけません。「この望遠鏡は何センチ?」と聞くのが正解です。そうすれば、「むむっ、こいつ多少の知識はありそうだ。もしかしてマニアかも・・・」と警戒されるかもしれませんよ(笑)。

天体望遠鏡がない方は観望会へGO!

 天体望遠鏡を持っていないからといって、あきらめるのはまだ早い。近くの天文台や同好会などで、観望会などがあるはずです。この季節の見ものとして、土星は外せないターゲットなので、観望会があれば土星を見せてもらえるものと思ってまず間違いありません。土星を望遠鏡に導入する苦労もなく、大きくて高価な望遠鏡で土星を見ることができるのですから、いうことはありませんよ。
 お近くの天文関係施設のホームページをチェックしてみてください。

土星を天体望遠鏡で天体観測するときのポイント
まずはピント合わせ

 ピントが合っていないと土星や星の像がぼやけてしまいます。像がクリアでハッキリとわかるように、ピントをしっかり合わせてください。方法がわからなければ、係りの人に聞いてみると教えてくれます。早く見たい気持ちはわかりますが・・・。

土星の環
土星の環
 環が土星本体を取り巻くようにリング状に見えます。よく見ると、環は2重か3重に見えるのですが、気流の状態が悪いとわかりにくいかもしれません。一番明るい環がB環、外側の環がA環、内側の暗い環がC環と呼ばれています。A環とB環の隙間はカッシーニの間隙と呼ばれていて、比較的簡単に確認できます。

本体の縞模様

 土星というと美しい環の方へ視線が向かいがちですが、土星本体の方にも注目してください。木星ほどではありませんが、薄い縞模様が何本か見えることと思います。また、完全な円ではなく、少しひしゃげた楕円形をしている点にも注目してみてください。これは土星の自転による遠心力のために、赤道部分が膨らんでいることによるものです。

衛星タイタン

 土星にはいくつもの衛星がありますが、一番大きいものはタイタン(またはティタン)です。直径は月の1.5倍弱もある大きな衛星です。地球からは8等星くらいの明るさで見えますので、天体望遠鏡で見るには十分な明るさです。土星のそばでプチッと小さく光っている星がタイタンですので、見逃さないようにしましょう。 

 今回の「土星を探そう特集」はいかがでしたか。土星を見つけることができますように、みなさんのご健闘を祈ります。