カタリナ彗星 C/2013 US10 (Catalina)

 カタリナ彗星が2015年の11月16日に太陽へ最も近づいて近日点を通過します。日本ではその後、11月末頃から観測できるようになり、2016年1月にかけて4等台から5等台の明るさで推移すると予報されています。予報が正しければ久しぶりの肉眼彗星ですし、双眼鏡を使うと市街からでも十分確認できる明るさです。あなたもこの機会に、ぜひカタリナ彗星を見つけてください!

カタリナ彗星は当初の予報よりも1等から2等ほど暗いようです。残念ながら明るさの記述は、そのように読み替えていただいた方がいいかもしれません。しかしその場合でも、双眼鏡を使えば彗星観測を十分楽しめそうですよ。

カタリナ彗星とは

 カタリナ彗星(C/2013 US10 Catalina)は、2013年10月31日に、カタリナ・スカイサーベイによって発見された新彗星です。カタリナ・スカイサーベイとは、アリゾナ大学の月惑星研究所 (LPL) が行っている全天捜索で、地球へ急接近する天体(NEO)を発見することを目的としています。今回は捜索網で新しい彗星が検出されて、新彗星発見となりました。
 
 発見された当初は18.6等と暗いものでした。しかしその後、太陽や地球へ1AUを切るところまで近づくことから、明るくなることがわかりました。しかも、日本などの北半球では近日点通過後に観測条件が良くなりますので、期待されています。

軌道

 カタリナ彗星が持つ軌道の特徴は、離心率が1を超えていることです。いわゆる双曲線軌道ですから、太陽に戻ってくることは二度とありません。それから、太陽にどれだけ近づくかを示す近日点距離は0.823AUです。1AUを切っており、そこそこ太陽に近づきますから、期待が持てそうです。
 
 下の図は「つるちゃんの3D太陽系 シェア版」を使って、カタリナ彗星の軌道を描いたものです。図のように2015年12月8日の場合ですと、地球から少し遠い位置にあります。そして、現在位置(緑色の丸印)から上方向、左上方向へと動いていきます。
 
 彗星が軌道上の明るい緑色部分にあることから、地球軌道面よりも北側に位置することがわかります。今後はどんどん北側へ移動していきますから、地球から見ると北半球で観測条件が良くなっていくことがわかります。

明るさ

 下の図は光度変化を表したグラフです。これを見ると11月下旬に4等台前半で、明るさがピークに達することがわかります。日本ではちょうどこの頃から見え始めます。
 
 近日点通過は11月16日ですが、その後は一気に暗くなるわけではありません。グラフを見ると2016年の年始にかけても4等台をキープしていますね。これは、カタリナ彗星が地球へ近づいてくるからです。つまり、太陽から遠ざかることで暗くなっていくのを、地球へ近づいて明るくなることで、補っているのです。
 
 しかし、1月中旬に地球へ近づいた後は地球からも遠ざかっていくため、一気に暗くなってしまいます。

移動経路

 下の星図はカタリナ彗星が通る経路を示した全体図です。日本で条件良く観測できる2015年12月から2016年1月にかけて、てんびん座、おとめ座、うしかい座、りょうけん座、おおぐま座の順に、南から北へ一気に駆け上がることがわかります。もう少し詳しい移動経路を示した星図を別ページで用意しましたので、カタリナ彗星の移動経路をご覧ください。    

見え方

 彗星は恒星とは異なり、面積を持った天体です。このためカタリナ彗星は全体的にぼんやりしており、光が拡散して見えます。肉眼や双眼鏡で探すときは、モヤモヤしたとらえどころのないボーツと光る天体を探してください。尾はあまり発達していないと思われますので、期待しない方がよいでしょう。
 
 明るくなった頃の明るさは4等台前半です。肉眼で見える最微光星は6等星ですから、空が暗い山間部などで観測条件が整えば、肉眼でも見つけられそうです。しかし、明るい市街地からだと肉眼で見るのはまず無理で、最低でも双眼鏡が必要です。ですから、双眼鏡か天体望遠鏡を準備しましょう。また、街明かりが激しい都心部では、天体望遠鏡がないと観測できないかもしれません。

イベント時に見える位置

 ここではカタリナ彗星に関する接近などのイベントをとらえ、いつ、どの方角に見えるかを紹介しましょう。

11月28日  〜カタリナ彗星が夜明け前に登場〜

 11月末になるとカタリナ彗星が、日本でも夜明け前に見え始めます。11月28日に東京の場合だと、空が明るくなり始めるのは4時59分です。星図で示した5時は、まさに薄明が始まる時間帯ですから、手際よく観測を済ませる必要があります。
 
 カタリナ彗星は11月16日に近日点を通過しており、4.3等という明るい状態です。高度は8.8度と決して高くありませんが、観測できないことはありません。非常に明るい金星がはるか上方にありますから、だいたいの目算をつけて双眼鏡を振り向けてください。付近に明るい星雲状の天体はありませんから、モヤッとした天体が見つかれば、それがカタリナ彗星です。
 

12月8日  〜月と金星に近づく〜

 カタリナ彗星が月と金星に近づきます。金星との間隔は4.3度で、月との間隔は3.5度です。東京で4時半ごろですと、金星とほぼ同じ高度にありますから、まず金星を双眼鏡の視野の中心に入れましょう。そのまま左側へ視野をスライドすると彗星が見つかります。月齢は26.1で太い月ではありませんが、双眼鏡で見た月の光は強烈です。カタリナ彗星のような淡い天体を見る際に月の光は大敵ですから、できるだけ視野から外して見られた方がよいでしょう。
 

12月25日 〜クリスマスに見よう〜

 クリスマスの早朝、カタリナ彗星の明るさは4.5等です。相変わらず4等台をキープしており、ピークに近い状態が続いています。まず、真東方向の空の中ほどに目を向けましょう。すぐにオレンジ色に光る0等星のアークトゥルスが見つかります。アークトゥルスから右下方向へ双眼鏡の視野をずらしていくと、ボンヤリしてとらえどころのない淡い天体が見つかるでしょう。それがカタリナ彗星です。
 
 なお、両天体の間隔は11度ほどあります。視野が5度くらいの双眼鏡なら、視野2個分以上も間隔が開いています。こう言うと結構苦労するのではないかと思われそうですが、付近に4等台の明るい星雲や星団はありませんので、思ったよりも簡単に見つけることができます。
 

1月2日  〜元旦から2日にかけてアークトゥルスに大接近〜

 元旦から1月2日にかけて、カタリナ彗星がオレンジ色のアークトゥルス(うしかい座α星、0.2等)に近づきます。星図は1月2日3時ごろに見える位置です。間隔は0.9度ですから、双眼鏡ならアークトゥルスを視野に入れるだけで、簡単にカタリナ彗星が見つけられます。天体望遠鏡でも低倍率にして広視界のアイピースを使えば、同一視野で眺めることができます。こんな機会はめったにありませんから、絶対に見つけたい方は見逃さないようにしてくださいね。
 
 なお、元旦の場合はアークトゥルスのすぐ右横、1.2度離れたところにあります。位置関係が2日の場合と異なりますから注意しましょう。
 

1月15日  〜北斗七星の柄の星に接近〜

 北東の空を見上げましょう。高い位置に有名な北斗七星が見つかります。この日はひしゃくの柄の先端に位置する、おおぐま座η星(アルカイド、1.9等)に1.5度まで近づいています。双眼鏡ならη星を視野に入れるだけで、カタリナ彗星が簡単に見つかりますからオススメです。
 
 なお、翌日の16日は3.6度と少し間隔が開きますが、それでもまだ接近状態です。15日に見られない方は16日でも大丈夫です。
 

1月17日  〜地球へ最接近〜

 今日はカタリナ彗星が地球へ最接近する日です。距離は0.72AUですから、地球と太陽の平均距離の7割しかない近い位置にいます。しかし太陽から遠ざかっているため、光度は少し落ちて4.8等です。
 
 下の星図は、他の日よりも少し拡大しましたので注意してください。まず、北東の空を見上げて北斗七星を見つけましょう。次に、ひしゃくの柄の先端から数えて二番目の星、おおぐま座ζ星(ミザール、2.2等)をたどります。ミザールといえば昔、視力検査に使われた「目だめしの星」として有名ですね。カタリナ彗星はこのミザールから3.8度という近い位置にいます。また、柄の先端にあるη星(アルカイド、1.9等)からも4.7度と、遠くない場所です。これらの位置関係を頭に入れて下の星図を使って探せば、それほど苦労することなく発見できそうです。
 
 なお、カタリナ彗星は回転花火銀河として有名なM101にも2度台まで近づいています。きっと天体写真の良い被写体になることでしょう。
 

2月1日  〜北極星へ近づく〜

 カタリナ彗星は太陽から遠ざかるとともに、地球からも遠ざかっています。このため光度が一気に落ちてきており、5.8等まで暗くなっています。そろそろ肉眼彗星も終了が近づきました。
 
 ちょうどこの頃に赤緯値が最も大きくなっており、北極星に8.3度あまりまで近づきます。東京で一日中沈まない周極星となるのは1月17日から3月13日までの57日間です。(略算ですので多少の違いがあるかもしれません。)
 
 位置的には北極星からみて、左上方向にあります。ですから、北極星を双眼鏡の視野に入れてから、左上の方向へずらしていけば見つかるはずです。
 
 この後カタリナ彗星は日増しに一気に暗くなっていきます。翌月3月1日の明るさは8.2等ですから、双眼鏡で見納めとなる日は遠くありません。まだ見られていない方は、できるだけ早い時期に見ておきましょう。
 

シミュレーション用データ

 「つるちゃんのプラネタリウム」など、つるちゃんシリーズのプログラムを使って、カタリナ彗星をシミュレーションされる場合は、次のようにデータ登録を行ってください。プログラムは当サイトトップページの[ダウンロードとご購入]よりダウンロードして、無料でご使用いただけます。(Windows版のみ)
 
 1.プログラムを起動して表示設定画面を表示する。
 2.日時や観測地を適当に入力して[OK]ボタンを押す。
 3.プラネタリウムが表示されたらメニューバーより、[ツール]−[オプション]−[彗星データ設定]を選択。
 4.プラネタリウム用彗星設定画面の左下にある[次へ]ボタンを何度か押す。
 5.空白行へ下の画像のようにデータを入力する。左端のチェックボックスへチェックを入れること。
 6.[OK]ボタンを押せば設定完了。