天体望遠鏡の組み立て方

 天体望遠鏡を購入してから届くまでの数日間は、ワクワク、ドキドキですね。そしてようやく天体望遠鏡が到着。いよいよ憧れの天体望遠鏡を組み立てましょう。

 ここでは天体観測入門者に人気のあるビクセンのポルタ2シリーズ天体望遠鏡のうち、ED80Sf(8cm、屈折経緯台式)をつるちゃんが購入したケースを例に、天体望遠鏡を組み立てる方法を紹介します。なお、みなさんが実際に組み立てられる際は、メーカの取扱説明書や注意事項をよくお読みになり、それらの手順に従ってください。

組み立ての流れ

 天体望遠鏡の組み立て方は大まかに、到着・確認、取り付け、調整の3ステップからなります。以降ではステップごとに詳しく解説していきましょう。

到着・確認
  • 開封
  • 付属品などを確認
組み立てる
  • ファインダー
  • フリップミラー(天頂ミラー)
  • 微動ハンドル
  • アクセサリートレイ
  • 鏡筒
調整
  • 鏡筒の向き
  • バランス

天体望遠鏡の到着と確認

 さあ、待ちに待った天体望遠鏡が到着しました。開封後はまず付属品などを確認しましょう。

天体望遠鏡が到着

 天体望遠鏡を組み立てるには結構な場所をとりますので、到着する日が近づいたら、箱を開封するスペースを確保しておきましょう。ビクセン製のED80Sfの場合は、大きな箱が2個到着しました。対物レンズの焦点距離が600mmと短いですから、きっと小さい箱が鏡筒で、大きい箱が三脚と架台でしよう。「MADE IN CHINA」の文字を見て少しがっかりしましたが、いよいよ開封です。

鏡筒の箱を開封

 小さい方の箱を開けてみました。開封後に上から見ると、鏡筒が入ったアルミケースでいっぱいです。右の写真で箱の左側に見えるのは、「ED80Sf 鏡筒ユニット取扱説明書」です。

アルミケースを取り出す

 右の写真が、鏡筒の入ったアルミケースです。大きな赤い字でVixenの文字が書かれています。ED80Sfの対物レンズの焦点距離は600mmで、ケースも同程度の長さです。しかし、高さと奥行きがあるせいか、意外と大きく感じられました。アルミケースは移動して天体観測する際に重宝しそうです。アルミケースが付属するのは、ビクセン経緯台式の天体望遠鏡ではこの機種だけということもあって、ちょっと優越感に浸ることができました。しかし、その優越感はここまででした。

アルミケースをオープン

 アルミケースをオープンすると、写真のように望遠鏡が入れられていました。手前側に鏡筒、左側奥にファインダー、右側奥にフリップミラーが入っています。いずれもビニールに包まれているため、写真ではわかりづらくなっていますがご容赦ください。しかしアルミが薄く、ケース内にある衝撃緩衝材も安っぽくて、興ざめしてしまいました。少なくとも以前に購入した同社製の赤道儀用アルミケースとは異質なもののようです。しかし、価格のことを考えれば納得の範囲かもしれません。

 それはともかく、天体望遠鏡を組み立てるためには天体望遠鏡の本体をケースから取り出さなければなりません。しかし、ギチギチに格納されているため、鏡筒がなかなか出てきません。力まかせに思い切り引っ張ると、少しずつジワジワと鏡筒が出てきました。

付属品を確認(その1)

 この時点で念のため、次の付属品や取付け状態を確認しておきましょう。

三脚の箱を開封

 ここで第二の箱、つまり三脚の入った大きな箱を開封しましょう。開封したての箱の様子が右上の写真です。アルミ三脚とポルタ2経緯台本体が合体した状態で入れられています。この部分はポルタ2タイプの機種は全て同じではないでしょうか。箱の左端にある黒くて丸い板は何かというと、アクセサリートレイです。これは後ほど出てきます。

 アクセサリートレイと、中央部にある黄色い袋を取り除いたのが下の写真です。黄色い袋は何かと思って開けてみると、接眼レンズが入れられた白い箱が2個入っていました。それから左端に二つある小さな黒い丸は経緯台の微動ハンドルです。これによって天体望遠鏡を上下左右に少しずつ動かすことができます。

 中央から右上側に白く光るものが見えます。写真ではビニールが光を反射してわかりづらいですが、これは「ポルタ2経緯台取扱説明書」が入った袋です。他にも星空ガイドブック、星座早見盤、光学機器保証書(5年)が入れられていました。

付属品を確認(その2)

 念のために次の付属品があることを確認しておきましょう。

 ここまで出てきた付属品を並べたのが右下の写真です。

組み立てる

 天体望遠鏡の箱を開封して中身の確認ができたら、さまざまな物品を取り付けながら組み立てていきます。説明書を見ながら取り付ければ、それほど難しいところはありません。つるちゃんの場合は次のように組み立てていきました。

ファインダー

 付属品の確認ができたら、鏡筒へファインダーを取り付けましょう。ファインダーは、星を導入するために設けられた小さな望遠鏡のことです。ファインダーの取り付けはこのタイミングよりもっと後でも問題ありません。この機種のファインダー取り付け方法はいたって簡単です。

 右の写真をご覧ください。鏡筒の接眼側に、ファインダーを取り付けるための溝があります。ここへファインダーの脚を左側から右側へ押し込みます。奥まで完全に入ったら、銀色のファインダー脚固定ネジを締め付ければ終了です。このときネジの締め付けがあまいと、天体望遠鏡を天頂(真上)方向へ向けたときに、ファインダーがずれ落ちてしまうかもしれません。固定ネジをしっかり締めておきましょう。

フリップミラー

 フリップミラーは天頂ミラー(天頂プリズム)のように、高い位置にある天体を観測する時に使用すると、楽な姿勢で観測することができます。天頂ミラーと違って天体写真撮影でカメラを取り付けた際、ミラーを切り替えることにより、眼視でもカメラでも天体を確認することができるので便利です。

 フリップミラーの取り付け方は簡単です。写真のように接眼部へフリップミラーを差し込みます。フリップミラーを差し込んだら、2本の固定ネジを締め付けて固定します。

微動ハンドル

 次に微動ハンドルを取り付けます。準備として三脚を開いた状態で立てておいてください。三脚は開き止めが開ききるまで、いっぱいに開いておきます。

 微動ハンドルの銀色金属部の先端に、窪んだ丸印が刻まれています。これをハンドル取り付け部の平らな部分に合わせ、そのまま差し込みます。左下の写真は方位用の微動ハンドルを取り付けた例です。

 ポルタ2経緯台の場合、上下用と方位用の2箇所に微動ハンドルがあります。両方に取り付けると右側の写真のようになり、これで完了です。

アクセサリートレイ

 次にアクセサリートレイを設置します。アクセサリートレイは天体観測をする際に、接眼レンズや懐中電灯などの小物類を置いておくのに便利です。アクセサリートレイを設置する時に注意していただきたいのは、三脚を完全に開ききった状態でトレイを取り付けることです。そうしないとトレイが浮いた状態で不安定になってしまいます。

 それでは三脚の開き止め中央付近を見てみましょう。丸くて少し大きめのネジがついていますから、これを取り外してください。ネジの部分だけが飛び出た格好になりますから、トレイの穴をここに差込んで、トレイを開き止めの上に載せます。再びネジを付けると右下写真のようになり、アクセサリートレイの設置は完了です。

鏡筒の取り付け準備

 鏡筒を経緯台へ取り付ける前に、一つ準備しておく事があります。経緯台の上部に右上写真のようなものがついており、プレートホルダーとよばれています。プレートホルダーを手で持って回転させ、写真のように固定ネジが上側にくるようにしておいてください。

 固定ネジは黒くて大きなツマミと、銀色の小さなツマミの2種類あります。それぞれ鏡筒固定ネジ、鏡筒脱落防止ネジとよばれます。これら2種類のネジを緩めておきましょう。後に鏡筒を取り付ける際にネジがじゃまにならないように、突起がなくなるまで緩めておいた方が無難です。

 右下の写真は鏡筒側の取り付け部で、アタッチメントプレートといいます。次のステップで出てきますから覚えておきましょう。

鏡筒の取り付け

 ここまでできたら、いよいよ鏡筒を経緯台に取り付けます。先に出てきた鏡筒側のアタッチメントプレートを、経緯台側のプレートホルダーに接合させます。右上の写真は、鏡筒を右側へ動かしながら経緯台へ近づけているところです。

 右下の写真のように接合したら、2つの固定ネジを締めて固定します。最初に黒くて大きな鏡筒固定ネジ、次に銀色で小さな鏡筒脱落防止ネジの順に締め付けます。このとき、アタッチメントプレートとプレートホルダーの間に隙間ができないようにしてください。隙間があるとネジを締めてもガタついたり、突然外れたりして事故の原因になります。

 取り付けは初めての方でも簡単にできますから安心してください。これは、アリガタとアリミゾとよばれるものを組み合わせることにより、しっかりと確実に、しかも簡単に取り付けることができるようになっているのです。

調整

 取り付けと組み立てが完了したら、最後は調整です。といってもそれほど難しいものではありません。取扱い説明書に従って、天体望遠鏡の調整を進めていきましょう。

鏡筒の向きを調整

 ここで、鏡筒バンドの取り付けネジをいったん緩めて、ネジを外してください。これは鏡筒の向きを調整するためです。鏡筒を架台から外さなくても結構ですが、落とさないように手でしっかり支えながら、細心の注意を払って作業を行ってください。

 人によって好みが違いますが、右下写真のように、ファインダーがフリップミラーの見口から離れるように鏡筒を回転させます。これは、ファインダーが接眼部と同じ方向にあると接眼部が邪魔になり、ファインダーがのぞきづらくなるからです。利き目が右目の人は写真のように、フリップミラー側から見て左側へ回転させます。逆に利き目が左目の人は、反対側へ回転させると良いでしょう。

バランス調整

 最後に鏡筒のバランスを調整します。地面に対して鏡筒を水平にしたり上を向けたりして、対物側と接眼側のバランスを確認します。天体望遠鏡は向きによらず、スムーズに動きますか? 動きを止めるとフリーストップにより、ピタッと静止しますか? バランスが悪いとわずかの力で天体望遠鏡が動き出したり、鏡筒を三脚にぶつけたり、場合によっては転倒することもあり危険です。

 バランスが悪い場合は、まず天体望遠鏡を水平にしてください。鏡筒を前後に動かしてバランスを調整します。問題ないところで再び鏡筒のネジを締めれば終了です。ネジは鏡筒がたわまない程度にしっかりと締めておきましょう。

組み立て完了

 さあ、これで天体望遠鏡の組み立てが全て完了しました! あー、夜になるのが楽しみ。初の天体観測が待ち遠しいですね!!!