5月4日夕方〜5月5日明け方 ひと晩でニート彗星とリニア彗星 + 皆既月食

2004.3. 6 更新  みずがめ座η群の記事を追加
2004.2.11 新規

 ゴールデンウィークも最後に近づいた頃、第1回目のつるちゃんの彗星観測オススメ日がやってきます。5月4日夕方にはニート彗星が西の空、その翌朝となる5月5日の明け方にはリニア彗星が東の空で見やすくなっています。しかもこの日の未明には国内で4年ぶりとなる皆既月食も見られます。中部地方より東の地域では皆既となる前に月は沈んでしまいますが、翌日に極大をひかえたみずがめ座η(エータ)流星群の流星が見られるかもわかりません。そんなわけで天文ショーのオンパレード!! 普段はあまり星を見ることのない人でも、この日は天体観測三昧というのもいいのではないでしょうか。

5月4日夕方 − ニート彗星

5月4日 東京での日の入り1時間後 ニート彗星の見え方
5月4日 東京での日の入り1時間後 ニート彗星の見え方

 5月上旬になると、夕方南西の空からニート彗星が次第に高度を上げてきて日本からも観測できるようになってきます。上の絵は、5月4日東京での日の入り1時間後における西空の様子です。まず目に飛び込んでくるのは5月2日に最大光度となったばかりの金星でしょう。この頃の金星の明るさはマイナス4.5等星ですから、ひときわ明るく輝いて見えますので、方角を知る上で重要な目印となってくれることと思います。金星の左上方向には、昨年8月に地球に大接近し、その後1.8等星まで暗くなった火星や、0.3等星で鈍い黄色に光る土星も肉眼で確認できると思います。

 このように、西空では3つの惑星が集まって見えてにぎやかなのですが、今はこれらをのんびりと見ている余裕はありません。金星から左側へと目を移して冬の大三角を探してください。こいぬ座のプロキオンをひとつの頂点として、地平線と平行方向にオリオン座のベテルギウスとおおいぬ座のシリウスがすぐに見つかるかと思います。これらの星が見えにくいような空の状態だと、肉眼でニート彗星を見つけるのはまず無理だと思ってください。その場合は双眼鏡の助けを借りるようにします。

 冬の大三角の左下に見えるシリウスはマイナス1.5等星と非常に明るく、西空では金星に次いで2番目の明るさです。これを目印に彗星を探してみましょう。

 シリウスから左方向よりやや下側へ視線を移動させていくとニート彗星が見つかるのですが、彗星の光度は2等級と推定されています。2等級といえば肉眼でも簡単に見つけられそうに思いますが、彗星はぼんやりとした淡い天体です。そのぼんやりとした淡い光を1点に集めた時の光度が2等級ですから、思ったよりも見えにくいものです。

 しかも上の絵は日の入り1時間後の様子なので、空はまだ薄明かりの残った状態です。さらには彗星の高度が10度を切っていますので、地球の大気による減光を受けてしまって見づらいことが予想されます。しかし、条件さえ整えば、肉眼でも長く伸びた彗星の尾も確認でき、彗星らしい姿をおがめるのではないでしょうか。いずれにしても、双眼鏡を用意しておいた方が確実です。双眼鏡があれば尾の伸びた彗星を簡単に見ることができ、きっと感動することと思いますよ。

5月5日明け方 − リニア彗星

5月5日 東京での日の出1時間前 リニア彗星の見え方
5月5日 日の出1時間前 東京でのリニア彗星の見え方

 一方、リニア彗星は夜明け前の東天でなんとか姿を見ることができるようになってきます。しかし、高度があまり高くならないので、彗星が突発的に明るくならない限り、肉眼での観測はあきらめた方がよさそうです。しかし、双眼鏡があれば尾の生えたリニア彗星の姿を楽しむことができそうです。

 上の絵は5月5日こどもの日、東京における日の出1時間前の東天の様子です。東の空で低い位置にリニア彗星が見えますが、明るさは3等級です。彗星の高度が非常に低い上にこの明るさですから、肉眼での観測はかなり厳しいと思います。しかし、双眼鏡を使えばリニア彗星を確認することは十分に可能です。東の方向の開けた場所から、上方に見えるペガススの四辺形を目印にして探してみるとよいでしょう。果たして、一晩のうちにふたつの彗星を見ることができるでしょうか。

5月5日明け方 − 皆既月食

5月5日 東京での日の出1時間前 南西の空に見える月

 ここまで5月4日〜5月5日をオススメ日として紹介してきましたが、実はこの日は満月です。先に紹介したニート彗星、リニア彗星ともに月明かりがありますのでこの影響を受けてしまい、彗星観測にはあまり適していません。しかしちょうどこの日は月食が起こります。たとえ彗星観測がダメだったとしても、月食の方は肉眼でも十分に楽しむことができます。

 上の絵は月食が始まる直前の東京における月の位置です。月は西空低くにありますから、あまり条件が良いとはいえません。実際、今回は皆既月食となるのですが、中部地方より東の地域では皆既月食となる前に月は西の空へと沈んでしまいます。中部地方より西の地域ではかろうじて皆既月食を見ることができますが、月の高度が非常に低いため観測は大変だと思われます。

 下の絵は月食の進行の様子です。月は3時48分頃に左上から欠け始め、4時52分頃に皆既月食となります。しかし、東京の場合だと高度はマイナスの値となっており、皆既月食を見ることができないことがわかります。

月食の進行の様子

上の絵は「つるちゃんのプラネタリウム for Windows シェア版」によるシミュレーション画像です。

当ホームページからはつるちゃんのプラネタリウム for Javaアプレットの中にある日食と月食でシミユレーションしてみましょう。
   ・食の種類:月食
   ・前回検索ボタンを押してから時刻を適当に変更する

みずがめ座η流星群

 翌日の5月6日未明には、みずがめ座η(エータ)群という流星群が極大となります。といっても出現数は1時間あたりに5、6個程度とあまり多くはないのですが、夜明け前の東の空の中ほどあたりを見ていると、速い速度で地平線方向から流星が浮かび上がってくるように見えることがあります。そんなわけで、もしかすると流星も見ることができるかもわかりませんよ。

つるちゃんのプラネタリウム for Javaアプレットの中にある流星群の見え方で流星の出現のイメージをつかんでおきましょう。

   ・流星群:みずがめ座η
   ・図法:指定方向拡大
   ・方向:東


つるちゃんのプラネタリウム ニート彗星、リニア彗星 完全解説