日食の種類

日食の種類

日食の説明図 右の絵は、つるちゃんの本「天体観測の達人」から引用したものです。太陽、月、地球の順に一直線に並ぶとき、つまり、月が地球と太陽の間にやってきて、地球が月の影の中へ入ると日食が起こります。
 
 かつて日食は蝕む(むしばむ)という漢字を使って日蝕と書かれたように、月によって太陽が食されて欠けて見える現象です。地球規模でみると年に何度か起こっているのですが、日本国内から観測できるものは数年に一度の割合でしか起こりません。
 
 日食は太陽の一部が欠けて見える部分日食、リング状に見える金環日食(金環食)、全部が隠されて黒い太陽が見える皆既日食の3つの種類があります。

月の本影と半影

 月が太陽に照らされると影ができます。この影の中を地球が通過する時に日食が起こります。地球から見た月は太陽を背にしているので光る部分がありませんから、日食が起こる時は必ず新月です。三日月が見える日に太陽が急に欠け始めるなんていうことはあり得ません。皆既日食の際には太陽が隠されて新月だけしか見えなくなりますから、「黒い太陽」と呼ばれたりします。
 
 月の影は太陽が完全に見えなくなる本影と、太陽から光の一部が到達している半影があります。本影の面積は半影の面積に比べて非常に狭いものです。例えば今世紀最大の皆既日食といわれた2009年トカラ列島皆既日食の場合ですら、皆既帯の幅は最大で258.4Kmしかありません。これはだいたい東京と大阪の距離の半分くらいに相当しますから、地球全体の面積から考えるとごく狭いエリアといえます。

皆既日食

皆既日食の例
 
月の本影に入った地点では皆既日食が見られる
 
 それでは日食の種類の話に移りましょう。まず皆既日食ですが、これは月によって太陽が全部すっぽりと覆い隠されてしまう現象です。皆既日食が見える地点では月の本影に入っており、太陽の光が届かなくなります。皆既日食になると、太陽を取り巻く希薄で高温なコロナを観測することができます。また、太陽の縁にはプロミネンスが見られることもあります。
 
 太陽が地球から遠い位置にいて太陽が小さく見えたり、月が地球に近い位置にいて月が大きく見えることにより、 (太陽の見かけの大きさ) < (月の見かけの大きさ) となることが皆既日食が起こる条件になります。
 
 月の影の中心は月の公転や地球の自転のためにドンドンと地球上を移動していきます。したがって、皆既日食が見られる範囲は細い帯状の地域となり、皆既帯または皆既日食帯と呼ばれています(当サイトでは皆既帯と書きます)。先にも書いたように、皆既帯や次に出てくる金環帯は非常に狭いものですから、ある特定の地点からずっと長期間にわたって観測し続けたとしても、皆既日食や金環日食は一生に一度起これば良い方です。だからこそ、皆がこぞって皆既日食を見ることができる地点へ遠征して観測するのです。

金環日食(金環食)

金環日食の例
 
月の本影が地球へ届かない場合は金環日食が見られる
 
 金環日食(金環食)は皆既日食と同様に非常に珍しい現象です。太陽の見かけの大きさよりも月の見かけの大きさの方が小さくて、月が太陽を完全に隠し切れなかった時に太陽がリング状に見える現象です。このとき、月の本影は地球に届いていません。金環日食の場合も皆既日食の場合と同様に、細い帯状の地点で観測することができ、金環帯または金環日食帯と呼ばれています(当サイトでは金環帯と書きます)。

 地球と太陽の距離が近かったり、地球と月の距離が遠かったりすることにより、 (太陽の見かけの大きさ) > (月の見かけの大きさ) となることが金環日食が起こる条件になります。金環日食では皆既日食とは違って太陽コロナを観測することはできません。

部分日食

部分日食の例
 
 月の半影では太陽の光の一部が届いており、地球が月の半影に入ると、太陽の一部が欠けて見える部分日食になります。ひとことで部分日食といっても、太陽のごくわずかしか欠けて見えない小さな部分日食もあれば、三日月よりも細くまで欠けるような大きな部分日食もあります。日食の場合は月食と違って、観測地点の違いによって欠け方が違ってくるのが特徴です。
 
 太陽の直径と比較してどれだけ欠けたかを表すのに食分が使われます。日食の開始や終了時には0となり、皆既日食では1以上になります。食分は皆既帯や金環帯の中心線へ近づくほど大きくなり、離れるほど小さくなります。