天体望遠鏡の架台の形式

 天体望遠鏡の架台の形式は経緯台式と赤道儀式のふたつに分かれます。使用目的に合わせて架台の形式を選びましょう。天体望遠鏡というと、どうしても鏡筒の方に目がいきがちです。でもベテランの人はまず架台を見ます。架台がひ弱だと、ちょっと風が吹いたり、鏡筒に触れただけで像がユラユラと揺れて天体観測になりません。激安品にはこういったものも見受けられるので要注意! 眼視観測だけでなく写真撮影まで考えている方はなおさらです。架台は頑丈でガッチリし、積載重量に余裕のあるものを選びましょう。

経緯台式

 経緯台は地面に対して水平方向と垂直方向に動きます。動き方が直感的にわかりやすいので、初心者の方に向いています。赤道儀式に比べて構造が簡単で、重量も軽く仕上げることができます。天体望遠鏡を移動する際に、力のない女性でも扱いやすいでしょう。また、赤道儀式のように極軸合わせといったセッティング作業が不要ですから、野外へ持ち出してすぐに天体観測を始めることができます。

 みなさんは星は同じ位置にじっとしていると思っていませんか? 実は、地球の自転によって天体の位置はどんどんずれていきます。高倍率で観測する場合はなおさらです。経緯台式の場合、これを追尾するために水平方向と垂直方向の2方向へ同時に動かす必要があります。このことから、長時間の観測や天体写真撮影にはあまり向いていません。

 一台目の天体望遠鏡を購入される場合、総合的に考えると、多くは経緯台式になるのではないでしようか。その場合に注意していだたきたいことがあります。天体を導入したり追尾したりする時には、微動装置と呼ばれる装置によって少しずつ望遠鏡を動かします。しかし、安価な入門機では省略されている場合があります。微動装置なしで天体を導入したり、高倍率で天体を追尾するのは結構難しくて、これがないのは致命的といえます。入門機といえども、できる限り微動装置のついたものを選んでいただきたいと思います。 

赤道儀式

 赤道儀は地球の自転軸に対して水平方向と垂直方向に動かします。このため、最初に極軸と呼ばれる回転軸が地球の自転軸と平行となるよう、極軸合わせというセッティング作業が必要になります。極軸を正確にあわせるためには極軸望遠鏡が別途必要になります。

 最も普及しているドイツ式赤道儀では、鏡筒とバランスをとるためにバランスウェイトが必要になるので、重くなってしまいます。また、経緯台式と比べて構造が複雑になりますから、どうしても価格的に高くなります。

 赤道儀の場合は天体の動きに合わせ、赤経と呼ばれる方向に回転させるだけで天体を追尾することができます。ですから、長時間にわたっての天体観測や天体写真撮影に向いています。また、モータードライブを購入すると、自動で追尾することも可能です。

 ここで気をつけたいのは、特に天体写真撮影をする場合は機材が重くなるということです。赤道儀ごとに積載重量が決まっていますから、できるだけ余裕のあるものを選びたいところです。過積載は撮影に影響するばかりでなく、赤道儀に無理な負担をかけてしまって故障の原因になります。

 赤道儀の種類はドイツ式、フォーク式、ヨーク式、イギリス式、ホースシュー式など複数ありますが、アマチュア用として最も普及しているのはドイツ式赤道儀です。 

ドブソニアン式

 架台の構造を思い切って簡略化したのがドブソニアンと呼ばれる天体望遠鏡です。ドブソニアンは基本的には経緯台です。ドブソニアンの目的は、安価に大口径を手に入れて気軽に使用することですから、鏡筒にはニュートン式の反射望遠鏡が採用されるケースがほとんどです。架台部の微動装置や歯車が省略されているため軽量で、しかも安価に販売されています。微動装置もなく全て手動で動かすことになるので、自分の手先だけが頼りです。そういう意味で、初心者の方にはおすすめしません。 

経緯台と赤道儀の比較

 経緯台と赤道儀を比較すると下の表のようになります。やはり一長一短がありますね。

比較項目 経緯台 赤道儀
写真例 経緯台の架台の例 赤道儀の架台の例
天体望遠鏡が動く方向 ・地面に対して水平、垂直方向
(地平座標系)
・日周運動の方向、垂直な方向
(赤道座標系)
・星の動きに合わせて追尾できる
取り扱い ・移動してもすぐに天体観測を開始できる
・初心者でも取り扱いが容易
・最初に極軸を合わせる必要がある
 (慣れれば5分くらい)
・操作がわかりにくい
長時間観測、天体写真 ・不向き ・向いている
・モータードライブにより自動運転が可能
高い倍率での観測 ・やや面倒 ・容易
重さ ・軽い ・バランスウェイトが必要など、重くなる
価格 ・安い ・高い

関連リンク:
  天体望遠鏡の架台でよくある質問
  天体望遠鏡の赤道儀でよくある質問