皆既月食中の月が赤くなる理由

赤くなる月

 月食が進んで月が欠けた部分の割合が大きくなってくると、本影に近い側から月の色が次第に赤っぽくなってきます。そして、皆既月食を迎える頃になると、赤銅色やレンガ色といった独特の色合いに染まります。これは皆既月食でしか味わうことができない独特の美しさです。でもどうして皆既月食中の月の色は赤くなるのでしょうか。

地球の大気で散乱する青い光

 地球には大気があることはご存知のとおりです。ところでよく晴れた日の日中、空の色は青い色に見えますが、どうしてかわかりますか。それは太陽光が地球の大気を通過する際、青い光が散乱されるからです。波長の短い青色の光は大気中の小さなチリによって反射されやすく、大気によって散乱し吸収されるのです。逆に波長が長い赤い光は散乱されにくく、青い光と比べて大気の中を通過する割合が高くなります。

 大気中の長い距離を進んだ光、言い換えると地表近くへ向けて進入してきた光ほど散乱されやすくなり、赤色の光だけが残ります。日の出や日の入り頃の太陽を思い出してください。赤い色をしていますね。皆既月食中の月も同じ原理で赤くなるのです。
 

色の実験

 ここでちょっと、皆既月食を想定した色の実験をしてみましょう。パソコンで表示される色はRGBといって赤、緑、青という3色の組み合わせで表現されています。白色は3色全てが最も明るくなった状態ですが、ここから一定の割合で色別に明るさを少しずつ減らしていきます。明るさを減らすのは、地球の大気によって太陽の光が吸収されていくことを意味します。

 ここでは赤6%、緑15%、青20%の割合で等差的に減らしていきます。すると、色は下図のように変化していきます。最終的には右端のように赤色が強く残って、月の色は赤っぽくなることがわかります。大気による吸収が少ないと右から2番目のように、オレンジ色っぽい色になることもわかります。実際はこんな単純なものではありませんし、減光の割合が正しいかどうかも検証していませんが、皆既月食中の月の色が赤くなることを理解する手助けにしていただければと思います。