直線状となった細い土星の環を観測しよう 2008年12月〜2009年1月

2008.11.9 新規

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 天体観測といえば月のクレーター、木星の縞模様とともに、土星の環をイメージされる方も多いことでしょう。土星の環を一度この目で見て見たい! 天文ファンならずとも、このような憧れを抱く方は少なくないはずです。そんな土星の環が2008年の年末から2009年の年初にかけて非常に細くなり、小型の天体望遠鏡では直線状に見えるという変わった現象が見られます。

30年で公転する土星

 地球の公転周期は1年ですが、土星の公転周期は約30年です。土星の環は地球の公転軌道に対して27度傾いており、土星の環を眺める角度は30年周期で毎年変化します。土星の環を斜め方向から見る位置にくると、環は開いて観測しやすくなりますが、真横から眺める位置にくると観測できなくなります。そして来年2009年は、土星の環を真横から眺める位置にやってくるので、一時的に消失してしまったように見えます。

土星の環の消失とは

 土星の環の消失についてもう少し正確に書くと、消失する理由は2つあります。まず1つ目の理由は、先にも書いたように、地球から環を真横から眺めることによります。これはわかりやすいですね。土星の環は非常に薄いものですから、真横から眺めると見えなくなってしまうのです。この理由による環の消失は、地球と土星の位置関係によって3度起こるパターンと、1度だけ起こるパターンがあります。2009年の場合は1度だけ起こるパターンで、9月4日に見られます。

 環が消失する2つ目の理由は、太陽の光が真横から当たることによります。つまり、太陽の光が当たらなくなるので見えなくなってしまうのです。こちらは1度だけ起こり、8月11日に見られます。

 このように、土星の環の消失が2度観測できるのですが、残念ながら2009年9月19日が合で、太陽と同じ方向へ土星がやってきます。ですから、土星の環が消失する8月、9月頃は土星は太陽から近い位置にいて、観測条件が良くありません。

年末に細くなる土星の環

 ところで、今年の年末から来年の年初にかけて、土星の環はいったん非常に細くなります。これに向けて土星の環はすでに細くなり始めています。9月初め頃には5度あった土星の環の傾きが、この記事を書いている11月現在では2度を切ってきました。そして年末頃には0.8度まで小さくなり、ほとんど真横から眺める格好になるのです。その後は2009年5月半ばにかけて、4.1度まで次第に大きくなってきますから、今年の年末から来年の年初にかけてが、細い土星の環を見るチャンスです。見掛け上の環の幅は0.6秒ですから、アマチュアが使用する小さな天体望遠鏡ではほとんど直線状に見えることでしょう。

土星はどこに見える?

 それでは年末頃、土星はどこに見えるのでしょうか。土星は12月15日に西矩となり、明け方に南中します。下の絵のように年末の3時頃でしたら、南東の空で高く昇ったしし座の後ろ足の足元付近に0等級で見ることができます。土星は鈍い黄土色をしていて明るい上に、他の恒星と違って瞬きが少ないので、すぐにそれとわかります。

年末頃に土星が見える位置
土星は夜明けに南中する。3時頃なら南東の空の中ほどに見える。

天体望遠鏡で土星を天体観測しよう

 このように、今年の年末から来年の年初にかけて、非常に細い土星の環を観測することができます。といってもこれを観測するためには天体望遠鏡が必要です。天体望遠鏡で観測すると、非常に細くなった環が直線状に見えて、丸い土星本体を串刺しにしたような格好に見えることでしょう。カッコイイ開いた土星の環を見るのも感激モンですが、15年に1度しか見ることのできない珍しい姿を、ぜひとも天体望遠鏡で観測していただきたいと思います。天体望遠鏡を購入しようか迷っている方からおられたら、天体望遠鏡の選び方のページへ急ぎましょう! (と、ちょっと宣伝・・・)

 ちなみに、つるちゃんも前回に串刺しにされたような土星を見ましたが、不思議と環の開いたカッコイイ土星よりも強烈に印象に残っています。

観測会へ参加しよう

 天体望遠鏡をお持ちでない方もあきらめてはいけません。近くの天文施設では、もしかすると天体観測会をしているかもしれません。真夜中に観測会を行う天文施設は少ないかもしれませんが、西はりま天文台など、宿泊施設があって天体望遠鏡を貸し出してくれるような施設もありますから、こういう所を利用してみるのも一案です。 ※年末年始は営業日にご注意ください。

 他にも、地元の天文同好会やサークルで天体観測会が開かれていることがあります。素人の方でも気軽に参加できる場合が多いですから、一度インターネットで調べてみられてはいかがでしょうか。

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