双眼鏡を使って彗星観測に挑戦

 彗星の天体観測では、双眼鏡が適しています。ここでは彗星観測用として双眼鏡を使う理由やメリット、使うための選び方や購入方法をお教えします。

双眼鏡を使う理由

 一般の方が彗星を観測する場合、双眼鏡が使われるケースが多くなります。ここではその理由を考えてみましょう。

暗い彗星が見られる

 双眼鏡を使う第一の理由は、双眼鏡を使うと肉眼で見ることができないような暗い彗星が見られることです。彗星は小さな天体だけに、肉眼で見られないような暗い彗星が圧倒的に多いという事実があります。肉眼ではっきりと確認できるような大彗星と呼ばれるほど明るい彗星は、世紀の天文現象といってもいいくらいに稀な話です。大彗星までいかなくても肉眼で確認できるほどの明るい彗星は、数年に一度の頻度でしか現れません。

ハッキリわかる

 第二の理由は、双眼鏡を使うと肉眼で見るよりもハッキリとらえることができるからです。一般に彗星を肉眼でハッキリとらえるのは難しいことです。公表される明るさの予報値は、彗星全体を一箇所に集めたときの明るさです。彗星は広がりを持った天体ですから、部分的に見ると予報値よりも暗くなってしまいます。
 
 おまけに彗星は、太陽に近づいた時に明るくなるという特性があります。ですからどうしても、夕方や明け方の空が明るい時間帯に観測することが多くなり、肉眼でハッキリとらえるのが難しくなります。もし仮に肉眼でとらえたとしても、ぼんやりとした小さな存在がわかる程度です。これでは観測にはおぼつきません。しかし双眼鏡を使うことにより、コマや尾の様子を拡大して、肉眼よりもハッキリ観測することができます。

双眼鏡と天体望遠鏡の比較

双眼鏡の写真天体望遠鏡の写真 彗星の天体観測をする際、双眼鏡よりも天体望遠鏡の方が倍率が高くて、観測に適しているように思われるかもしれません。しかし、必ずしもそうではありません。ここでは双眼鏡と天体望遠鏡を比較しながら、双眼鏡を使うメリットを考えてみましょう。

視野の広さ

 双眼鏡は天体望遠鏡と比べて、高い倍率を出すことができません。これはデメリットのように思われがちですが、一般の方が彗星を観測される場合はそのことが有利に働きます。倍率が高いということは、一部分を大きく拡大することですから、その分だけ視野が狭くなります。しかし彗星は、広がりを持った天体です。特に大彗星と言われるような彗星の頭部は大きく、尾も長く伸びます。このため天体望遠鏡では倍率が高すぎて、尾が生えた彗星らしい姿を見るこができません。
 
 これに対して双眼鏡は倍率が低いため広視界です。このため彗星全体を見渡すことができます。もちろん尾を長く伸ばした彗星の場合だと、視野からはみ出してしまうこともありますが、天体望遠鏡ほどではありません。双眼鏡の視野が広いというのは、彗星観測では有利なのです。

価格の比較

 一般的な話として、双眼鏡は天体望遠鏡よりも低価格です。天体望遠鏡に比べて双眼鏡は利用者が多いため、広く出回っており安価なものを入手することができます。ただし天体観測という目的からすると、極端に安いものは品質面でおすすめできません。

手軽さ

 天体望遠鏡は倍率が高いため、固定するための三脚や架台が必要です。このためかさばって重くなり、少し大げさになってしまいます。これに比べて双眼鏡は小型で軽量です。手軽さの面では文句なしに双眼鏡に軍配が上がります。

彗星細部の観測

 ここまで双眼鏡が天体望遠鏡よりも有利であることばかりを書きました。しかし天体望遠鏡は、彗星の細部を細かく観測できるという大きなメリットがあります。彗星核の存在がわかりますし、コマに生じた密度のムラや縮れた尾など、微細な構造を詳しく観測することができます。この点では集光力が小さくて倍率の低い双眼鏡は、とてもかないません。

双眼鏡での見え方

 彗星を双眼鏡で天体観測した場合、どの程度見えるかを説明します。大雑把なものですから、必ずこうなるというものでもありませんし、人によっても見え方が異なります。しかし、当たらずも遠からずというところがありますから参考にしてください。

7等級の彗星

 肉眼では歯が立ちませんが、空が暗い場所から双眼鏡を使うと、ぼんやりと彗星が存在することがわかります。しかし双眼鏡の口径の大きさによっては、空が暗い場所からでも存在を確認することができません。また、7等級の明るさで尾を生やした立派な姿を確認するのは難しいでしょう。

5等級の彗星

 5等級は空が暗い場所からだと肉眼でも見える明るさです。双眼鏡を使うと星雲状をした彗星の存在をはっきり確認することができます。場合によっては尾の濃い部分を含めて、彗星が楕円形に見えることもあります。街中からだと肉眼では無理ですが、双眼鏡を使うと存在だけは確認することができます。

3等級の彗星

 空が暗い場合は肉眼でもなんとなく尾の存在がわかります。双眼鏡を使うと彗星らしい姿が浮かび上がって感動的です。街中からでも照明の影に入るなど工夫をすれば、肉眼でもどうにか存在だけはわかります。双眼鏡を使えば尾の濃い部分がほんのりと浮かび上がります。

双眼鏡の選び方

 彗星観測を目的に双眼鏡を購入する場合、次のような点を考慮して双眼鏡を選んでください。他に、星空ウォッチングや天体観測でも使用したい場合は、双眼鏡の選び方のページも参考にしてください。

大きな口径

 口径とは双眼鏡が持つ対物レンズの直径のことです。口径が大きいほどたくさんの光を集められますから、暗い彗星まで見ることができて有利です。また、口径が大きくなるほど細かいものまで識別できるようになりますので、この点でも有利です。しかし、口径が大きくなるほど重たくなり、手ブレれを起こしやすくなるので注意が必要です。入門機として使われる場合は、口径が40mmから50mmくらいのものをおすすめします。

低倍率

 倍率は高いほど良いというものでもありません。特に尾が生えた大彗星を観測する場合は、倍率が低い方が視界が広くなって有利です。また低倍率だと手ブレを起こしにくいですし、天体観測以外の用途にも使えるメリットがあります。わからない場合は7倍から10倍くらいを選ぶと間違いが少ないのではないかと思います。

広視界

 同じ倍率でも双眼鏡によっては視界の広さが異なります。同じ倍率なら広い範囲が見渡せた方がいいに決まっています。しかし広視界のものは視野の端の方で像がひずむことがあります。価格との兼ね合いもありますから、極端に視野(実視界)が狭くなければ、入門機としては広視界だけにこだわる必要はありません。

コーティング

 レンズにコーティングがされていないものは、フレアーやゴーストが発生して視界全体のコントラストが悪くなり、像がハッキリと見えません。コーティングなしの機種は選ばないようにしてください。またコーティングは、単層コーティングよりも多層コーティング(マルチコーティング)のものが良いでしょう。

プリズム

 双眼鏡は多くの場合、プリズムを通して光を何度も反射させるだけに、プリズムが像の見え方に影響します。普及型のBk-7プリズムよりも高性能なBak-4プリズムを使用したものをおすすめします。

価格

 なんだかんだ言って、双眼鏡を選ぶ際に最後の決め手となるのは価格でが、価格はいろいろな意味で重要です。カタログスペックだけでは語れない部分が多く、同一メーカの機種どおしで比較すると、全ての要素が価格に反映されているといっても過言ではありません。彗星をはじめとした天体観測では、双眼鏡の性能が見え方に大きく影響します。彗星をはじめとした天体観測に限っていうと、激安の掘り出し物は期待しない方が良いでしょう。
 
 といっても、2倍のお金を出せば性能が2倍になるわけでもありません。視界が広くて隅々までスッキリとシャープに見え、像が平坦に見える双眼鏡は非常に高価です。やはり最後は価格と性能との妥協点を見出すことでしょう。いい加減な言い方かもしれませんが、あなたが「これだ!」と思ったものがベストな選択だと思います。

双眼鏡を購入

 当サイト「つるちゃんのプラネタリウム」では、天体観測にオススメな双眼鏡をインターネットで購入することができます。もしよろしければ、双眼鏡を買っちゃおうのページをご覧いただき、もし気に入ったものがあればご購入ください。