リギル・ケンタウルスはケンタウルス座α星のことで、アルファ・ケンタウリとよばれることもあります。本州付近の緯度からだと、地平線上に顔を出さないので見ることができません。南半球へ行くと、ケンタウルス座の中に0等星で輝く輝星として見ることができます。
右の星図は南半球の国オーストラリアのシドニーから見た星空です。リギル・ケンタウルスは、南十字星が南中した後に南中します。リギル・ケンタウルスの隣にはケンタウルス座のもうひとつの1等星であるβ星のハダルも輝いています。
星名 | 学名 | 星座 | バイヤー符号 | フラムスティード番号 | 赤経 | 赤緯 | 実視等級 | 絶対等級 | 距離 | スペクトル型 |
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リギル・ケンタウルス | Rigil Kentaurus | ケンタウルス座 | α星 | なし | 14h39m37s | −60゜50’02” | −0.10等 | 4.25等 | 4.39光年 | G0 |
ケンタウルス座は上半身が人間で、下半身は馬の姿が描かれています。リギル・ケンタウルスはその前足部分に位置しています。アラビア語ではケンタウルスの足を意味するリジュル・カントゥーリスとよばれています。
リギル・ケンタウルスは、地球から見るとシリウス、カノープスに次いで3番目に明るい−0.10等星の恒星ですが、明るく見えるのは地球からの距離が非常に近いことによります。中学校の理科の教科書でも「太陽に最も近い恒星はケンタウルス座アルファ星」などと紹介されているように、太陽からの距離が最も近い恒星として知られています。近いといっても、その距離は4.32光年もあるのですから、気の遠くなるような距離です。
しかし正確にいうと、最も近い恒星はリギル・ケンタウルスの第2伴星になります。この星はラテン語で「最も近い」を意味するプロキシマ・ケンタウリという名前でよばれています。プロキシマは太陽からの距離が4.25光年ということで、わずかですが太陽から近い所に位置します。
リギル・ケンタウルスは太陽に近づいています。今から2万8千年後には太陽へ3.1光年の距離まで近づき、−1等星まで明るくなることでしょう。
リギル・ケンタウルスは明るさといい、大きさといい、太陽とよく似通った恒星です。質量は太陽の1.227倍で、大きさは太陽の1.100倍。表面温度は5800度で色も黄色をしています。物理特性も太陽に近い、ごく平凡な星といえるでしょう。また自転周期も22日で、太陽の25.4日とよく似ています。
リギル・ケンタウルスを天体望遠鏡で見ると、黄色をした0.0等星の主星と、オレンジ色をした1.3等星の伴星からできた二重星であることがわかります。伴星は11AU離れたところを80年ほどかけて、主星の周りを回っています。
ところで、リギル・ケンタウルスから2度11分離れたところに11等星の星があります。こちらもリギル・ケンタウルスの伴星ではないかといわれており、この星は三重星ということになります。しかし伴星からリギル・ケンタウルスまでの距離は1万3千天文単位(約0.2光年)もあり、公転周期は100万年にもなります。この星は、リギル・ケンタウルスよりも少しだけ距離が地球に近いということで、先に説明しましたようにプロキシマ・ケンタウリと名づけられています。プロキシマの表面温度はおよそ3000度で、大きさは0.141倍、質量は太陽の0.123倍しかない赤色矮星です。
リギルけケンタウルスは太陽から最も近い恒星である上に、太陽とよく似た黄色い恒星であることから、惑星がある可能性について議論されてきました。そんなところへ2012年に、ドップラーシフト法という検出方法によって、惑星と考えられる天体が発見されました。この惑星は地球よりも少し重く、主星から600万Km離れたところを3.2日という短い周期でグルグル公転していると考えられています。