日食の進行

 2012年金環日食で、日本や世界でどのように日食が進行していくのかをまとめました。あわせて、金環日食の全体図(日食図)月の影が動く様子のページもご覧ください。

中国の華南からスタート

 この日食は、中国の華南や海南島の一部で日の出とともに始まります。月の本影は、東から東北東へ移動しながら台湾海峡を通過します。この頃、本影は細長い楕円形をしています。これは日の出頃ということもあり、月が地表に対して大きく傾いた形で影を落としているためです。

日本では南西の地域ほど早い始まり

 日本では南西の地域ほど早い時刻に日食が始まります。先島諸島や大東諸島がまず月の半影に入り、最も早い地点では6時5分頃から部分日食が始まります。続いて沖縄本島などの南西諸島、そして九州が半影に入ります。福岡の日食開始は6時16分です。その後、日本列島は次々と半影の中に入り、広島6時17分、京都6時18分、東京6時19分と続きます。このあたりの時刻差はあまりないと言ってもよいでしょう。

 しかし、北へ行くほど開始時刻は目立って遅くなります。金沢では6時20分、仙台6時24分、札幌6時33分といった具合です。最も遅い稚内では6時38分に開始し、最も早い地点で日食が始まってから33分後のことになります。そしてこの時点で、ほぼ日本全土が月の半影に覆われた格好になります。

日本での日食前半

 日食が始まってからは、金環帯に入る地域も入らない地域も、欠け方がドンドンと大きくなっていきます。なぜなら日本全国ほとんどの地域で、食分が0.8を超える大きな日食になるからです。太陽の欠け方が大きくなるにつれて周囲が少しずつ暗くなっていきます。食分が0.8を超えてくると、金星を簡単に肉眼で見つけられるようになります。また食分が0.9を超えてくると、降り注ぐ太陽光が大きく減少して空は夕方のようになり、気温も低くなってきます。場所によって多少の違いはありますが、日食が始まって1時間から1時間16分ほど経過したところで食の最大を迎えます。

本影が日本へ

 月の本影(擬本影)が通過すると金環日食が見られますが、いよいよ本影が日本へ近づいてきます。本影の南側が尖閣諸島をかすめるように通過します。さらに沖縄本島の北側海上を通過しますが、沖縄本島にかかることはありません。人が定住する日本の陸地へ月の本影が最初に到達するのは、トカラ列島にある小宝島です。このときの時刻は7時16分で、太陽高度は22度ほどです。

 日本本土で最初に本影へ入るのは鹿児島県の大隅半島です。しかし、本影の中心はまだ海上にあります。本影の中心が最初に上陸するのは和歌山県潮岬から北西へ10Km少し離れた地点です。潮岬では7時25分から5分近くにわたって金環日食が観察できます。その後も本影の一部が日本列島にかかったまま東北東へ進み、最後に本影が通過するのは福島県相馬市の茶屋ヶ岬になります。

 この間わずか25分ほどで日本を駆け抜けていくことになるわけですから、月の本影が動く速度は驚異的な速さといえるでしょう。

金環日食!

 金環帯に入る地域では、食の最大を迎える少し前頃、月が太陽の内側へ完全に入り込みます。金環日食の始まりです。金環日食が始まると太陽がリング状に見えて、この時だけしか味わうことのできない、太陽の不思議な姿を観察することができます。

 食の最大頃には太陽の中心位置と月の中心位置が最も近づきます。金環帯の中心線上にある地点では、太陽リングが真円となります。そして再び月が太陽に内側から接すると金環日食が終了します。今回の日食では最大で約5分間にわたって金環日食を観察することができます。

日食の後半

 最大食を過ぎると、太陽はどんどん元の姿を取り戻していきます。日本で最初に月の半影から抜けて日食が終了するのは与那国島で、8時23分過ぎです。その後は続々と半影から抜けていきます。一番最後に半影から抜けるのは北海道の北東端にある納沙布岬から知床岬にかけてです。根室では9時26分に日食が終了します。

アリューシャンの南で最大食

 日本列島を抜けた本影はその後、太平洋を大きく横切ります。北緯49度05分、東経176度17分、アリューシャン列島の南、日付変更線からそう遠くない地点で食の最大を迎えます。この時の金環帯幅は236.9Kmで、金環継続時間は5分46秒です。

アメリカへ

 最大食を迎えた後も月の本影は東進を続け、そのまま太平洋を横切ってアメリカのカリフォルニア州へ上陸します。しかしメキシコ湾まで到達することなく、日没を迎えて日食が終了します。


つるちゃんのプラネタリウム 金環日食の解説 2012年5月21日