双眼鏡でエンケ彗星を見よう 2003年11月中旬

 エンケ彗星(2P/Encke)という彗星をご存知でしょうか。彗星としては3.3年という非常に短い周期で太陽の周りを回っている彗星なのですが、これが意外と好条件で観測できる機会が少なくて、今年は実に23年ぶりの好条件となります。といっても、明るさは7等くらいなので、彗星を見るためには双眼鏡が必要になります。今回はエンケ彗星にしては、なかなかの好条件なので、双眼鏡をお持ちの方はぜひ一度ご覧になっていただきたいと思います。

エンケ彗星とは

 エンケ彗星は太陽の周りを回る周期彗星のひとつですが、その公転周期は3.3年しかなく、彗星にしては非常に短いのが特徴です。彗星というとすぐに長い尾を連想するのですが、エンケ彗星の場合、何度も太陽に近づいているため尾を作るだけのダストの量が少なくなっているので、尾はありません。ですからエンケ彗星を観測すると、ぼんやりと丸く拡散した光の塊に見えます。

 下の絵は11月15日の地球とエンケ彗星の位置関係を示したものですが、エンケ彗星は地球に接近していて、しかも地球から見た彗星は、太陽から離れた角度に位置していることがわかります。実際、11月中旬頃のエンケ彗星は太陽から離れた場所に見え、太陽の光に邪魔されない時間帯に長時間じっくりと天体観測することができます。

2003年11月15日のエンケ彗星と地球の位置関係

エンケ彗星の経路

 下の絵をご覧ください。エンケ彗星は、10月から11月上旬にかけてアンドロメダ座にいますが、その後は、とかげ座、はくちょう座、こぎつね座、や座、わし座、ヘルクレス座、へびつかい座へと南下しながらどんどん移動していきます。短い期間に大きく移動するのは、彗星が地球に近づいているためです。

星座間でのエンケ彗星の動き

エンケ彗星を見よう

 今回の接近でエンケ彗星は7等級まで明るくなります。肉眼で見るには無理な明るさですが、双眼鏡でなら十分に見える明るさです。といっても、都会の街明かりの激しい場所からではちょっと難しいかもしれません。やはり空気の澄んだ田舎の暗い空のもとで見ていただきたいと思います。

 双眼鏡で見ることを前提に考えると、11月上旬から12月上旬にかけてが観測期間となります。この期間なら宵の西空に彗星を見ることができます。11月上旬頃の彗星の明るさは8等台と少し暗い上に、満月に近い月明かりがあるので、実際には11月中旬から11月下旬にかけてが彗星の見ごろとなります。12月に入ると、彗星の高度が低くなるので、観測は難しくなってきます。
 
 下には星図へのリンクを用意しましたので、実際に星空を見る際の参考にしてください。

   19時のエンケ彗星の位置  (アニメーション・350KB)
 
   11月 8日21時のエンケ彗星
   11月15日21時のエンケ彗星
   11月22日20時のエンケ彗星
   11月29日19時のエンケ彗星
   12月 6日18時のエンケ彗星

「つるちゃんのプラネタリウム for Javaアプレット」でエンケ彗星について調べてみましょう。

   万能プラネタリウム  星座早見版
   惑星の経路      エンケ彗星の経路(惑星をエンケ彗星に変更する)
   内惑星の位置     日の入り時刻のエンケ彗星の位置(惑星をエンケ彗星に変更する)
   3D太陽系       エンケ彗星の公転軌道

エンケ彗星の見え方

 エンケ彗星に尾はありませんので、丸くぼんやりと拡散した状態で見えます。初めて彗星を見る方は、思ったよりも随分と小さく見えますので、ここと思う付近を目を凝らしてよく見てください。恒星とは違って焦点の合わない小さく丸い天体があれば、それはエンケ彗星だと思ってよいでしょう。近くに星雲や星団があるときは、これと見間違わないように注意しましょう。

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(おい、西空の低空を見てたら小さく丸い光が見つかったぞ。これがエンケ彗星か。赤色にチカチカと瞬いてキレイやなあ。)
つる:−−>あのなあ、お前。それはネオンサインや!
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