星の動きを知ろう

星は動く!

 天体観測でまず必要なのが、星が見える位置を調べることです。そのためには星がどのように動くのかを理解しておく必要があります。夜空を見上げると、さまざまな星が輝いていますね。しかし、いつ見ても同じ星が同じ位置に輝いて見えるわけではありません。季節ごとに見える星座が変わりますし、たとえ同じ日付であっても時刻が変わると、同じ位置に別の星が見えるのです。つまり、あなたが見る星は、たえず動いているということになります。天体観測を行うためには、いつ観測するのかを決定したうえで、星がどの位置に見えるかを調べておくことが重要なのです。

時刻によって見える星は違う

 地球が24時間の周期で自転していることはご存知でしょう。地球の自転によって、星は1日かけて空をグルリと一周します。北極星は偶然地球の自転軸を延長した方向に見えますが、このため北半球で見る全ての星は、北極星を中心に円を描くように動いていきます。ここではもう少し星の動きを詳しく見てみましょう。

北の空での星の動き

 北の空では全ての星が北極星を中心に、反時計回りに円を描くように動きます。厳密にいうと北極星は、地球の自転軸方向から少しだけずれています。ですからこの分だけ、北極星もごく小さな円を描くような動きをします。

 地球は24時間で1回自転をしますから、星は1日に360度動きます(※厳密には異なります)。これを1時間に換算すると、15度動くになります。例えばある星の位置を確認し、その後1時間たってから同じ星の位置を観察すると、15度移動していることになります。下の星図では、12月1日21時から22時にかけての1時間、10分間隔で星が動いていくようすを示しています。

北の空で星が動くようす

北の空で星の動き方

東の空での星の動き

 今度は東の空での星の動きを見てみましょう。下星図は12月1日21時から1時間にわたる星の位置変化を10分ごとにプロットしたものです。日本付近の緯度の場合、東の空では星は左下から右上へ移動していきます。天上めがけてかけ上がっていくような感じですね。ちょうど真東の地平線付近で星が移動する方向は次の計算式で計算することができます。

 (星が移動する方向と地平線がなす角度) = (90度) − (観測地の緯度)

つまり、緯度が35度の京都では、55度の角度で星が昇ってくることになります。また、緯度が0度の赤道直下では地平線に対して垂直に昇ってきますし、緯度が90度の北極では星は地平線に対して水平に移動します。

東の空で星が動くようす

東の空で星の動き方

南の空での星の動き

 次は南の空です。南の空での星の動きは大きな円弧を描きます。星は左から右へとゆっくり移動していきます。真南よりも東側(左側)にある時は右方向へ移動しながら少しずつ高度が高くなっていきます。そして真南へやってきて南中した時、高度が最も高くなります。その後も星は右側へ移動を続け、真南よりも西側(右側)へやってくると、今度は高度が少しずつ低くなっていきます。

南の空で星が動くようす

南の空で星の動き方

西の空での星の動き

 最後は西の空です。西の空では星は左上から右下へ動いていきます。地平線をめがけて星が滑り落ちていくような感じがします。地平線へ落ち込んでいく角度は、東の空で説明したのと同じ角度になります。

西の空で星が動くようす

西の空で星の動き方

季節によって見える星は違う

 南の空を眺めた場合、夏にはさそり座が見えますが、冬になるとオリオン座が見えます。同じように北東の空では、春に北斗七星が見えやすくなりますが、秋にはカシオペア座が見やすくなります。このように、季節によって見える星が違っていることがわかります。

 地球は太陽のまわりを1年かけて一周することはご存知ですね。これが原因で、星座は1年をかけて全天をグルリと一周します。1年は365日ですが、この間に360度動くわけですから、1日あたりに星が動く角度は約1度です。星は1ヶ月に30度動くと覚えておきましょう。

北斗七星とカシオペア座の例

 それでは、下の2つの星図をご覧ください。どちらも21時の星図ですが、上の方は3月1日で、下の方は半年後の9月1日です。3月1日は北東の空に北斗七星が見えますが、9月1日はカシオペア座が見えています。このように、季節が違うと同じ時刻に同じ方角を見ても、違う星が見えることがわかります。

北東の空 3月1日21時

3月1日の場合

北東の空 9月1日21時

9月1日の場合

日がたつと星の位置はズレる

 先に書いたように同じ時刻に観測した場合、星は1日に1度ずつ動いていきます。下の絵は1月30日から3月1日までの30日間にわたり、3日間隔で星の位置を描いたものです。北斗七星は下から上へ動いていきます。しかも、左に見える北極星を中心に動いていますね。このことは、時刻が経過した時と同じ星の動き方です。

 星は1日に1度ずつ動きますが、一方、1時間に15度ずつ動きます。ですから一日たつと、星は15分の1時間、つまり4分ずつ速い時間に同じ位置に見えるのです。例えば3月1日に、ある星が21時に見える位置は、翌日だと同じ位置に20時56分に見えることになります。ちょっと難しいかもしれませんが、覚えておくと役立つことが多いでしょう。

30日間で星が移動するようす(3日間隔)

30日間で星が移動するようすを描いた星図

日時と方向を決めて観測しよう

 このように天体観測をする場合、日付と時刻を決めることが重要であることがおわかりいただけたと思います。日付と時刻が決まって、はじめて星座や星がどの位置に見えるかを正確に言い表すことができるのですね。星の動き方、おわかりいただけたでしょうか?