最大食と満月の時刻が違う理由

異なる二つの時刻

 一般に月食が見られるのは満月の時だと言われています。当サイト「つるちゃんのプラネタリウム」でもそのように解説しています。そう言われると、食分が最大となる時刻に真の満月になるように思われるかもしれませんが、必ずしもそうではありません。むしろ、数分から十数分のレベルで二つの時刻がズレているのが普通です。これはどうしてでしょうか。

最大食時刻と満月時刻の実例

 それでは実際の例をみてみましょう。ここでは極端な例として、食分が大きな場合と小さな場合を取り上げました。

2000年7月16日の皆既月食

 この日は非常に深い皆既月食が起こりました。最大食の時刻が22時56分だったのに対して満月の時刻は22時55分で、両者の差は1分しかありません。この月食での食分は1.773という、近年稀にみる大きなものでした。

2005年10月17日の部分月食

 この日の月食における最大食の時刻は21時3分でした。一方、満月の時刻は21時14分で、両者の差は11分でした。この時の食分は0.068という小さなものでした。

 これだけで考えると、食分が大きいときは二つの時間差が小さく、食分が小さいときは時間差が大きいように思われるかもしれません。実際その通りで、最大食・満月の時間差と食分との間には相関関係があります。

 下のグラフをご覧ください。2000年から10年間に起こった本影月食について、最大食・満月の時間差(縦軸) と食分(横軸) との関係を示したものです。グラフの横軸は間隔がいい加減ですが、それでも食分が小さな月食ほど最大食と満月の時間差が大きくなっていることがわかります。

最大食・満月の時間差と食分との相関関係

時刻が異なる理由

 それではどうして二つの時刻は同じにならないのでしょうか。下の図をご覧ください。簡略化するため、天の黄道や月の経路は直線で表されています。満月とは太陽と月の黄経差が180度になることをいいますから、赤い小さな丸印で示した地点が満月となる月の位置です。

 一方、最大食となるのは、地球本影から月の経路に対して垂線を下ろした地点ですから、青色または水色の小さな丸印で示した位置になります。当然ながら、二つの丸印の位置は一致しません。しかも、食分が小さい月の経路の場合は位置のズレが大きくなることがわかります。

最大食の時刻と満月の時刻が異なる理由

 これらの不一致は、月の経路(天の白道)が天の黄道と一致しないために起こります。言い換えると、月の公転軌道面が地球の公転軌道面に対して少し傾いているために起こります。少し難しかったかもしれませんが、おわかりいただけたでしょうか。