ボートルの限界 −アイソン彗星は生き残るか?
生き残る彗星と消滅する彗星
アイソン彗星の近日点通過前後は、かなり明るくなると予想されています。しかしこれは、彗星が生き残れたらの話です。小さな彗星が太陽に近づき過ぎると蒸発してしまい、跡形もなくなってしまいます。一方、大型の彗星は蒸発することなく、生き残って大彗星となるケースもあります。アイソン彗星の場合も同じで、太陽に近づき過ぎて蒸発してしまう可能性がありますし、大彗星になる可能性もあるのです。
3つのケース
アイソン彗星は太陽へ0.01244天文単位まで大きく近づくため、100万度もある太陽コロナの中を突き進みます。当然、強烈な熱とプラズマの嵐にさらされます。また、太陽の強大な重力を受けます。このため太陽へ大きく近づいた過去の彗星は、悲惨な結末をむかえたケースが少なからずあります。アイソン彗星も次の3つのいずれかをたどるでしょう。
ボートルの限界
彗星が蒸発しないで生き残るための条件として、次の経験則が成り立ちます。これをボートルの限界とよんでいます。Hは絶対光度で、qは近日点距離を意味します。
H≦7.0+6q
生き残りが微妙なアイソン彗星
それでは、現在想定されているアイソン彗星の数値を、上式に当てはめてみましょう。 H=8.0 程度と考えられており、q=0.01244 です。ですから、上式が成り立つかどうか、微妙なところです。すなわち、アイソン彗星が蒸発してしまい、生き残れない可能性があるのです。
過去の例をみてみますと、ボートルの限界よりも大型の彗星が崩壊してしまったこともあります。それとは反対に、とても生き残れないと思われた彗星が生き残って生還を果たし、素晴らしい姿を見せてくれたこともあります。ボートルの限界は、あくまでも経験則です。予断を許さない情勢ではありますが、アイソン彗星ががんばってくれることに期待しましょう!