アイソン彗星の軌道の特徴

放物線軌道

 アイソン彗星の軌道は放物線軌道です。放物線ですから楕円のように軌道が閉じておらず、下の軌道図のように開いた形をしています。このため太陽の近くへやってくるのは今回限りで、今後二度とこの彗星を観測することはできません。またアイソン彗星は、太陽系の果てにある彗星の巣、オールトの雲からやってきたのではないかと考えられています。

北側から見下ろした軌道図

太陽をかすめる軌道 −サングレイザー

 しかしアイソン彗星の軌道の特徴は、なんといっても太陽をかすめるように通過する特異な軌道でしょう。近日点距離(太陽に最も近づいた時の太陽からの距離)は、0.0124441天文単位しかありません。1天文単位(AUと書く)は太陽と地球の平均距離のことで、アイソン彗星の近日点距離は186万Kmになります。太陽の半径は約70万Kmですから、単純計算で太陽半径の2.7倍の距離まで大接近します(※)。ここまで近づくと、太陽をかすめて通ると言っても過言ではありません。このような軌道を持った彗星はサングレイザーと呼ばれており、アイソン彗星はまさにこのタイプといえるでしょう。

※太陽の重心と太陽系の重心が異なることから、実際には太陽表面から83万Kmのところまで近づきます。

 過去に太陽へ近づいた彗星の例として、1965年の池谷・関彗星(イケヤ・セキすいせい)が0.0077AU、1976年のウェスト彗星が0.19AU、最近では2011年12月のラブジョイ彗星が0.0056AUまで近づいた例があります。池谷・関彗星とウェスト彗星星は核が分裂し、ラブジョイ彗星は崩壊した直後に、それぞれ雄大な尾をたなびかせてくれました。果たしてアイソン彗星の場合はどうなるでしょうか。

アイソン彗星の軌道図

 下の図はアイソン彗星が近日点通過となり、太陽へ最も近づく2013年11月29日頃の太陽系を描いた軌道図です。図ではアイソン彗星が太陽に近づきすぎて、太陽と重なって表示されています。彗星は地球軌道面の南から北(図では軌道上の青い部分から水色の部分)へ移動していきます。このため、近日点通過後は北半球からの観測条件が良くなります。さらに注目したいのは地球の位置です。彗星を横から眺める格好になるため、尾が伸びている様子を観測できそうです。

アイソン彗星の軌道図

 つるちゃんのプラネタリウム アイソン彗星