厳冬期真っ只中の頃の夜、おおいぬ座のシリウスが南中します。シリウスは全天で最も明るい恒星で、おおいぬ座α星となっています。とても明るくて周りのどの星よりも明るい星があればそれがシリウスですので、探す苦労はありません。英語でシリウスはドッグ・スター。犬の星とされています。
星名 | 学名 | 星座 | バイヤー符号 | フラムスティード番号 | 赤経 | 赤緯 | 実視等級 | 絶対等級 | 距離 | スペクトル型 |
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シリウス | Sirius | おおいぬ座 | α星 | 9番 | 06h45m09s | −16゜42’58” | −1.46等 | 1.43等 | 8.60光年 | A0 |
シリウスは白色でギラギラと輝いて見えますが、全天で最も明るい−1.4等星の恒星です。普通の1等星よりも2ランク以上等級が明るいので、他の1等星と比べてみてもすぐにシリウスだとわかります。
シリウスはギリシャ語で「焼き焦がすもの」を意味するセイリオスからきていることもうなづけます。
また、エジプトではナイル川が氾濫する雨季の到来を告げる大切な星でした。
古代エジプトではシリウスをアヌビス神に見立てられていました。アヌビス神は山犬の姿をした守護神のことです。シリウスが日の出前に見え始めるとナイル川が氾濫する季節の到来となり、この星が重要視されていたのです。
中国では光り輝くシリウスを狼の目にたとえて天狼(てんろう)とよんでいます。一方、おおいぬ座β星は野鶏(やけい)といい、狼が鶏を狙っている姿を描いているともいわれます。日本では犬星(いぬぼし)、青星(あおぼし)、大星(おおぼし)などとよばれています。
シリウスは、オリオン座のベテルギウス、こいぬ座のプロキオンとともに、冬の大三角を構成しています。3つある大三角の中では一番こじんまりとしているのですが、シリウスの白色、ベテルギウスの赤色、プロキオンの黄色と、いちばんカラフルな大三角です。
シリウスが明るいのは、その質量が太陽の2.1倍、直径が1.7倍もあり、太陽の26倍の明るさで輝いているからだけではありません。シリウスまでの距離は8.6光年しかなく、明るい星としてはケンタウルス座α星(リギル・ケンタウルス)に次いで地球に近い恒星だからです。
シリウスは誕生してから2億年から3億年しか経っていない若い星だと言われていますが、今後5億年以内に燃え尽きてしまうのだそうです。太陽の寿命はあと50億年といわれていますから、シリウスの寿命はずいぶんと短いですね。
シリウスは地球との距離が近いため、その固有運動も大きくなります。ところが、その固有運動を精密に測定すると、シリウスはふらつきながら移動していることがわかりました。これは8.4等星の伴星によるのですが、計算してみると太陽を地球の2倍くらいの大きさくらいにまで縮めたほどの密度がある星であることがわかりました。水の40万倍の密度といえば少しわかりやすい(?)かもしれません。
このような星は恒星の一生のうちで最終段階を迎えた星で、白色矮星と呼ばれています。シリウスの伴星は最初に発見された白色矮星です。この星もその昔には、きっとシリウスよりも明るく輝いていたのでしょう。