アイソン彗星の移動経路

アイソン彗星の移動経路は、近日点通過を境に大きく変わります。

移動経路の概要

 アイソン彗星は近日点通過前まで、天の黄道に沿って移動します。下の星図をご覧ください。アイソン彗星の移動経路を水色で示しています。また、黄色い線は天の黄道で、太陽の通り道にあたります。前半はここから大きく離れることはありません。

 アイソン彗星は9月頃はかに座にあります。その後は星図で左側、つまり東の方へどんどん位置を変えていきます。10月から11月前半はしし座にあり、11月中旬はおとめ座で、下旬になるとてんびん座まで移動します。そして、さそり座に入ったあたりで運命の11月29日、近日点通過を迎えます。

 アイソン彗星が動く経路はここで一転します。西から東(星図では右から左)へ移動していたのが、今度は南から北へ(下から上へ)動き始めるのです。星座でいうと、さそり座からへびつかい座、へび座、ヘルクレス座、かんむり座、りゅう座といった具合に、2013年12月の初旬から年末にかけて、1ヶ月の間に夏の星座を一気に北上します。

11月上旬から中旬 −天の黄道に沿って東進

 11月上旬から中旬にかけて、アイソン彗星は天の黄道に沿うような形で東へ(星図では右から左へ)移動します。初旬はしし座の足元あたりにいますが、すぐにおとめ座に入ります。期間の最初は移動量が小さいですが、次第に大きくなっていきます。これは、アイソン彗星が太陽に近づくことで引力が強く働き、太陽に近づく速度が速まるためです。

 11月18日にはおとめ座の1等星スピカに0.3度(朝5時頃では0.8度)まで近づきます。18日未明の東天で、スピカのすぐ上に5.6等でぼんやりと光るアイソン彗星が観測できるでしょう。

11月上旬から中旬にかけての移動経路

11月下旬から12月上旬 −近日点通過で大きな変化

 11月下旬になるとアイソン彗星は、おとめ座からてんびん座に移り、東へ向かう動きがさらに加速します。これは11月29日に近日点通過となることから、彗星が太陽めがけて突進するためです。

 近日点通過はさそり座で起こります。アイソン彗星はここで動く向きを大きく変えて、今度は北へ移動し始めます。一時へびつかい座に入った後はへび座に移り、北上を続けます。

 12月5日から6日にかけて、へびつかい座ε星(3.2等)に1.3度、へびつかい座δ星(2.7等)に0.4度まで、それぞれ近づきます。

近日点通過頃

12月中旬前半 −ヘルクレス座を北進

 12月中旬になってもアイソン彗星はひたすら北へ向かって移動し、へび座を抜けてヘルクレス座に入ります。この頃は4等台半ばまで暗くなっていますが、それでも暗い場所ならどうにか肉眼で見えますし、双眼鏡を使えば確実でしょう。

12月中旬頃(前半)

12月中旬後半から下旬 −再び動きが加速

 12月中旬から下旬にかけて、いったん緩やかになったアイソン彗星の動きが再び加速します。これは、12月27日に起こる地球最接近を目指して、地球との距離が近づいてきているためです。彗星はいったんかんむり座に入りますが、再びヘルクレス座に戻り、北を目指して一気に駆け抜けます。

 12月17日から18日にかけて、ヘルクレス座β星(2.8等)に4.1度まで近づきます。この日のアイソン彗星の明るさは5.6等ですから、よほど条件が整わない限り肉眼で見つけるのは難しく、双眼鏡か天体望遠鏡が必要でしょう。

12月中旬頃(後半)

12月下旬 −地球最接近と周極星

 12月27日にアイソン彗星と地球が最接近します。距離は0.43天文単位ですから、2013年春先に見られたパンスターズ彗星の1.10天文単位よりもだいぶ近い距離です。おまけに彗星を横から眺める格好になり、尾も見やすくなるはずですが、残念ながらこの頃の明るさは6.2等と だいぶ暗くなっています。

 ちょうどこの頃、ヘルクレス座からりゅう座へ移るとともに、彗星の赤緯が+55度を超えてきます。これは東京を含め、北緯35度よりも緯度が高い地域では、周極星になることを意味します。この後アイソン彗星は、一晩中沈まない天体として観測できるようになります。

 アイソン彗星はその後も北上を続け、2014年1月7日に天の北極に3度まで近づきます。この日の明るさは7.3等ですから、街中では双眼鏡でも観測が苦しくなってきます。そこから先の経路は南下に転じ、次第に天の北極から遠ざかっていくでしょう。

12月下旬頃

 つるちゃんのプラネタリウム アイソン彗星