火星大接近観測ガイド(その2)
7月の火星
7月の火星は、みずがめ座をゆっくりと順行(西から東へ移動)しています。月初でも視直径は15秒を超えており、月末にはいよいよ20秒台にまで大きくなってきます。いよいよ本格的に火星観測が楽しめるようになってきますね。といっても、その大きさは木星の大きさの半分ほどしかありません。また、火星の模様は非常に淡いので、火星の模様を見るには慣れないうちは結構大変かもしれません。
大接近を前に、今からじっくりと火星を観測して、火星の見え方に慣れておきましょう。
火星観測のポイント
火星を観測するには天体望遠鏡が必要となりますが、観測するにあたっての注意事項が何点かあります。
大気の安定した時に
通常、大接近の頃の火星は、夏から秋の星座付近の、あまり高度が上がらない位置にいます。実際、東京での火星の南中高度は40度あまりしかありません。ですから、大気の影響を大きく受けてしまい、天体望遠鏡でのぞいた火星の像は、ユラユラとゆらいでしまうことも少なくありません。ですから、できるだけ大気の安定したシーングの良い日に、高度が高くなった頃を見計らって観測したいところです。
高倍率で
火星の像の大きさは、7月末でもようやく20秒を超えてきたところです。これは木星の大きさの半分に満たない大きさなので、木星を見慣れた人は「火星は小さいなあ」と思うかもしれません。淡い火星の模様をじっくり観測するには、やはり高い倍率がどうしても必要となります。天体望遠鏡の口径ミリ数の1.5から2倍は欲しいところです。条件が整えば3倍くらいかけてみても良いかもしれません。
模様の見える側と見えない側
火星は模様が良く見える側と、あまり見えない側があります。ですから、あまり見えない側を見ていても、初めての人には模様がほとんどわからないかもしれません。ここで注意しなければならないのは、火星の自転周期は地球の自転周期と良く似ているという点です。今日模様があまり見えない側を見ていたとしたら、次の日の同じ時間帯に見ても、やはり模様があまり見えない側を見ていることになります。こんな時は、観測する時間帯を前後に4時間以上ずらすようにします。(事情が許せばですが・・・)
火星の模様
火星の模様は毎年見え方が異なるのですが、それでも、大きな模様はだいたい同じように見ることができます。その中でも一番濃くて見やすいのが大シュルティスです。下の観測データの中の火星の絵では、7/6の22時と7/13の3時に火星中央の上寄りに描かれた模様がそれにあたります。
また、南極冠は火星の夏を迎えるにあたって、次第に小さくなっていくところが確認できます。極冠は赤い火星の像の中にあって、白く輝いてみえますので、すぐにそれとわかります。
それから、模様ではありませんが、大黄雲と呼ばれる現象が発生する場合があります。これは砂塵嵐のようなものと考えられていますが、いったんこれが発生すると、火星の上空は黄色っぽいベールのようなものに覆われてしまって、次第に火星全体へと広がり、模様をほとんど観測できなくなってしまうこともあります。今回の接近時には、大黄雲は発生しないでもらいたいものです。
星図
7月10日0時と7月20日0時の星図を掲載しておきますので、初めて火星を見られる方は参考にしてください。観測地は明石とありますが、日本国内であれば、見え方にさほど違いはありません。
おおまかに言えば、「南東の空で赤く明るく光る星」があれば、それが火星と思って間違いありません。
火星の観測データ
下に火星のデータを掲げておきますので、観測時の参考にしてください。
日付 | 札幌 | 東京 | 大阪 | 福岡 | ||||||||||||
時刻 | 高度 | 時刻 | 高度 | 時刻 | 高度 | 時刻 | 高度 | |||||||||
出 | 南中 | 没 | 出 | 南中 | 没 | 出 | 南中 | 没 | 出 | 南中 | 没 | |||||
0時 | 0時 | 0時 | 0時 | |||||||||||||
7/6 | 22:07 | 3:22 | 8:34 | 17.1度 | 22:02 | 3:28 | 8:51 | 20.5度 | 22:15 | 3:42 | 9:07 | 18.1度 | 22:37 | 4:06 | 9:32 | 15.0度 |
7/13 | 21:46 | 3:02 | 8:14 | 20.2度 | 21:41 | 3:08 | 8:32 | 24.0度 | 21:56 | 3:25 | 8:50 | 21.8度 | 22:15 | 3:45 | 9:12 | 18.9度 |
7/20 | 21:23 | 2:39 | 7:52 | 23.1度 | 21:18 | 2:45 | 8:09 | 27.5度 | 21:34 | 3:02 | 8:28 | 25.6度 | 21:53 | 3:23 | 8:50 | 22.8度 |
7/27 | 20:59 | 2:14 | 7:26 | 25.9度 | 20:53 | 2:21 | 7:44 | 30.9度 | 21:09 | 2:37 | 8:02 | 29.2度 | 21:28 | 2:58 | 8:24 | 26.8度 |
日付 | 赤経 | 赤緯 | 光度 | 視直径 | 距離 | 輝面比 | 前日22時の形 | 0時の形 | 3時の形 |
7/6 | 22h41m | -13゜21' | -1.4等 | 17.5秒 | 0.536AU | 0.91 | |||
7/13 | 22h48m | -13゜06' | -1.6等 | 18.7秒 | 0.500AU | 0.92 | |||
7/20 | 22h53m | -13゜02' | -1.8等 | 20.1秒 | 0.467AU | 0.93 | |||
7/27 | 22h56m | -13゜12' | -2.0等 | 21.4秒 | 0.438AU | 0.95 |
※「つるぷら」による略算ですので多少の誤差を含む点をご了承ください。
「天文ソフト つるちゃんのプラネタリウム」のフリー版では、火星の位置を表示したり、上の絵のような火星表面模様の概要をつかむことができます。ダウンロードして観測にお役立てください。
当ホームページからは、「つるちゃんのプラネタリウム for Javaアプレット」の中にある
万能プラネタリウム
惑星の経路
観測情報
などからも火星の位置や情報をシミュレーションすることができます。