ベイリービーズを観察しよう

 金環日食ではベイリービーズという現象が観察できます。ごく短時間で終わってしまいますが、金環日食ならではの現象ですから、絶対見逃さないようにしましょう。

ベイリービーズとは

  ベイリービーズとは、金環日食や皆既日食となる直前・直後(第2接触、第3接触の頃)に見られる現象です。月面のデコボコによって月の谷間から漏れた太陽の光が、ビーズのように連なって見えるのです。ベイリービーズは皆既日食でも見られますが、金環日食の方が見えやすいと言われています。下のリンクからはベイリービーズの写真をご覧いただくことができます。

  ベイリービーズの用語説明と画像 日食ナビの用語解説を開きます

ベイリービーズの発見

 古くは1715年3月5日の皆既日食の際、エドモンド・ハレーが最初に記述したとされています。しかし一般的には、1836年5月15日にスコットランドで起きた金環日食で、イギリスの天文学者フランシス・ベイリー (1774-1844, Francis Baily) が発見したと言われています。フランシス・ベイリーは、欠け際ぎりぎりに月のクレーターから光がとぎれとぎれに漏れているのを見つけました。これを見て「輝くビーズの列のようだ」と表現し、その理由を科学的に説明したことから、ベイリービーズ(Baily's Beads)とよんでいます。

ビーズの現れ方

 ビーズのように見える光点の現れ方は、日食のたびに異なるのはもちろんですが、観察する場所によっても異なります。また、金環日食の始まりと終わりによっても見え方が異なります。つまり、あなたが見る一瞬は、あなたがその瞬間にだけしか見ることのできないビーズを見ているのです。実際どのようにベイリービーズが見えるかは他サイトにお譲りしますが、秒単位で刻々と変化していく欠け際のようすを観察するのはドキドキ感でいっぱいです。

観察しよう

 ベイリービーズで見られる光点は非常に小さな光源です。太陽の視直径は角度にして0.5度しかありませんから、光点がどれほど小さなものか想像できます。ですから、肉眼で見た場合は小さな光の列を観測するのは難しく、大きく途切れた部分だけを観察することになります。あるいは月によって細く切れた太陽の縁の一部がチラチラと光り輝くのがわかるかもしれません。肉眼で観察するよりも、できれば減光対策を施した双眼鏡や天体望遠鏡を使って、できるだけ大きく拡大して観察したいところです。

 ベイリービーズが見られる頃は金環日食の直前または直後ということで、太陽光は弱まっているのではないかと思われるかもしれません。しかし、決してそんなことはありません。太陽光は強烈で、部分日食中と同じように、専用のフィルターを通して観察する必要があります。間違っても太陽を直視しないでくださいね。

長く観察するためには?

 ベイリービーズは金環帯の中心線付近よりも限界線近くの方が長く継続します。これは、限界線に近い方が月の縁にあるクレーターが太陽の端へ次々と近づきますから、その分だけ長く続きます。それでも1分程度の話ですから、ごく短時間しか見ることのできない現象といえます。中心線付近の観測地ではほんの数秒間しか見られないこともあります。そんなわけで、長い時間ベイリーズを見たい方は、中心線付近に行くよりも、限界線に近い場所へ行って観察するようにしてください。

予報時刻について

 当サイトをはじめとして、さまざまなサイトから金環日食の開始時刻と終了時刻の予報が出されています。しかし、これらの時刻はベイリービーズが始まる時刻や終わる時刻を表しているわけではありません。当サイトなど平均月縁で計算された場合は、金環開始時刻よりも早くから始まります。終了についても同じように、金環終了時刻よりも遅い時間に終わります。

 月縁補正された予報の場合では、金環開始がベイリービーズの終了時刻となり、金環終了時刻がベイリービーズ開始時刻となります。詳しい話は割愛しますが大まかに言うとこんな感じです。少しややこしいことを書きましたが、要するに、予報の時刻よりも前後少し余裕を持って観察していただきたいということです。


つるちゃんのプラネタリウム 金環日食の解説 2012年5月21日