3分の1が欠ける部分月食 2012年6月4日

 2012年の月食は6月4日に1度だけ見られます。昨年の12月10日に皆既月食が見られてから半年ぶりですが、今回は月の一部だけが欠けて見える部分月食です。開始時刻は全国どこでも同じで18時59分ですが、一部の地域では、月が欠けた状態で昇ってくる月出帯食となります。その後、月は次第に欠けてきて、20時3分に食分0.376の最大食をむかえます。欠けた部分は月の視直径の3分の1といったところでしょうか。しかしそれ以上は欠けることなく、21時7分に月食が終了します。

 2週間前、5月21日に金環日食があったばかりなのに、今度は月食が見られるのか、と思われるかもしれません。しかし日食が見られる場合は、その前か後の満月に、かなりな確率で月食が起こっており、特に珍しいわけではありません。

東京で見る月食

最大食の頃の欠け方

1.地球の影を通る月の経路

 下の図は2012年6月4日に起こる月食の際に、月が地球の影を通る移動経路を示したものです。一般の地図とは違って、東西が逆になっています。薄い黄色の領域は地球の半影で、太陽の光が一部届いています。この中に入っても肉眼で月が欠けていることは、ほとんどわかりません。一方、赤い丸は地球の本影です。この領域は太陽の光が届きませんで、この赤い丸の中に入ると月食が見られます。
 
 今回は地球本影の北側、端の方を月が通過していきます。月が本影にすっぽり入り込むわけではありませんので、皆既月食とはならずに部分月食で終わります。 

月が通る経路と地球の影

地球本影の北の端を月が通過していく

2.月食の経過

 東京をはじめとして、東の方に位置する地域では、月食を最初から最後まで観察することができます。しかし、その他の地域では月出帯食となります。つまり、近畿地方よりも西の地域や北海道北西部および南西諸島では、月の出となる時刻よりも早くから欠け始め、月は欠けたままの状態で昇ってきます。

 それから、多くの地域で日の入り時刻の前後に月食が始まります。このためほとんどの時間帯で、薄明状態で観測することになります。空が明るいですから、いちおう考慮に入れておきましょう。

2012年6月4日の月食図

半影食の始まり  17時46.5分
部分食の始まり  18時59.3分
食の最大  20時03.2分
部分食の終わり  21時07.1分
半影食の終わり  22時19.9分
最大食分      0.376

始まり

 月食の始まりは18時59分です。これは日本全国どこから見ても同じです。この瞬間に地球の本影が月にかかり、月が欠け始めます。ただ、地球の本影は地球大気によって端がぼやけてハッキリしません。始まりの時刻は目安程度に考えておいてください。この時点では月が昇っている所と昇っていない所があり、欠け始めを見ることができるかは場所によって異なります。

 それから東京の場合、6月4日の日の入り時刻は18時53分です。ということは、日の入り直後に月食が始まることになります。空はまだまだ明るい状態ですから、月の見え方は頼りなく感じられることと思います。

前半

 東京の場合は月の下側のやや右側から欠け始めます。沖縄県の那覇では下側というよりも右下方向から欠け始めるなど、場所によって多少異なります。といってもそれほど大きな違いはありません。時間の経過とともにそのまま下側がドンドンと欠けていきます。それとともに欠ける方向が右下の方へ移動していくように見えます。

 それから、日の入りから時間があまり経っていませんので、空が明るい状態が継続しています。特に写真撮影をされる方は、この点も考慮に入れておいてください。

月食の開始前から最大食となるまで 10分間隔

10分間隔で開始から最大食まで、月が欠けていくようすを表示した

最大食

 最も大きく欠ける最大食は、欠け始めから1時間4分後となる20時3分です。これは全国共通、場所によらず同じ時刻です。東京から見た月の高度は12度しかなく、あまり条件が良いとはいえません。このときの食分は0.376といいますから、視直径の3分の1強が欠けたことになります。もう少し食分が大きいと月の色が赤っぽく変わっていく様子を楽しめるのですが、今回は残念ながら色の変化はあまり期待できません。

後半

 最大食を過ぎると月は元の形を取り戻していきます。欠け方が浅くなるとともに、欠ける方向が右下側から右側方向へ変わっていきます。それから空が完全に暗くなるのは、東京の場合で20時40分です。欠け方がだいぶ浅くなった頃に、ようやく空が暗くなります。

最大食から月食が終わる頃まで 10分間隔

次第に欠け方が浅くなっていくようす

終わり

 月食の終わりは21時7分です。地球の影は月の右端へ抜けていき、月食が終了します。月食が始まってから2時間8分が経過しています。この時、東京での月の高度は22度で、まだ低い位置にあります。

3.場所による見え方の違い

 月食の場合は日食と違って、日本全国どこから見ても同じ見え方をします。言い換えると開始や終了といった時刻や欠ける割合(食分)は、全国どこから見ても全て同じです。といっても観測場所が変わることによって違ってくる点もあります。

月の出時の欠け方

 この月食は地域によっては月出帯食となるのが特徴です。下の絵をご覧ください。主要8地点で月の出時刻における月の欠け方を描いたものです。月の出時刻はマチマチですね。ここで、食分の値に注目してください。食分が「なし」ではなく何か数値が書かれている箇所では、月出帯食となります。下の8地点のうち札幌、金沢、大阪、広島、福岡、那覇で月出帯食となることがわかります。西へ行くほど月の出時刻が遅くなりますから、大きく欠けた状態で月の出をむかえることがわかります。

月の出時刻での月のようす、食分がある場合は欠けた月が昇ってくる

月の出時刻における月の欠け方を描いた図

欠ける方向

 場所が変わると月が欠ける方向も少しだけ違います。下の絵は最大食の時刻に主要8地点でどのように月が欠けるのかを示したものです。食分の値、つまり欠ける割合は変わりませんが、欠ける方向が微妙に違っていることがわかります。

最大食の頃、場所によって欠ける方向が違う例

札幌、仙台、東京、金沢、大阪、広島、福岡、那覇で欠ける方向が違う例

4.写真撮影しよう

 月食中の月の姿を写真におさめておきたい方も多いでしょう。専門的な撮影方法は他サイトにおまかせすることにして、ここではコンパクトデジカメによる簡単な撮影方法を紹介しましょう。

三脚に固定

月食写真の例

 昼間の風景写真と違って暗い皆既月食を撮影するわけですから、どうしても露出時間が長くなってしまいます。最近は手振れ防止機能が付いた機種も増えていますが、そんな程度では追いつきません。普通に手持ちで撮影すると間違いなく手ブレしますから、カメラを固定して撮影する必要があります。
 
 基本的にはコンパクトデジカメは重さが軽いので、千円程度で販売されているような簡易的な三脚でもOKです。しかし、できればガッチリしたものを購入されたた方が、後々までいろいろなシーンで使えるのでよいでしょう。

ピント

 被写体の主人公となる月は非常に遠い所にありますから、ピント位置は無限遠になります。数字の「8」を横倒しにしたような形「∞」が無限遠のマークです。もし設定が可能な場合はこれに固定してください。ピント位置を固定できない場合は、月そのものや、できるだけ遠くの景色にピントが合うようにカメラを調整します。うまくいかずにピンボケする場合は、撮影モードを「星景モード」、「遠景モード」や「風景モード」に切り替えてみましょう。

露出時間

 月食撮影で最大のポイントは露出時間です。特に皆既中は影の中心側と外側で明るさが違っていたり、進行具合によって月全体の明るさが変化したりして、適正露出を得るのは結構難しいものです。よくわからない方はとりあえずフルオートで撮ってみてください。
 
 それからたいていの機種で、露出補正機能がついています。これを使ってEVの値を変えながら、何枚か撮影してみるのがよいでしょう。また、シャッターを押した際にカメラがブレないよう、セルフタイマーを使うのも忘れないでください。

5.月食を楽しもう

南東が開けた場所

 今回の月食で月が見える方角は、南東方向が中心です。全国的に低い位置で見られますので、何かと遮蔽物や障害物に邪魔をされがちです。ですから東から南の方角が地平線付近までよく開けた場所を確保してください。当日夜になってからウロウロするのは危険ですから、前もって昼間のうちに適当な場所を探しておきましょう。また、昼間は安全そうに思えても、夜になると危険な場所もありますから注意してください。

最大食の頃に月が見える方向

東京では最大食の頃、南東方向に月が見える

双眼鏡や天体望遠鏡で見よう

 じっくり観測しようと思うと、やはり天体望遠鏡に勝るものはありません。といっても天体望遠鏡は大掛かりになってしまいますから、双眼鏡をお持ちの方はそれでもよいでしょう。肉眼で見た場合よりも大きく詳細に見えますから、感動の度合いが違います。肉眼よりも双眼鏡。双眼鏡よりも天体望遠鏡をオススメします。

欠け際に注目

 日食と違って月の欠け際は少しぼやけていてはっきりしません。これは地球の大気によって地球の影の境界がはっきりしないためです。肉眼でもわかりますから、一度確認してみてください。地球の影が月に映し出されていることが実感できて、何か言い知れない感動があります。

クレーター

 普段のように月の欠け際付近のクレーターを観測しようと思っても、ハッキリ見ることができず、思ったように観測することはできません。これには理由があります。普段なら太陽光が斜めから当たるので影ができ、クレーターが立体的に見えます。ところが月食中の月はあくまでも満月です。太陽光が月の正面から当たっているためクレーターの影ができず、立体的に見えないのです。クレーターを観測するなら普段見られる三日月や半月頃が良いでしょう。

星座も見える?

 月食になると月の光が和らいで、星座がよく見えるようになると思われるかもしれません。しかし今回は食分が小さいことや、ほとんどの時間帯で空が暗くなりきっていないことから、星座を見つけるのは期待しない方がよいでしょう。

6.次回の月食

 次に見られる月食は、2013年4月26日に起こる部分月食です。しかし、ほんのわずかに欠ける程度で、今ひとつ盛り上がりに欠けます。その次は2014年4月15日ですが、こちらも月出帯食である上に、月食の最後の方を一部の地域だけしか見ることができません。よく見える月食は2014年10月8日まで待たなければなりません。このときは20時前ごろに皆既となりますから、子供さんでも見やすい皆既月食となります。
 
月食一覧表

前回の皆既月食 2011年12月10日 全国で好条件の皆既月食
次回の月食 2013年4月26日 関東以西で小さな部分月食

※このページに出てくる画像は主に「天文ソフトつるちゃんのプラネタリウム シェア版」の「つるちゃんの日食ソフト プラグイン機能」を使用しています。若干の誤差を含みますのでご注意ください。