水星の天体観測にチャレンジしよう 2008年5月中旬

2008.4.13 新規

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観測しにくい水星

 水金地火木土天海。現在、太陽系には8つの惑星があります。このうち、明るさの点から観測しづらい天王星と海王星、それから私たちが住む地球を除けば、いずれの惑星も肉眼で十分に観測できる明るさになります。しかしながら水星だけは意外と見つけにくく、「天体観測を始めてみたけど、まだ水星はお目にかかれなくて・・・」なんていう方がおられるかもしれません。地動説で有名なあのコペルニクスでさえ、生涯に一度も水星を見たことがなかったぐらいですから。

 でもどうして水星は見つけにくいのかって? それは、水星は太陽系の中で最も内側の軌道を回る惑星で、いつも太陽の近くに見えるため、太陽の光が水星の天体観測を邪魔するからです。ですから、水星を見つけるためには、水星が太陽から離れたタイミングを見計らう必要があります。

水星の天体観測、絶好機到来

 そんな水星ですが、今年の5月中旬頃には最高の観測好機がおとずれます。5月14日に水星が太陽から東方向へ最も離れる東方最大離角となり、日没時刻における水星の高度が今年で最も高くなるからです。まさに、水星天体観測の絶好機到来。水星を見たことがないという方も、これを機にがんばって、ぜひとも水星を見つけていただきたいと思います。

水星の位置

 下の絵は日没時刻に水星がどの方向に見えるかを表したものです。水星の形は5日間隔で表示しています。水星は左下から右上へと駆け上がり、その後は右下へと移動していきます。水星が見やすくなるのは、日没時刻における水星の高度が15度を超える5月上旬から中旬にかけてで、この頃が狙い目です。水星の位置は真西よりもやや北側へずれているので注意してください。

日没時刻における水星の位置変化
日没時刻における水星の位置変化

水星の見つけ方

 下の絵は5月14日、日没から40分後における西北西の空のようすです。水星は10度強の高度に見えていますが、空はまだ少し明るい薄明状態です。水星の明るさは0.5等ですから十分明るいように思われるかもしれませんが、薄明中であることや水星の高度が低いことが災いして、肉眼でたやすく見つけるのは最初は少し骨が折れるかもしれません。

 時間が経つにつれて空は次第に暗くなっていきますが、同時に水星の高度が下がってきて見づらくなります。この微妙なバランスの中で条件が整うと、肉眼でもプチッと光る水星を確認することができるでしょう。

5月14日 日の入り40分後 水星の見える位置
5月14日 日の入り40分後 水星の見える位置

水星の明るさ

 下のグラフは水星の明るさの変化を表したものです。水星の明るさは日がたつにつれて次第に暗くなっていくことがわかります。ですから、少しでも良い条件で水星を観測しようと思ったら、東方最大離角となる5月14日の後に観測するよりも、前に観測した方が有利です。

水星の明るさ変化
水星の明るさ変化

月を目印にしよう 5月6日〜7日

 水星を探す際に、何か良い目印になる明るい星でもあればいいのになあ。そんなことを考えているあなたに、とってもいい話があります。実は5月6日から7日にかけて、水星の近くを月が通り過ぎていきます。太陽を除けば月よりも明るい天体はありませんから、まさに願ったりかなったりですね。このお話は天体観測ガイドの中にある2008年 5月6日〜7日 月を目印に水星を見つけようで紹介していますから、そちらの記事を参考にしてください。

双眼鏡を使おう

 条件が整えば水星は肉眼でも見つけられるのですが、低空に薄い雲やモヤが出ていたりすると、たちまち水星は見えなくなってしまいます。また、視力に自身のない方もおられるでしょう。そんな時には双眼鏡を使いましょう。

 双眼鏡は人間の瞳よりも口径が大きい分だけたくさんの光を集めることができますから、肉眼では見づらい時でも水星を簡単に見つけ出すことができます。また、双眼鏡はピント調整もできますから、視力が悪い人でも大丈夫ですよ。7倍から10倍くらいの双眼鏡の場合ですと、視野の広さは5度から7度程度。これを目安にして地平線から水星の高度を逆算しながら、少しずつ視野を上げていくと水星を見つけることができます。

 双眼鏡は水星探しの時以外にも天体の位置を確認する際に多用し、何かにつけて活躍します。天体観測をする人にとって双眼鏡は必需品に近いものがあります。

(つるちゃん、手もみしながら)
 え〜。天体観測用の双眼鏡をお探しの方は、「買っちゃおう 天体観測用品」の中にある「天体観測用の双眼鏡を買っちゃおう」のページからどうぞ。

天体望遠鏡で水星の満ち欠けを観測しよう

 満ち欠けをする惑星といえば、まず金星が思い浮かびますが、実は水星も内惑星であるために満ち欠けをします。しかし、水星は金星よりも内側を公転しているため地球との距離変化はそれほど大きくなく、したがって大きさの変化も金星ほど激しくありません。天体望遠鏡を使うとこのような惑星の満ち欠けや大きさの変化を観測することができますから、これにチャレンジしてみましょう。

 下の絵は4月下旬から5月下旬にかけて、水星の形と大きさの変化を表したものです。水星は丸い形から次第に細くなっていきますから、この様子を天体望遠鏡を使って観測してみたいところです。

 金星と違って水星の大きさは小さいだけに、観測の際には天体望遠鏡の倍率を高くしたいところです。しかし水星の場合は常に低空での観測となるために天体望遠鏡で観測した水星は大気の影響を受けて、安定した像を得るのは至難の業です。そんな中、大気が落ち着いた日を狙って観測すると、最大離角の頃なら半月形をした水星をとらえることができます。

 安定した水星像をどうしても楽しみたいのであれば、日中に観測するという手もあります。ただし、太陽が近くにあるため、間違って天体望遠鏡へ太陽を導入しないように細心の注意を払う必要があります。

水星の満ち欠けと大きさの変化
水星の満ち欠け

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