月食を見よう 2004年5月5日

 5月5日こどもの日の未明には中部地方より東の地域では部分月食、中部地方より西の地域では皆既月食が見られます。国内で見る部分月食は2001年7月5日以来、皆既月食は2001年1月10日以来ですから、意外と久しぶりの現象です。早起きするのはつらいけど、ゴールデンウィーク中のことでもありますし、ちょっとがんばって久しぶりの月食を観測しましょう。

低い高度

 今回の月食は夜明け前に起こり、南西の空で非常に低い高度での月食となります。下の絵は東京で月食が始まる3時48分頃の月の位置を示した星図です。どうですか、月の高度がずいぶんと低い位置で月食がスタートすることがおわかりいただけるでしょう。

月食開始時の月の位置(東京の場合の例)
月食開始時の月の位置(東京の場合の例)

月食の進行

 下の絵は、地球の影の中を月が通過していく様子を表したものです。赤い部分は地球の影の本影を示しています。月が本影の中に入るとその部分が欠けて見えます。本影の中に月がすっぽりと収まる時間帯があるので、皆既月食となることがわかります。しかし・・・。

地球の影を通る月の経路
地球の影を通る月

月の高度

 しかしながら、今回の月食は月の高度が低いことが災いします。東京の場合を例にとってみますと、3時48分の欠け始めの頃でも月の高度は9度強しかありません。その後、半分ほど欠けた状態となる4時19分頃で4度、90%ほど欠けた状態となったところで月没となってしまいます。そして、皆既月食が始まる4時52分には月は地平線の下にあるので、皆既月食を見ることはできないというわけです。
 
 これが福岡の場合ですと、月食の欠け始めなどの時間は東京とさほど変わりませんが、東京よりも西に位置している分だけ月の高度は高くなり、ちょっぴり条件が良くなります。良くなるといっても欠け始めで17度、半分欠けた状態の頃で12度、皆既食が始まる頃でも6度弱の高度しかありません。それでも福岡の場合だと、どうにか皆既月食を楽しむことができそうです。

月が欠ける様子

 下の絵は東京から見た月食のようすです。他の地域でも月の高度以外はほとんど同じだと思っていただいて結構です。
 
 月は左上の方向から欠け始めます。その後月は地平線へ近づきながら少しずつ欠け方が大きくなっていき、皆既月食となる少し前に地平線下へ沈んでしまいます。

月の欠け方の変化

観測データ

 主な観測地での観測データを掲げておきますので参考にしてください。

時刻 食分
※1
高度(度)※2
札幌 仙台 東京 金沢 大阪 福岡 那覇
3:48 開始 5.0 7.6 9.6 11.4 13.1 17.3 23.5
4:00 0.19 3.1 5.5 7.5 9.3 11.0 15.3 21.2
4:20 0.52 −0.2 2.0 3.9 5.8 7.5 11.8 17.5
4:40 0.82 −3.5 −1.5 0.2 2.3 3.8 8.2 13.6
4:52 1.00
(皆既始)
−5.5 −3.7 −2.0 0.1 1.6 6.0 11.2
5:00 1.10 −6.9 −5.1 −3.5 −1.4 0.1 4.5 9.6
※1 東京での値ですが、他の観測地でもほとんど同じです
※2 大気差は考慮していません。マイナス値は地平線下を表します

月の色の変化

 月食といえば、月の色の変化を追うのも楽しみのひとつです。欠け始めの頃の月は普段の月と同じ色をしていますが、次第に赤みを帯びてきて、皆既月食となる頃には赤銅色に変わってきます。しかし、この赤銅色も月食のたびに色が異なり、灰色に近い場合もあれば、より赤っぽい色に見える場合もあります。これは地球の大気に含まれるチリなどに影響されるのではないかといわれていますが、詳しいことはわかっていません。
 
 月の色という意味では、今回の月食は月の高度が低いというのもポイントになります。日の入り直前の太陽を思い出してください。真っ赤な太陽が見えることがありますよね。月の場合も同様で、いつもの月食とは違った色の月を楽しめるかもしれません。とにかく、月の色にも要注目!!
 
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男:月食中の月の色はだんだん赤くなるんだ。まるで君のかわいいほっぺたみたい。
女:キャッ、恥ずかしいなあ・・。
男:ほーら、赤くなってきたよ。
女:もー、やだぁー。

つる:お前らイチャイチャするなっちゅうねん。恥ずかしくてこっちが赤くなるで。
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大きな月の月食を見よう

 「何が大きな月や。月の大きさが変わるんかいな?」、そう思われた方がおられるかもしれません。
 
 ちょっと見ても気がつきませんが、月の見かけの大きさは日々変化しています。これは、地球の周りを回る月の公転軌道が円ではなく少し楕円であるためです。ちょうどこの日の月は地球に最も近づく地点の近くにあるので、月の見かけの大きさはいつもよりも大きくなります。ですからいつもの月食よりもちょっと大きな月の月食を楽しむことができるというわけです。
 
 ではどのくらい大きく見えるのでしょうか。この日の月の見かけの大きさは33.2分ですが、5月で最も小さく見える5月20日頃の29.4分と比べると、10%以上も大きいことがわかります。意外と違うもんでしょう? 今回の月食は高度が低いため、地球の大気の影響やら目の錯覚やらも手伝って、さらに月が大きく見えるかもしれませんよ。

リニア彗星も見てみよう

 月食とは別の話ですが、ちょうどこの頃、夜明け前の東天にはリニア彗星が見えます。こちらも高度が低くて見づらいかもわかりませんが、双眼鏡なら尾が短く伸びたリニア彗星の姿をとらえることができるでしょう。せっかく早起きするのですから、これを見逃す手はありませんよ。双眼鏡を持ってリニア彗星にもチャレンジ!
 
 詳しくは、「ニート彗星、リニア彗星 完全解説」の中にあるつるちゃんの彗星観測オススメ日のひと晩でニート彗星とリニア彗星と皆既月食をご覧ください。

今後の月食

 今後の月食ですが、2005年10月17日には、ほんのわずか欠ける部分月食が見られます。皆既月食となると2007年8月28日まで待たねばなりません。詳しくは「月食情報」の中にある月食一覧表のページをご覧ください。
 
 なお、食現象という意味では今年は当たり年で、10月14日には部分日食が見られますし、なんといっても6月8日には国内で130年ぶりという金星の日面通過もみられます。こちらも楽しみですね。
 
 
 つるちゃんのプラネタリウム for Javaアプレットの中にある日食と月食を使って、月食の様子をシミュレーションしてみましょう。アプレットの画像表示後、次のように操作してください
 
  1.あなたのお住まいの場所に近い地点へ観測地を変更
  2.食の種類を[月食]
  3.前回検索ボタンを押す
  4.時間などを変更してみてください
 
※上の絵は、主に「天文ソフト つるちゃんのプラネタリウム」のシェア版による画像を使用しています。(若干の誤差を含みます) 

つるちゃんのプラネタリウム 月食の観測ガイド一覧