水星日面通過を観測しよう 2003年5月7日

水星の日面通過とは

 水星は地球の軌道の内側を回る内惑星ですから、地球から見た水星は太陽からある一定の角度以上離れることはありません。水星は太陽の付近をウロウロと動き回っている間に、偶然太陽と同じ方向に見えて、太陽の表面上を通過するように見える場合があります。これを水星の日面通過と呼んでいます。

 水星が日面通過する時には必ず内合となっており、[太陽]−[水星]−[地球]の順に一直線に並んでいます。地球から見た水星は、太陽を背にしているので、黒い小さな丸型に見えます。ちょうど、日食の時に月が黒い丸型をしているのと同じことです。

1999年の水星日面通過
水星日面通過の例

 水星の軌道は地球の軌道に対して約7度も傾いているために、水星の日面通過は5月と11月にしか起こりません。これが案外と難しくてなかなか条件が整いません。前回の水星日面通過は1999年11月16日でしたから、今回は3年半ぶりの現象ということになります。


位置関係の確認

 それではここで、地球、水星、太陽の位置関係を確認しておきましょう。下の絵は、ちょうど水星日面通過が起こっている頃の太陽系の様子を、「つるちゃんの3D太陽系シェア版」で表示したものです。

 太陽が原点にあり、そこから水星、地球の順に、3者が一直線に並んでいることがわかります。注目してほしいのは水星の位置です。軌道の色が水色の部分は地球の軌道より上側にあり、青色の部分は地球の軌道よりも下側にあることを示しているのですが、水星はちょうど水色から青色に変わる付近にいます。

 つまり、水星は地球の軌道面上の付近にあり、なおかつ地球と太陽を結んだ直線上に水星がうまく乗っています。これが少しでもずれると、地球から見た水星は、太陽方向からズレてしまうので、日面通過にはなりません。今回はまさにドンピシャリなタイミングというわけです。

水星日面通過時の太陽系の様子

当日の経過

 前置きはこれくらいにして、当日の水星日面通過の様子を見ていくことにしましょう。下の絵は数日間にわたる、星座間での太陽と水星の移動経路です。白色の線が太陽、水色の線が水星の経路です。また、小さな数字は日付を表しています。

 太陽と水星はおひつじ座付近で、ちょうどうまく接近することがわかります。日面通過当日の地平座標系で表示していますので、水星は太陽の右側を通過していくということもわかります。

水星と太陽の移動経路

 今度は赤道座標系によって太陽を固定したうえで、水星の経路を拡大表示してみました。水星は14時過ぎ頃に太陽面に接触し、その後太陽の北側を2時間半強ほどかけて通過していくことがわかります。絵では明石と表示されていますが、全国どこでもほぼ同じ経過をたどりますので、高度と方位角以外の数値は観測地による違いを気にする必要はありません。

水星の経路

 下の絵は水星が太陽の最も内側に入り込んだ頃(食の最大)の様子です。つるぷらの計算では誤差を含んでいる点に注意してください。実際には5月7日の14時52分頃に、食の最大となります。この時水星は、太陽の半径の4分の1くらいのところまで入り込んでいます。観測地が違っても高度と方位角以外の数値はほとんど変わらないのは先と同じです。

水星日面通過、食の最大の頃の様子

 その後は水星日面通過の状態のまま、日没を迎えてしまいますので、日面通過の最後まで観測することはできません。

「つるちゃんのプラネタリウム for Javaアプレット」の中にある「日食と月食」で「食の種類」を水星日面通過に変更してから前回検索ボタンを押して(2004年の日付となっているため)、水星の日面通過の様子をシミュレーションしてみましょう。
 ※多少の誤差を含む点をご了承ください。


東京での観測データ

 東京での観測データを掲げておきます。日面通過の時刻に関しては、全国でほぼ同じと考えて差し支えありません。高度は場所によって多少異なりますが参考にはなります。

<東京の水星日面通過>

  開始 食の最大 水星の入り
時刻 14時11.7分 16時50.9分 18時31.1分
高度 51度 19度 0度

<各地の水星の入り時刻>

観測地 水星の入り
札幌 18時40.8分
仙台 18時33.4分
東京 18時31.1分
京都 18時47.4分
福岡 19時04.1分
那覇 19時03.9分


当日の注意点

 日面通過を観測するにあたっての注意点を何点かあげておきましょう。

天体望遠鏡で観測する

 太陽はともかく、水星の大きさは直径が12秒程度しかありません。ですから肉眼では到底わかりませんので、観測するには天体望遠鏡が必要となります。

水星は黒く見える

 地球から見た水星は太陽を背にしているので、影の部分しか見えません。したがって、小さな黒い丸に見えます。うっかりすると太陽黒点と間違えてしまいそうですので気をつけましょう。

移動を見よう

 水星は少しずつ太陽の表面上を動いていくように見えます。その速さはゆっくりとしたものですが、少し時間を空けて観測すると移動が確認できます。

太陽の減光をお忘れなく

 当然のことですが、太陽をまともに見ると失明の危険があります。次の注意点を守って楽しく観測しましょう。

・太陽の導入時を含めて、太陽を直接肉眼で見ないようにします。
・どうしても肉眼で見なければならない場合は、白黒フィルムの黒くなった部分を通して見るようにします。
   注)カラーフィルムは紫外線を通すので危険です。
・天体望遠鏡で観測する場合は、口径を4センチ程度にまで絞った上で、投影版などに映し出すようにします。
・投影版が利用できない反射式望遠鏡などの場合は、口径を4センチ程度にまで絞った上で、対物側に太陽観測用専用フィルターを着けて見るようにします。
   注)長時間見続けるのは避けた方が無難です。
・接眼レンズは、熱に強いタイプ(H、MHなど)を使用します。


今後の日面通過

 2006年11月9日には再び水星日面通過が起こります。太陽半径の57%まで水星が入り込むという好条件ですが、日の出直後の現象です。更にその次の水星日面通過となると、2032年11月13日まで待たねばなりません。2006年11月9日の水星日面通過は、「将来の天文現象」の中の2006年11月9日 水星日面通過で紹介しています。

 また、非常に珍しい金星の日面通過が2004年6月8日と2012年6月6日に起こります。金星の日面通過は今世紀はこの2回しか起こりません。2004年6月8日の金星日面通過は、「将来の天文現象」の中の2004年6月8日 金星日面通過と、「つるぷらが描く珍しい天文現象」の中にある金星の日面通過2004年で紹介しています。

 その他の今世紀中に起こる日面通過は、「天文用語ミニ解説」の中にある東京の日面通過を参照してください。