日食中に見える星 2012年5月21日

 大きな日食になると空が暗くなって、星が見えることがあります。といっても太陽光は強烈です。たとえ金環日食になって太陽が95%欠けたとしても、残りの光によって意外と空は明るくて、思ったほど暗くなりません。これは金環日食を体験した人の共通な意見のようです。以降では2012年金環日食での最大食頃、東京で見える星について解説します。札幌、大阪、福岡から見た星図も別ページで示しておきましたので参考にしてください。

   札幌から見える星
   大阪から見える星
   福岡から見える星

太陽の方向に見える星

 日食中は明るい金星なら見えるのではないかと思います。下の星図をご覧ください。これは東京で金環日食中に見える空の様子を描いたものです。太陽は三日月形をしていますが、ドットの関係でこのように表示されており、実際は金環日食です。

 日食中に観察することができる星の筆頭は、なんといっても全天で最も明るい金星でしょう。金星の明るさはマイナス4等級に達し、この日の明るさは−4.3等です。最も明るく光る最大光輝の頃には普通の視力の人なら日中でも見つけることができますから、まず間違いなく見つけられるでしょう。金星は太陽から見て左下方向に位置しており、ハッキリと見えるに違いありません。

 次に見える星の候補は太陽の右上方向に見える−2.0等の木星です。しかし残念なことに、太陽のすぐ近くにあるため、明るい日食中の太陽光にかき消されてしまうでしょう。木星のすぐ右上に見える−1.5等の水星も同様です。こちらも相当厳しいですが、双眼鏡を使えばなんとか見えるかもしれません。しかし太陽がすぐ近くにありますから、誤って太陽を視野に導入すると非常に危険です。おやめになった方が賢明でしょう。

東京での空の様子
金環日食中の空の様子。左下には金星、右上には木星と水星が見える


星がたくさん見えると仮定した場合
金環日食中の空の様子。左下には金星、右上には木星と水星が見える
※「つるプラ シェア版」に付属する「つるちゃんの日食ソフト」プラグイン機能に追加された「全恒星」の機能を使用

全天を見てみよう

 金環日食中は思った以上に明るい空であることを承知の上で、無理矢理に3等星以上の星を描いたのが下の星図です。先に出てきた惑星以外で見える可能性があるとすれば、その筆頭はベガです。ベガは織姫星としても知られる星ですが、その明るさは1等星よりもワクランク明るい0等星です。しかも太陽と反対側の北西の空に位置しますので、条件的には有利です。しかし、日食中とはいえ太陽の光はすさまじいものがあります。それだけに肉眼で観察するのは難しいように思います。ベガも双眼鏡を使うと確認できる可能性があります。

 0等星という点では金星から遠くないところにあるカペラも当てはまりますが、さすがに太陽から近いので圏外です。また、オリオン座のリゲルも0等星に分類されますが、こちらも太陽の近くにある上に高度も低くて論外でしょう。日食中にどこまで星を見ることができるか、一度試してみてください。

東京から見た全天の様子
全天の星の配置


つるちゃんのプラネタリウム 金環日食の解説