60年ぶりの大きな部分月食 2021年11月19日

 11月19日は夕方に部分月食が起こり、2021年では2回目の月食です。前回の5月26日はギリギリ皆既月食になりましたが、11月19日はわずかに皆既に届かない大きな部分月食です。部分月食といいながら食分が1に近いため、月全体が赤銅色になって、皆既月食のような美しい色合いが楽しめるでしょう。
 
 今回は夕方に見られますが、多くの地域で月が欠けたまま昇る月出帯食となり、日没後の薄明の影響を受けてしまうのがちょっと残念です。

60年ぶりの大きな部分月食

 今回は食分が0.978ということで1に極めて近く、皆既月食に近い大きな部分月食となります。日本以外も含めてこれほど大きく欠ける部分月食としては、1961年8月(NASA計算で食分0.986)以来、60年ぶりです。また今後を調べると、65年後の2086年11月(NASA計算で食分0.987)まで起こりません。今回は60年に一度の珍しい、大きな部分月食と言えるでしょう。

月食の時刻表

 月食時刻表をご覧ください。いわゆる月食の始まりは16時18分と早い目です。また、最大食は18時03分、終わりは19時47分となっています。

半影食の始まり  11月19日  15時00.4分
部分食の始まり      16時18.4分
食の最大 18時02.9分
部分食の終わり 19時47.4分
半影食の終わり 21時05.5分
最大食分 0.978

月食図

 NASAが提供する月食図をご覧ください。世界のどの地域で月食が見られるかを示したものです。最も条件が良い地点は星マークで示され、ハワイよりも東側の太平洋上です。
 
 日本付近は U1 のラインが通っており、宮城県から秋田県を横切ります。この線よりも左側(西側)では、月の出の時点で既に月食が始まっています。つまり、欠けたままの状態で月が昇る月出帯食となります。これ以降は日本全国で、最大食から終了まで全経過を見ることができます。

月食図(NASA提供)

月出帯食

 今回は多くの地点で月が欠けた状態で昇ってくる月出帯食となります。開始時刻の16時18分に月の高度がプラスなのは、帯広と札幌だけしかありまん。この2地点も条件良く欠け始めが見られるわけではありませんし、他の地点では月が地平線下にあり、欠け始めを見ることすらできません。
 
 また、西の地域ほど日没が遅くなる関係で、日没後に残った薄明の影響を強く受けます。空が完全に暗くなる薄明終了時刻と、最大食となる18時03分を比較すると、最大食を暗夜で見られるのは関東よりも北の地域だけしかないことがわかります。
 

観測地 月食中の月の高度(度) 月の出 日の入り 薄明終了
開始

16:18
食分0.5
(前半)
16:57
最大食

18:03
食分0.5
(後半)
19:09
終了

19:47
時刻 食分
時刻 食分 時刻 食分
帯広 2.9 9.4 21.0 32.9 39.8 15:57 16:01 17:40 0.91
札幌 1.7 8.2 19.7 31.6 38.5 16:04 16:08 17:47 0.94
仙台 -0.6 6.3 18.6 31.3 38.8 16:18 0.00 16:22 0.05 17:54 0.97
新潟 -2.1 4.8 17.1 29.9 37.3 16:27 0.11 16:30 0.16 18:01 0.98
東京 -2.5 4.6 17.3 30.4 38.1 16:29 0.14 16:32 0.18 18:01 0.98
静岡 -3.8 3.3 16.0 29.2 37.0 16:36 0.24 16:39 0.28 18:07 0.98
名古屋 -4.8 2.3 14.9 28.0 35.7 16:42 0.31 16:44 0.34 18:12 0.97
金沢 -4.4 2.6 15.0 27.9 35.5 16:40 0.28 16:42 0.31 18:12 0.97
大阪 -6.0 1.0 13.7 26.8 34.6 16:48 0.39 16:51 0.43 18:19 0.94
広島 -8.4 -1.4 11.2 24.3 32.0 17:01 0.55 17:04 0.58 18:31 0.87
高知 -8.0 -0.9 11.8 25.1 32.9 16:59 0.52 17:01 0.55 18:28 0.89
福岡 -10.3 -3.3 9.3 22.5 30.3 17:11 0.66 17:14 0.69 18:40 0.80
鹿児島 -11.1 -4.0 8.9 22.3 30.3 17:15 0.70 17:17 0.72 18:42 0.79
那覇 -16.0 -8.5 4.8 18.8 27.1 17:37 0.89 17:38 0.90 18:59 0.61
石垣島 -19.7 -12.2 1.2 15.2 23.6 17:54 0.97 17:56 0.97 19:15 0.43
父島 -4.1 3.8 17.6 31.8 40.2 16:36 0.23 16:39 0.28 18:00 0.98
※「つるちゃんのプラネタリウム シェア版」に含まれる「つるちゃんの日食ソフト プラグイン機能」を使って計算しています。

地球の影を通る月

 下の図は、地球の影に対して月が通る経路を示したものです。時間の経過とともに月は右から左へ動き、地球の影の南側を通ります。本影を表す赤い部分に完全に入り込むことはなく、皆既月食にならないことがわかります。

地球の影を通る月の経路

月食の開始 −16時18分

 開始は16時18分で、月の左側から欠け始めます。といっても、宮城県と秋田県を結んだ線よりも西側では月が昇っておらず、欠け始めを見ることはできません。このため、多くの地域で月が欠けたまま昇ってきて、月の出のタイミングが月食スタートとなります。
 
 下の図のように月の出の食分は、東京0.14、金沢0.28、大阪0.39、福岡0.66、那覇0.89となっています。西の地域ほど食分が大きいのは、西へ行くほど月の出が遅くなり、その分だけ食が進んでいるからです。

開始から2分後(札幌)

月の出時刻における日本各地の欠け方

前半の欠け方

 欠け始めは月の左側です。その後も左側が欠けた状態が続きます。食分が0.5に達するのは日本全国どこでも同じで、16時57分です。この頃から欠ける方向が次第に左上方向へ変化していきます。
 
 食分が0.7を超える17時15分ごろになると、三日月っぽくなります。しかし、通常の三日月とは形がだいぶ違う印象です。これは、月食時の欠け際は地球の影の端であり、大きな円の一部になっているためです。その後も食が進むと、月はますます細くなっていきます。

前半の欠け方(16分間隔)

最大食 −18時03分

 最大食は18時03分で、この時の食分は0.98です。光っている部分は月の右下のごく一部だけで、直径のわずか2%しかありません。
 
 今回は皆既月食に近いため、最大食が近づくと月全体が赤みを帯びてきます。この色合いは毎回異なりますので、その時になってみないとわかりません。明るいオレンジ色に見える時もあれば、赤黒く見える時もあり、ほとんど見えなくなってしまうことすらあります。
 
 東京での高度は17度とあまり高くありません。大阪では14度、福岡は9度など、西へ行くほど低くなります。逆に札幌では20度と高くなります。思ったほど高度がありませんから、東の方角が開けた場所から観察してください。

最大食の頃

後半の欠け方

 最大食を過ぎると月食も後半に入り、光る部分が増え始めます。最大食の頃は右下が光りますが、その後は下方向、さらには左下へと、光る方向が大きく変化します。食分が0.5になるのは、19時09分です。この頃になると、月の右上が欠けて左下が光る格好になります。右上が欠けた状態は最後まで続きます。

前半の欠け方(16分間隔)

月食の終了 −19時47分

 19時47分になると月の右上から地球の本影が抜けて、3時間29分続いた月食が終了します。地球の半影による食はまだ続きますが、肉眼ではわかりづらいでしょう。

終了から2分前(東京)

見える位置

 月は東北東から東の方角に見えます。今回は一部を除いて広い範囲で月出帯食となり、月が欠けたまま昇ってきます。このため、地平線まで見渡せる場所から観測する必要があります。
 
 最大食の頃でも、東京の場合で17度あまりの高度しかありません。ビルや山などの影にならない場所を探しておきましょう。

東京で見える位置
※背景は最大食の頃で星も見える

札幌
※暗夜で迎える最大食

大阪
※薄明が残って空が少し明るい

福岡
※最大食は薄明の真っただ中

那覇
 ※まだ日の入りから25分後

次回の月食

 次回は2022年11月8日に好条件の皆既月食が見られます。皆既継続時間は1時間20分台におよぶ立派なものですし、夕方に起こりますから、多くの方が楽しめるでしょう。

 

※このページのシミュレーション画像は、自作ソフト「つるちゃんのプラネタリウム シェア版」に含まれる「つるちゃんの日食ソフト」プラグイン機能を使って ΔT=69.2秒を入力し、独自に計算したものです。画像は正確な予報と比較して10秒以内の誤差を含みます。