ラブジョイ彗星 C/2013 R1 (Lovejoy)

 ラブジョイ彗星という彗星が2013年11月20日に地球へ最接近し、ピーク時には4等台まで明るくなります。ラブジョイ彗星といえば、2011年12月に太陽へ大接近し、その後、南半球で立派な尾が見られたラブジョイ彗星(C/2011 W3)を思い出します。しかし今回は、これとは別ものです。

ラブジョイ彗星とは

 ラブジョイ彗星はオーストラリアのラブジョイさんが、2013年9月7日に14.4等で発見した新しい彗星です。11月後半から12月前半にかけて4等台から5等台で観測でき、双眼鏡なら確実に観測することができます。うまくすれば肉眼でも存在を確認できるかもしれません。

12月2日に読者のブン太郎さんが
撮影されたラブジョイ彗星の写真

軌道

 下の軌道図をご覧ください。ラブジョイ彗星が地球へ近づく11月20日頃は、地球の赤道面よりも北側にあることをしめす水色の軌道上にあります。しかも地球とラブジョイ彗星は比較的近い位置にあります。このため、日本を含めた北半球からは高度が高くなって見やすいですし、明るくなって良い条件で観測することができるのです。

明るさ

 下に示したグラフは光度曲線です。11月から急ピッチで増光し、11月末には4等台半ばまで明るくなることがわかります。11月18日から12月21日までの約1ヶ月間は5.0等よりも明るい状態が続くとみられます。
 
 なお、このページもそうですが、公表される彗星の明るさは、広がった彗星全体の光を1点に集めた場合の値です。実際には思ったよりも暗く見えますから注意してください。

ラブジョイ彗星の光度曲線

経路

 下に示した二つのラブジョイ彗星の経路図のうち、上側の星図は全体経路図です。彗星は右から左へ移動します。最初はしし座の頭付近からこじし座にいます。その後は北斗七星で有名なおおぐま座の近くを通り、うしかい座へと抜けていきます。
 
 一方、下側の星図は11月20日の朝4時に見える星座を基準とした経路図です。実際の見え方に近いので参考になります。11月20日頃は高度が高い位置にいますが、どんどん高度を下げていくことがわかります。

全体経路図

11月20日4時に見える星座を基準とした経路図

見え方

 ラブジョイ彗星に限らず、彗星は面積を持つ天体です。このため全体的にぼんやりしており、光が拡散しています。天文ファンの間では「星雲状に見える」と表現されますが、まさにそういった見え方をします。肉眼や双眼鏡で探すときは、モヤモヤしたとらえどころのない、ボーツと光る天体を探しましょう。

肉眼で見える?

 先に書きましたように、ピーク時には4等台半ばまで明るくなるとみられます。4等台というと肉眼でも見つけられそうですが、これは天の川が見えるような、空が非常に暗い場所から見た場合の話です。彗星は恒星と違って光が1点に集中しておらず、拡散しています。このため、人工の光がある街中からだと見えにくくなります。そんなわけで、双眼鏡が必要になると思っておかれた方がよいでしょう。

見える位置

 前置きが長くなりましたが、ラブジョイ彗星はいつ、どの方角に見えるのか。位置と見つけ方を紹介しましょう。基本的にラブジョイ彗星は明け方に見えます。朝4時頃に時刻を固定すると、およそ東から北東の空に見ることができます。下で紹介した期間では5等台から4.5等までの明るさですから、少し郊外へ出て双眼鏡を使うと簡単に見つけられます。星図を頼りにぜひ、ラブジョイ彗星を見つけてくださいね。
 
 なお、11月末まで夜明け前に月明かりがあります。少なからず影響を受けそうなのが非常に残念です。

11月17日

 地球との最接近を3日後にひかえているだけあって、この日のラブジョイ彗星は5.0等まで明るくなっています。星図のように東京で4時頃だと、東の空で高度が60度くらいの位置に見えます。明るい星が少ないエリアにいますから、探すのには少し手間取るかもしれません。
 

11月20日

 この日はラブジョイ彗星が地球へ最も接近する日です。両天体の距離は0.39AUですから、地球−太陽間の40%ほどの距離に相当します。この日の明るさは4.8等ですから、空が暗い場所からなら、肉眼でも存在を確認できそうです。北斗七星との位置関係から、およその位置の見当をつけて探しましょう。
 

11月23日

 地球最接近から3日が経ちました。地球から少し離れたのでラブジョイ彗星は暗くなったのかと思いきや、反対に4.6等と少し明るくなりました。これは、太陽との距離が縮まってきているからです。
 
 それでは、東の空で春のダイヤモンドを見つけましょう。ダイヤモンドを作る4個の星で一番暗い星は、りょうけん座の主星である3等星のコル・カロリです。今日はこの星からたどります。コル・カロリが見つかったら双眼鏡の視野に入れて、上方向やや左側にある4等星を見つけます。ラブジョイ彗星はこの星のすぐ近くにあります。
 

11月26日

 同じ4時という時間でも、ひと頃と比べてラブジョイ彗星の高度が下がってきました。それとともに、少しずつ北の方(星図では左の方)へ移動しています。
 
 今日は北斗七星の柄の先端にある星を見つけてください。この星から右方向よりもやや上側に、りょうけん座にある3等星の主星、コル・カロリを探します。3日前に見られた方は大丈夫ですね。ラブジョイ彗星は、この2星のちょうど中間あたりに位置しています。光度は4.6等と、3日前からほとんど変化がありません。

11月29日

 ラブジョイ彗星の明るさが4.5等となり、ピークに達しています。おまけに月が細くなってきて月明りの影響が少なくなってきます。これからしばらくの間が観測に最も適した時期です。
 
 彗星はさらに高度を下げており、北斗七星の右下まで位置を変えています。今日の見つけ方ですが、やはり北斗七星が作るひしゃくの柄の先端に位置する星を使います。この星から右下へ視線を移動させていくと、ラブジョイ彗星が見つかります。

12月2日

 12月に入って動きがだんだん緩やかになってきました。地球との距離が0.50AUと離れてきたため、見かけの動きが小さくなっているのです。彗星の高度が下がってきましたので時間は4時30分としました。
 
 この日は東の空にオレンジ色で光る1等星アークトゥルスを探しましょう。これを先端に、左側へ横倒しになった大きな「のし」のような形を見つけます。これはうしかい座です。うしかい座が作る「のし」の左側先端に位置する3.5等星(β星)のごく近くにラブジョイ彗星がありますが、星図では重なって表示されています。
 
 空が明るくなり始める時刻は東京で5時2分、月の出は5時19分です。5時頃までは完全な暗夜ですから、短い時間に集中して観測してくださいね。

12月5日

 ひと頃と比べてラブジョイ彗星の動きがずいぶんと緩やかになりました。3日前と比べると位置が少し下がり、うしかい座が作る「のし」の左側先端に位置する3.5等星(β星)から少し下側に位置しています。β星を目印にして視野を下へ移動すれば、比較的簡単に見つけられるでしょう。

12月10日

 今回は先に紹介した日付から5日後としました。夜明け前は引き続き月明りがなく、暗夜で観測することができて、良い観測状態が続いています。
 
 高度は5日前よりも少し低くなり、かんむり座の左側まで移動しています。ラブジョイ彗星を見つけるためには、今回も「のし」の左端の星を使います。4時半頃に見つけるポイントは、この星から真下へたどることです。ラブジョイ彗星までは10度以上も間隔が開いていますから、本当に真下へたどってくださいね。双眼鏡を使えば4.7等でぼんやりと光る淡い天体が見つかるでしょう。
 
 近くにM13という6等級の大きな球状星団があります。星図ではラブジョイの「ブ」と「ジ」の字の近くにあるマークがM13です。両天体の見え方の違いを比べてみると面白いでしょう。東の地平線からは、話題のアイソン彗星(4.9等)が顔をのぞかせてきました。

12月15日

 この日ラブジョイ彗星は、ヘルクレス座のζ星(2.9等)へ1度台まで近づいています。うしかい座の1等星アークトゥルスから、かんむり座の主星ゲンマ(2.2等)の方向へ延長していくと、ヘルクレス座のζ星が見つかります。双眼鏡を使ってζ星を視野に入れると、この星の右側にラブジョイ彗星(4.8等)が見つかります。5日前よりもアイソン彗星(5.4等)との間隔が狭くなってきました。
 
注: アイソン彗星は崩壊して消滅したため見ることはできません。

12月19日

 今日はラブジョイ彗星とアイソン彗星が最も近づく日。クリスマスよりも一足早いランデブーです。明るさはそれぞれ5.0等と5.7等ですから、双眼鏡でも観測できる明るさです。写真撮影の良い対象になりそうです。しかし間隔は10度を少し切る程度ですから、双眼鏡でも同一視野で眺めるのは難しそうです。
 
 かんむり座の2等星ゲンマから下方向左側へアイソン彗星をたどり、さらに左下方向へラブジョイ彗星をたどるのがわかりやすいでしよう。はたして二つの彗星は、どのような姿を見せてくれるでしょうか。
 
注: アイソン彗星は崩壊して消滅したため見ることはできません。

12月25日

 今日はクリスマス。ロマンチックに星空を見上げて・・・、なんていう方がおられるかもしれませんね。朝が早い上に寒くて少しつらいかもしれませんが、がんばって夜明け前の東天を見てみましょう。ラブジョイ彗星の高度が前より下がってきたため、時間は5時としました。また星図も少し拡大しています。
 
 まず東の空の低い位置に、へびつかい座のラス・アルハゲを見つけてください。大きく左に見えるベガよりも暗い目の2等星です。そこから左上方向へたどっていくと、ヘルクレス座の3等星、δ星が見つかります。ラブジョイ彗星はδ星のすぐ右隣、1度離れたところにありますから、位置的にはわかりやすい場所にあります。ラブジョイ彗星は5.2等ですから、双眼鏡を使えばカンタンに見つけられるでしょう。

1月1日

 年が変わって元旦の明け方です。初日の出を見ようという方も多いことでしょう。その少し前に夜空をのぞいてみましょう。正月の間は街灯りが少なくて、空がいつもより暗いことが多いですから、普段は見られないような街中からでも、ラブジョイ彗星を見つけるチャンスです!
 
 今日は、先週見つける際に活躍した、へびつかい座の2等星ラス・アルハゲと、ヘルクレス座の3等星δ星の中間付近にいます。およその位置に見当をつけて双眼鏡を振り向けてください。モヤッとした小さな雲のような姿をしたラブジョイ彗星が見つかるでしょう。光度が5.6等と少し落ちていますから、街中では少し見づらいかもしれません。そんな時は、少し「そらし目」にすると見えやすくなって、見つけられることがあります。一度お試しください。

シミュレーション用データ

 「つるちゃんのプラネタリウム」なと゜、つるちゃんシリーズの各プログラムを使って、ラブジョイ彗星のデータ登録をしてシミュレーションをされる場合は、次のようにデータ登録を行ってください。
 プログラムは当サイトトップページの[ダウンロードとご購入]より、ダウンロードしてご使用いただけます。
 
 1.プログラムを起動して表示設定画面を表示する。
 2.日時や観測地を適当に入力して[OK]ボタンを押す。
 3.プラネタリウムが表示されたらメニューバーより、[ツール]−[オプション]−[彗星データ設定]を選択。
 4.プラネタリウム用彗星設定画面の左下にある[次へ]ボタンを3回押す。
 5.空白行へ下の画像のようにラブジョイ彗星のデータを入力する。左端のチェックボックスへチェックを入れること。
 6.[OK]ボタンを押せば設定完了。