2016年のパンスターズ彗星 C/2013 X1 (PanSTARRS)

 パンスターズ彗星が2016年の5月後半から6月にかけて地球へ近づきます。これに合わせて明るくなり、夜明け前に6等台から5等台後半で観測できそうです。双眼鏡を使ってあなたもぜひ、パンスターズ彗星を観測してください。

パンスターズ彗星とは

 パンスターズ彗星(C/2013 X1 PanSTARRS)は 2013年12月4日に、パンスターズによって発見された新彗星です。パンスターズはハワイにあるパンスターズ (Pan-STARRS, Panoramic Survey Telescope And Rapid Response System) という4台の望遠鏡を用いた全天サーベイのことで、地球に衝突する可能性のある天体を発見するのを目的としています。

 毎年いくつもの新彗星を発見するため、パンスターズの名がついた彗星は数多く存在します。その中で、今回のものは地球に近づき、双眼鏡で観測できるくらいまで明るくなるため、期待されています。

軌道

 パンスターズ彗星が描く軌道は双曲線軌道です。いわゆる離心率が1を超えていますから、二度と太陽に戻ってくることはありません。彗星は4月21日に太陽へ最も接近する近日点通過を果たしています。その後は太陽から離れる一方ですが、5月後半から6月にかけて地球へ近づいてきます。

 下の図は「つるちゃんの3D太陽系 シェア版」を使って、パンスターズ彗星の軌道を描いたものです。軌道図のように6月4日の場合だと、彗星は薄い緑色部分にありますので、地球軌道面よりも南側にあることがわかります。その後も図で下の方向へ動きますから、日本などの北半球からは観測条件が悪くなっていきます。

明るさ

 下の図はパンスターズ彗星の光度変化を表したグラフです。これを見ると5月下旬以降は概ね6等台で推移しますから、双眼鏡で観測できるくらいの明るさです。また、6月中旬から下旬にかけては5等台後半で、明るさがピークに達します。しかし日本では、この頃から観測条件が悪くなります。

移動経路

 下の星図はパンスターズ彗星が通る経路を示した星図です。5月頃はみずがめ座にあって、次第に南下します。6月になると、みなみのうお座からけんびきょう座に入り、動きが大きくなります。いて座の南東端をかすめた後は、6月下旬にぼうえんきょう座に移り、南に下がって観測条件が悪化します。

見え方

 彗星は恒星と異なり、面積を持った天体です。このためパンスターズ彗星の見え方は全体的にぼんやりしており、光が拡散して見えます。肉眼や双眼鏡で探すときは、モヤモヤしたとらえどころのないボーツと光る天体を探してください。尾はあまり発達していないと思われますが、双眼鏡で見ると少し細長く見えるかもしれません。

 明るくなった頃の明るさは5等台後半です。肉眼で見える最微光星は6等星ですから、空が暗い山間部などで観測条件が整えば、肉眼でも見つけられる可能性があります。しかし、少しでも光害があったり薄いモヤがあったりすると、肉眼で見るのはまず無理です。最低でも双眼鏡が必要と思っておいた方がよいでしょう。

見える位置

 2016年のパンスターズ彗星が見える位置のページで、いつ、どの方角に見えるかを、5月21日から6月25日まで1週間ごとに紹介しました。観測される際の参考にしてください。
 
 パンスターズ彗星は概ね夜明け前に、東南東から南の空で低い位置に見えます。ですから、東南東から南の方角が開けた場所から観測するようにしましょう。

シミュレーション用データ

 「つるちゃんのプラネタリウム」など、つるちゃんシリーズのプログラムを使って、パンスターズ彗星をシミュレーションされる場合は、次のようにデータ登録を行ってください。プログラムは当サイトトップページの[ダウンロードとご購入]よりダウンロードして、無料でご使用いただけます。(PC Windows版のみ)
 
 1.プログラムを起動して表示設定画面を表示する。
 
 2.日時や観測地を適当に入力して[OK]ボタンを押す。
 
 3.プラネタリウムが表示されたらメニューバーより、[ツール]−[オプション]−[彗星データ設定]を選択。
 
 4.プラネタリウム用彗星設定画面の左下にある[次へ]ボタンを何度か押す。
 
 5.空白行へ下の画像のようにデータを入力する。左端のチェックボックスへチェックを入れること。
 
 6.[OK]ボタンを押せば設定完了。