春の星座がいっぱい 2003年4月

 4月といえば新年度の開始月。入学式、入社式をはじめとし、新しいスタートラインに立つときですが、みなさんはどんなスタートをきりますか。中には「先月までと同じやで」という方もおられるかもしれませんが、あるいはつるちゃんもその口かもしれません。
 気温の方も少しずつ暖かくなってきますから、つるちゃんもようやく天体観測のスタートといったところでしょうか。夜空の方も、さすがに春の星座がいっぱいになってきました。さあ、みなさんも春の夜空を散策してみましょう。

注)このページの星空の様子は4月15日21時を基準としていますが、下の日時でもほぼ同様の空を見ることができます(月や惑星は除く)。また、明石以外でも日本国内であれば、見え方にさほど違いはありません。

  3月15日23時
  4月 1日22時
  4月15日21時
  5月 1日20時
  5月15日19時

4月15日21時 全天のようす
4月15日21時 全天のようす

 まず全天を見てみましょう。今月になると、冬の星座は西空へとすっかり追いやられた感じがします。かわって、南天を中心に大きく陣取っているのは、春の星座です。夜空の方もすっかり春になってきたなあ、そんな感じがします。東の空からはわずかですが、夏の星座も一部で顔を見せ始めました。

 それでは西空の方から見ていきましょう。

4月15日21時 西の空のようす
4月15日21時 西の空のようす

 先月まで見えていたカシオペア座やペルセウス座といった秋の星座は、さすがにすっかりと高度が低くなり、見るのが難しくなってきました。そして、冬の星座もどんどんと西の空へと沈んでいっています。オリオン座やおおいぬ座も今月で見納めとななるでしょう。おうし座の角の先付近にある土星も、次第に高度が低くなってきて大気の影響を受けやすくなり、本格的な観測は厳しくなってきました。それでも冬の大三角の一番上側にあるこいぬ座のプロキオンやふたご座は、まだ空の中ほどにいて踏みとどまっている、そんな感じがします。ふたご座は、2人が並んで立ち上がった格好に見えているので、今頃が一番形をつかみやすい時期ではないでしょうか。

 2人の日本人によって発見された工藤・藤川彗星がオリオン座の中に見えていますが、光度は10等級と暗いので、あまりおもしろみがありません。


 次は南の空です。

4月15日21時 南の空のようす
4月15日21時 南の空のようす

 南の空を見てみますと、南西から南東にかけてうみへび座が大きく陣取っています。うみへびの頭は12月から昇り始めて、今月になってようやく海蛇の全体が見えるようになりました。本当に大きな星座だなあと感じさせられます。
 うみへび座の背中の上に乗っているのはコップ座とからす座です。からす座のいびつな四辺形は、付近に目立った星がないため、案外目立っています。実はこのカラスは大変なうそつきカラスで、みせしめとして天に上げられたものなんですよ。
 南東の空には純白のきれいな1等星スピカのあるおとめ座が、東の空から移動してきました。


 今度は天頂方向を見てみましょう。

4月15日21時 天頂の空のようす
4月15日21時 天頂の空のようす


 天頂方向は春の星座がいっぱいです。まずしし座が天高くに上り詰めてきているのが目に止まります。春の星座の代表格らしく、お化けライオンが優雅に横たわっているように見えるのが印象的です。先月は天頂近くに見えていたかに座は少し高度を下げてきましたが、それでもまだ高度60度付近にいて、長く見上げていると首が疲れてくる高さです。かに座には木星がいて、ちょうど今はプレセペ星団と接近していますので、双眼鏡で見てみると楽しい眺めとなるでしょう。
 北の空からは北斗七星が天高くに昇ってきました。


 最後は東の空です。
    

4月15日21時 東の空のようす4月15日21時 東の空のようす

 東の空からは、春の星座がどんどんと昇ってきて、今月でほぼ全部出そろいました。南東の方角からはうみへび座のしっぽの部分やからす座が見えています。先月はまだ東の空で高度が低くかったうしかい座やおとめ座も、高度を上げてきて見やすくなってきました。つるちゃんの場合、宵の空におとめ座が上ってくるのを見ると、春が来たなあと思います。先月までは見にくかった春の大三角も、今月にははっきりと確認できることと思います。
 東からやや北よりの空低くには、夏の星座のかんむり座が先陣をきって昇ってきました。

おとめ座

 真東よりもやや南より、アークトゥルスよりもやや低い高度には純白色の1等星が見えます。これはおとめ座のスピカです。スピカとはラテン語で「穂先」を意味しますが、農業の女神デーメーテルが持つ麦の穂の先の部分に位置しています。スピカは実は2重星で、ピッタリとくっつくように4日という短い周期で回りあっています。しかも赤道付近では太陽の100倍の秒速200キロという猛烈なスピードで自転しており、その表面温度は2万2千度もあって太陽の700倍もの光を放っているという強烈な星なのだそうです。
 おとめ座からりょうけん座にかけては小宇宙(他の銀河)が密集しており、「宇宙ののぞき窓」と呼ばれています。つるちゃんの3D銀河宇宙を使うと、この様子を3次元的にシミュレーションすることができますので、ダウンロードして一度お試しください。

 おとめ座はギリシャ神話では、農業の女神デーメーテルが麦の穂を持った姿だと伝えられています。


からす座

 この時期のからす座は東の空というよりは南東の空に見えます。うみへび座のしっぽの少し上側あたりに位置します。4つの3等星がいびつな4角形を形作っているのですが、付近には明るい星が少ないのも手伝って、小さな星座のわりには意外と目立っています。星の配列がいびつな分だけ、かえって印象に残るのかもしれません。星座絵ではうみへびの背中をつついている絵が描かれています。

 ギリシャ神話では、からす座はうそつきカラスとして登場します。カラスの飼い主であるアポロンの使いの帰りに、寄り道をして遅くなった言い訳に、アポロンの妻が浮気しているところを見たとウソをつきました。これが原因でアポロンは浮気相手を殺すつもりが、誤って妻を殺してしまいました。カラスのうそを知ったアポロンは、カラスを天に上げて、うそつきのみせしめとしたのだそうです。


コップ座

 コップ座とは変な名前の星座ですね。コップというとジュースを飲むときのコップを想像しますが、コップ座のコップは盃のことで、2つの取っ手と台がついた立派なものです。お酒と水を混ぜ合わせるのに使われたものでクラーテルと呼ばれています。位置はからす座の右隣にありますが、なにぶん暗い星が多いので、立派な盃の形を想像するのはちょっと難しいかもしれません

 ギリシャ神話では何通りかの説があるようですが、酒とぶどうの神ディオニュソスがお酒を造るのに使ったものだという説があります。


春の夫婦星

 うしかい座のアークトゥルスはだいだい色で男性な輝きをしており、おとめ座のスピカは純白で美しく、いかにも女性的な感じがいます。そこでこの2つの星をあわせて春の夫婦(めおと)星と呼んでいます。春の夫婦星は、春の大曲線からたどることができます。


春の大三角

 しし座のしっぽの星デネボラ(2等星)、おとめ座の麦の穂の穂先にあるスピカ(1等星)、うしかい座のだいだい色をしたひときわ明るい星アークトゥルス(0等星)の3つの星を結ぶと、空に大きな三角形ができあがりますが、これが春の大三角になります。冬の大三角と比べると、三角形の大きさはだいぶ大きなものです。2つの大三角が同時に見えるこの時期に、両者の大きさを比べてみましょう。

 春の大三角に、りょうけん座のα星(コル・カロリー)を加えると、春のダイヤモンドとなります。


かんむり座

 東の空低く、うしかい座の左下あたりには小さな星が7つ並んでかわいい半円形を形作っているのがわかります。これがかんむり座です。かんむり座は実は春の星座ではなくて夏の星座に分類される場合もありますので(つるちゃんのプラネタリウムでは夏の星座としています)、高度が低いのはいたしかたありません。主星ゲンマは2等星と明るいのですが、その他は4等星と5等星なので、田舎にでも行かない限りちょっと見づらいかもしれません。小さな星座ですが、半円形のかわいい形は実に印象に残ります。先に出てきた酒とぶどうの神ディオニュソスがクレタ島の王女アリアドネに贈った冠だというのも納得できます。