しし座流星群に期待!? 2009年11月18日未明

今年のしし座流星群は期待できるかも

 しし座流星群といえば1998年から2002年に活発な活動を見せ、特に2001年には日本でも1時間あたりに最大で2000個とも3000個とも言われる流星雨が見られたのを思い出します。近年は低調な活動が続いてさびしい流星群でしたが、昨年2008年はヨーロッパを中心に1時間に最大で100個もの流星が観測されました。

 実は、今年2009年も昨年出現をもたらした流星のもととなるチリの帯(ダスト・トレイルといいます)の中を、再び地球が通過すると予報されています。チリの帯はしし座流星群の母彗星であるテンペル・タットル彗星が、16公転前となる1466年に撒き散らしたものです。最新の予報では、11月18日6時12分(日本時間)に最も近づき、その距離は0.00085AU(約14万キロ)となります。このダスト・トレイルへの接近により、理想的な条件下換算で1時間あたりに115個の流星が見られるそうです。

 またこれとは別に、14公転前となる1533年に放出されたダスト・トレイルにも近づきます。こちらは11月18日6時30分に0.00031AU(約5万キロ)まで地球が近づき、流星の出現数は理想的な条件下換算で1時間あたりに80個程度と予報されています。そんなわけで2009年のしし座流星群は、例年よりも多くの流星が見られるのではないかと期待されているのです。

テンペル・タットル彗星の軌道付近を通過する地球

※地球がテンペル・タットル彗星の軌道を横切る時に、しし座流星群が見られる

理想的な条件下換算で200個程度へ下方修正

 いずれも距離的には昨年よりもダスト・トレイルへ近づくので期待が高まるのですが、流星のもととなるチリの密度が昨年よりも低いと考えられています。このことから、当初500個と予報されていたのが下方修正されました。現時点では、理想的な条件下換算で1時間ありに最大200個程度の出現が見込まれています。理想的な条件換算とは、輻射点(放射点)のあるしし座が頭の真上にあり、6等星まで見えるような理想的な観測場所から、全方位をくまなく観測できた場合の話です。ですから、実際に見ることのできる流星数はこれよりも少なくなってしまいます。

極大時刻は少し前倒し修正

 極大の時刻も修正されています。当初1回目の極大時刻は日本時間で6時43分と予報されていましたが、今回の予報では少し前倒しになって、6時12分と予想されています。そして2回目の極大は6時30分です。わずかですが極大時刻が前倒しになるのは、日本で増加傾向のしし座流星群を観測できる可能性が高まるので、ありがたい話です。もっとも、計算の流儀や採用するモデルによって、時刻や出現数の予報値は変動します。情報源によっては6時43分を採用しているケースもあり、現段階でどちらが正しいと言い切るのは難しいでしょう。いずれにしても、6時台に極大を迎える可能性が高いといえそうです。

日本で極大時刻に観測は難しいが・・・

 残念なことに、しし座流星群の極大が予想される6時台前半だと、日の出が遅い地域でも夜明け前後の時間帯ですし、日の出が早い地域では、日の出以降の出来事となってしまいます。たとえ大出現したとしても、ピークを観測するのは難しいでしょう。そんなこともあって、出現数の面から期待のし過ぎは禁物で、2001年に日本で観測されたような流星雨や流星嵐にはならないだろうと言われています。ページ末に、日本各地の夜明け時刻、日の出時刻を載せておきましたから、実際に観測される際の参考にしてください。

 夜半過ぎから夜明け前にかけて、しし座流星群の流星が例年には見られないような増加を見せてくれることに期待して観測しましょう。ありがたいことに、今年の極大日頃は新月ですから月明かりの条件は最良。まぶしい月の光を全く気にせず、観測に専念することができます。

しし座流星群はいつ見える?

 何々流星群という名前は、流星が飛び出してくる方向(流星の経路を逆に延長した方向)に見える星座の名前がつけられます。したがって、経路を逆にたどると、しし座の中のある1点に行き着きます。この点は輻射点、または放射点と呼ばれており、下の絵では黄緑色のマークがこれにあたります。一般に輻射点の高度が高くなるほど流星はたくさん流れます。逆に、輻射点が地平線下にある場合は、流星をほとんど観測することはできません。

 しし座流星群の場合、しし座が東の空から昇ってくる11月18日の0時以降に観測するのが良いでしょう。夜半過ぎから明け方にかけて、少しずつしし座の高度が上がってきますから、観測できる流星数も夜明け前にかけて増えてきます。しかも2009年の場合は、極大時刻が日の出前後とみられますから、夜明けが近づくと一気に流星数が増えると予想されます。いちおう極大時刻は6時12分(別の予報では6時43分)とされていますが、ある程度の誤差も考えられます。もし極大時刻が前倒しになった場合は、大出現を目の当たりにできる可能性もないわけではありません。したがって、オススメの観測時間帯は、11月18日の夜半過ぎから夜明け前にかけてということができます。

11月18日の朝4時頃、しし座流星群の出現イメージ

流星の出現イメージ

どの方向に見える?

 それでは、しし座流星群はどの方向に見えるのでしょうか。名前から考えて、流星はしし座の方向にしか見えないと勘違いされる方がおられますが、実は全天で見ることができます。つまり、どちらの方向を向いていても良いのです。ですから、できるだけ視界が開けた場所に寝転がって、全天を見渡すようにしましょう。上を向いて空を見上げると、だんだん首が痛くなってくるので、長時間観測には不向きです。そういう意味からも、寝転がって観測するのがベストです。

 せっかくのしし座流星群だし、ぜひ、しし座の方向を観測したいという人がおられるかもしれませんね。その人は上の絵のように、3時から夜明けにかけてであれば、東から南東方向にかけて、空の中ほどを見るようにします。

どこで見るのが良いか

 読者の方から「流星をどこで見るのが良いか」と質問されることがあります。流星の数は暗いものほど数が多いですから、暗い星が見えるような、空が暗い場所から観測しましょう。近くに水銀灯など人工の光があると、観測できる流星の数が減ってしまいますから注意してください。

 それから視界が開けていることもポイントです。高い木や建物があると視界がさえぎられてしまい、そちらに流れた流星を観測することができなくなってしまいます。「いまどき光がなくて開けた場所なんて、あるかいな!」 そう言われそうですが、できるだけ理想に近い場所を探してください。

 当日に「どこで観測しよう」とあわてなくてすむように、また、防犯上の観点からも、夜間に前もって下見をしておかれることをオススメします。

流星の見え方

 流星を一度も見たことがないという方もいらっしゃるかもしれませんね。流星は何の予告もなしに、音もなく星がシュット流れます。本当にアッという間の出来事です。特にしし座流星群の場合、流星のもととなるチリが地球へ飛び込む速度が速いため、流星が流れる速度もそれだけ速くなります。しし座流星群が 「非常に速い」 に分類されているのもこのためです。流星が流れている間に願い事を3度唱えると願いがかなうと言われますが、これは結構大変かもしれませんよ。

 しし座流星群は明るい流星が多く、非常に明るい火球が飛ぶこともあるのが特徴です。しかし、今回地球が遭遇するダスト・トレイルは小さなダストが多く、暗い流星が多くなるのではないかと予想する声もあります。

出現数

 流星の出現数を予測するのは難しいですが、近年の出現数だけで言うと、1時間あたりに最大で10個見られれば良い方です。しかし、ダスト・トレイルの中に入れば出現数はそれなりに増加するはずです。ピーク時に観測できる西アジアで、理想的な条件下に換算すると、1時間あたりに最大で200個に達すると予報されています。日本では夜明け前ごろに1時間当たりに最大で40個から80個程度ではないかと思われます。これは夏のペルセウス座流星群や冬のふたご座流星群にも匹敵するような数字ですから、おおいに流星観測を楽しめることでしょう。

 ダスト・トレイルの密度を正確に予想するのは難しく、結構あいまいな数値です。流星のもとになるチリの密度が予想よりも濃ければ、流星雨になる可能性もないわけではありませんし、密度が薄い場合はポツリ、ポツリと流れる程度で終わってしまいます。日本はピークから少し外れていることもありますから過度に期待をせず、ちょっぴり期待を持って観測にのぞみましょう。

かなり期待をこめて、流星雨となりますように!

流星観測のポイント、注意点

 繰り返しになるところもありますが、しし座流星群を観測する場合のポイントや注意点をあげてみました。

空が暗い観測場所へ

 流星をたくさん見ようと思うなら、ぜひとも空が暗い場所へ移動してください。夜間はほんのちょっとした光でも、ずいぶんと明るく感じます。都会の明るい空では明るい流星だけしか見ることができず、出現数は激減してしまいます。人工の光ができるだけ届かない、空が暗い観測場所を選びましょう。

視界が開けた場所

 先にも書きましたが、流星はしし座だけに見えるのではなく全天に流れます。ですから、視界が開けた場所ほど見ることができる確率が高くなります。

寝転んで見よう

 流星を見るには寝転んで見るのが一番です。長時間見ていても首が疲れませんし、全天を見ることができるからです。

輻射点の高度と観測時間帯

 一般に輻射点の高度が高いほど流星は多く流れます。しし座流星群の場合、輻射点は真夜中に東の空から昇ってきて、明け方にかけて次第に高度が上がってきます。ですから、明け方頃が最も条件が良いといえます。2009年の場合は極大時刻が日の出の前後であることを考えると、こちらの意味からも明け方頃が最も観測条件が良いといえます。できるだけ多くの流星を観測したいという方は、夜半過ぎから夜明け前まで観測するようにしてください。

流星の経路

 輻射点に近いほど流星の経路は短くてゆっくり飛びます。逆に、輻射点から離れるほど長くて速く飛びます。といっても、非常に速いスピードで流れることには違いありません。それから、あまり知られていませんが、理屈上では輻射点に近いほど流星は明るく、輻射点から離れるほど暗くなります。もちろん平均すればのお話です。

エチケット

 周りには流星の写真を撮っている方もおられます。車のライトや懐中電灯などの光は天体写真の大敵です。空やカメラの方に光を当てるとせっかくの写真がパーになってしまいます。光を使う場合は一言声をかけるなど配慮しましょう。また夜間は小さな音でもよく響きます。当たり前のことですが、近所迷惑にならないよう、話し声などは控えめにします。

冷え込みに注意

 11月中旬ともなると、夜間は相当に冷え込みます。地面に寝転んで見ていると、冷たさが地面から直接体に伝わってきます。さらに夜露もベトベトについて、流星観測するためのコンディションは最悪です。そんなわけで、季節を問わず防寒着やカイロなどを用意しておいた方が無難です。真冬のような格好をして、カイロを体中のアチコチへ貼っておくと良いと思います。

各地の観測可能時間

 空が暗くて天体観測を行うことのできる状態が終わり、少し空が白み始めた状態を天文薄明と呼んでいます。天文薄明中の太陽高度は地平線下18度以上で、夜明け前に天文薄明が始まる時刻まで流星観測を楽しむことができます。天文薄明時刻を過ぎると空が白み始めて、次第に流星を観測することができなくなります。

 夜明けを迎える頃になると、あたりはだいぶ明るくなって、しし座流星群の観測はかなり難しくなります。そして、日の出を迎えると、よほど明るい大流星でない限り、肉眼で観測することはできません。日本各地の県庁所在都市で、いつまで観測することができるのか、下の表へまとめましたので参考にしてください。

観測地 天文薄明 夜明け 日の出
札幌 4時51分 5時52分 6時30分
青森 4時52分 5時50分 6時27分
秋田 4時53分 5時51分 6時26分
盛岡 4時49分 5時46分 6時20分
山形 4時51分 5時47分 6時20分
仙台 4時49分 5時45分 6時19分
福島 4時50分 5時46分 6時20分
新潟 4時56分 5時52分 6時27分
宇都宮 4時51分 5時46分 6時19分
前橋 4時54分 5時49分 6時22分
水戸 4時49分 5時43分 6時17分
さいたま 4時51分 5時46分 6時20分
千葉 4時49分 5時43分 6時18分
東京 4時51分 5時45分 6時19分
横浜 4時51分 5時45分 6時18分
甲府 4時56分 5時50分 6時21分
松本 4時58分 5時53分 6時23分
静岡 4時56分 5時49分 6時23分
名古屋 5時 2分 5時56分 6時28分
5時 3分 5時56分 6時30分
岐阜 5時 3分 5時57分 6時31分
富山 5時 2分 5時57分 6時31分
金沢 5時 4分 5時59分 6時33分
福井 5時 5分 6時 0分 6時34分
大津 5時 6分 6時 0分 6時34分
京都 5時 6分 6時 0分 6時33分
奈良 5時 6分 5時59分 6時31分
和歌山 5時 8分 6時 1分 6時34分
大阪 5時 7分 6時 0分 6時33分
神戸 5時 8分 6時 2分 6時34分
岡山 5時13分 6時 7分 6時40分
鳥取 5時13分 6時 7分 6時41分
広島 5時19分 6時12分 6時46分
松江 5時17分 6時12分 6時45分
山口 5時22分 6時16分 6時49分
高松 5時12分 6時 6分 6時39分
徳島 5時10分 6時 3分 6時37分
松山 5時17分 6時10分 6時43分
高知 5時14分 6時 7分 6時40分
福岡 5時26分 6時19分 6時52分
佐賀 5時26分 6時19分 6時52分
長崎 5時27分 6時20分 6時52分
熊本 5時24分 6時17分 6時49分
大分 5時21分 6時14分 6時47分
宮崎 5時20分 6時12分 6時45分
鹿児島 5時24分 6時15分 6時48分
那覇 5時30分 6時19分 6時49分