厳冬の夜、オリオン座が南中します。ベテルギウスは鼓の形をしたオリオン座の左上(北東側)に位置する1等星です。白色や青白い色をした星が多いオリオン座の中にあって、ベテルギウスの赤色は特異な感じがします。
星名 | 学名 | 星座 | バイヤー符号 | フラムスティード番号 | 赤経 | 赤緯 | 実視等級 | 絶対等級 | 距離 | スペクトル型 |
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ベテルギウス | Betelgeuse | オリオン座 | α星 | 58番 | 05h55m10s | +07゜24’25” | 0.42等 | −5.50等 | 642光年 | M0 |
ベテルギウスは、もとはというと、アラビア語のイブト・アル・ジャウザからきており、「白い帯をした羊のわきの下」という意味です。α星のベテルギウスとβ星のリゲルを羊飼いに見立てていましたが、後に羊飼いがギリシャ神話に登場するオリオンになり、「巨人のわきの下」という意味になったそうです。
ベテルギウスは表面温度が3500度しかないために赤色をしています。オリオン座にはベテルギウスとリゲルという二つの1等星があります。明るさだけからいえば0.1等星のリゲルの方が明るいのですが、ベテルギウスの方がα星で、リゲルはβ星となっています。オリオン座のまわりの星々はほとんど白色か青白色をしているので、赤色で孤軍奮闘するベテルギウスの方にα星の称号が与えられたのかもしれません。
オリオン座のベテルギウスとリゲルは、いろいろな意味で対照的な1等星です。ひと目見ただけでも、ベテルギウスが赤色であるのに対してリゲルは青白い色をしており、その違いがはっきりわかります。そこでこの2つの星を平家と源氏にたとえ、ベテルギウスを赤旗に見立てて平家星、リゲルを白旗に見立てて源氏星と呼んでいます。
ベテルギウスは太陽の20倍もの質量を持った赤色超巨星です。恒星の一生の末期を迎えているため星が不安定になっており、半径が太陽の700倍から1000倍の間で変化しています。太陽の1000倍といえば、太陽と木星間の距離に近い大きさですから大変なものです。しかも太陽13万5千個分もの強烈な光を放っているというとんでもない星です。だからこそ642光年も離れているのに、明るい1等星として輝いて見えるのです。
HSTによるベテルギウスの大きさ比較とオリオン座 |
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ベテルギウスは非常に大きな恒星として知られています。地球から実際に観測した恒星の視直径としては、太陽を除いて一番大きなものです。そしてハッブル宇宙望遠鏡によって、1995年に初めて直接その姿が撮影されました。(上図)
ベテルギウスは恒星の一生の最後の段階を迎えつつある星です。このため星自体が不安定になっており、膨らんだり縮んだりします。これに合わせて明るさも変化しており、脈動星タイプの脈動型半規則型変光星となっています。明るさは0.0等星から1.3等星の間で5.8年の周期で変光しますが、変光の幅や周期は必ずしも一定ではありません。
ベテルギウスは、おおいぬ座のシリウス、こいぬ座のプロキオンとともに、冬の大三角を構成しています。全天で3つある大三角の中では一番こじんまりとしているのですが、シリウスの白色、ベテルギウスの赤色、プロキオンの黄色と、いちばんカラフルな三角形です。
ベテルギウスは今から100万年以内に超新星爆発を起こす可能性があると言われています。その根拠として、星全体が急速に縮んできていることが挙げられます。15年間の間に15%も小さくなったというのです。しかもNASAによると星の形が変形しており、表面の温度分布も一様でなくなっています。もしベテルギウスが超新星爆発を起こした場合、−11等よりも明るく輝いて、昼間でも楽に肉眼で見ることができるのだそうです。