昼間に観測するための条件

 明るい昼間に彗星が見えるなんてウソのような話です。もしアイソン彗星が当初の予報どおりの明るさになってくれたとしたら、それも可能だったことでしょう。しかし、その後の観測結果から、ピーク時で7等も暗い予報になってしまいました。このままでは、昼間にアイソン彗星を観測するのは難しくなった印象があります。

 しかし、何が起こるか予測できないのが彗星の面白いところです。太陽に近づくことで爆発的に増光し、昼間に観測できるようになるかもしれません。そのときに備えて、強烈な太陽光のもとで観測することを考えてみましょう。

金星との比較

 太陽と月を除いて、最も明るい星は金星です。最大光輝となる頃の明るさは-4等台後半に達し、普通の視力の持ち主なら昼間でも金星を確認することができます。しかし、金星は太陽からの離角が十分ありますから、条件的に恵まれています。これと比べて今回のアイソン彗星は、他のページで説明するように、太陽から非常に近い位置に見えます。ですから、実際に観測するのは簡単ではありません。

コロナとの比較

 アイソン彗星は満月並みに見えると言われた時期がありましたが、これについて少し考えてみましょう。比較材料として太陽コロナを挙げてみます。コロナの明るさは満月程度だと言われていますが、太陽コロナは皆既日食の時にしか見ることができません。そのくらい太陽光は強烈なのです。コロナは太陽を取り巻くように広く拡散しているのに比べ、彗星は光が頭部に集まっている分、コロナよりは見やすいでしょう。しかし、1度に満たない太陽との離角で実際に見ることができるか、そのときが来てみないとわかりません。

マックノート彗星との比較

一般的に昼間に肉眼で星を見るためには、-4等以上の明るさが必要だと言われています。しかし、太陽の近くに見える場合は条件が厳しくなります。2007年のマックノート彗星の場合だと、-6等級の明るさでしたが、白昼に見えたのは写真撮影や天体望遠鏡を使っての話が大半でした。しかも今回に比べて太陽からの離角が十分にあり、有利な観測条件でした。

 この経験を踏まえると、昼間に彗星を見るためには、太陽から離れていてかつ-6等級以上の明るさが必要でしょう。アイソン彗星の場合では、太陽に最接近した時のピーク時でも-6等級の明るさにしかなりません。肉眼で確認するのは厳しいですが、機材の助けを借りればどうにか白昼にアイソン彗星を観測するのは可能かもしれません。

太陽を視界から外す工夫

 ご存知のように太陽光はとにかく強烈です。ですから太陽光を視界から外す工夫をしましょう。例えば建物の影に入り、彗星は見えるが太陽は見えない状況を作り出すのです。これだけでも見え方はだいぶ違ってきます。しかし、彗星が太陽からあまり離れていませんから、このような状況を作り出すのは難しいかもしれません。

太陽光の影響を減らす

 太陽光が弱まるとアイソン彗星が見づらい状況は緩和されます。日の出や日の入りのタイミングをはじめ、太陽の高度が下がってくると太陽光が弱められます。彗星は太陽の近くに見えるから彗星の光も弱められるんじゃないか、と言われるかもしれません。

 確かにその通りなのですが、太陽が減光されるメリットの方が大きくなります。また、太陽と彗星の高度差によっても、大気による減光の度合いが異なります。太陽の方が地平線に近い位置にあった方が観測に有利です。

 これらは太陽が地平線に近い位置にあるときほど顕著に効果が現れますから、太陽の位置が低くなる時間帯がねらい目です。できれば日の出直後か日の入り直前がよいでしょう。少しズルいかもしれませんが、いちおう昼間であることに違いありませんから・・・。

双眼鏡や天体望遠鏡を使う

 アイソン彗星が明るいといっても、昼間に肉眼で見るのはよほど条件が整わないと難しいでしょう。そうなるとやはり、双眼鏡や天体望遠鏡の助けを借りる必要があります。これらを使うと、より多くの光を集めることができ、本来なら肉眼でも見えないような天体も見ることができるようになります。しかし、太陽を視野に入れると、太陽の光も多く集めてしまって、失明の危険度が一気に高まります。太陽近傍で使用される場合は特に注意してください。(基本的にはおすすめしません。)

撮影する

 アイソン彗星は明るいため、日中に写真撮影することも可能です。しかしこの場合も、太陽を被写体に入れてはいけません。完全に露出オーバーになってしまい、写真全体が真っ白になってしまいます。また、強すぎる光を受光することにより、カメラ自体が壊れてしまうこともあります。撮影する場合は彗星部分だけを切り取った構図を決めてください。また、ピント位置は無限遠となるように固定しましょう。

太陽を直視しないこと!

 繰り返しになりますが、観測される際に誤って太陽を直視すると、目を傷めたり失明の恐れがあります。くれぐれも細心の注意をはらって観測していただくようにお願いします。

つるちゃんのプラネタリウム 昼間にアイソン彗星を観測できる?