2018年のジャコビニ・チンナー彗星 21P/Giacobini-Zinner

 2018年9月10日にジャコビニ・チンナー彗星が地球へ近づきます。今回は太陽へ最も近づくタイミングで地球へ近づきますから、条件が非常に良いものです。ジャコビニ・チンナー彗星は 9月上旬から中旬にかけて 6等台後半まで明るくなりますので、この機会にぜひ、双眼鏡や天体望遠鏡を使って観測してください。

ジャコビニ・チンナー彗星とは

 ジャコビニ・チンナー彗星(ジャコビニ・ツィナー彗星ともいう)は、6.54年の周期で太陽の周りを回る周期彗星です。10月りゅう座流星群(ジャコビニ流星群)の母彗星としても有名ですね。ジャコビニ・チンナー彗星の公転軌道は地球の公転軌道と交差することから、2公転となる13年ごとに流星が大出現する可能性を秘めています。

今回は好条件

 今回の回帰は観測するのに好条件です。下の図は、「つるちゃんの3D太陽系 シェア版」を使って、ジャコビニ・チンナー彗星と地球との位置関係を表したものです。
 
 彗星は地球軌道面を北から南へ通り過ぎる降交点付近にあり、地球が追いかける格好です。地球最接近となる9月10日の場合、地球軌道面よりもやや北側に位置するので、日本など北半球から観測しやすい状態です。また、太陽−地球−彗星のなす角が80度ほどあり、彗星が太陽から離れて見えますから、暗夜で観測することができて好条件です。

ジャコビニ・チンナー彗星と地球の位置関係

地球との距離

 ジャコビニ・チンナー彗星は、9月10日に地球へ0.39AUまで近づきます。1AUは地球と太陽間の距離に相当し、およそ1.5億Kmです。また同日、1.01AUまで太陽へ近づいて、近日点を通過します。
 
 下のグラフは地球との距離変化を表したものです。グラフを見ると、9月上旬から中旬にかけて0.4AUを切っており、この頃が観測好機となります。

地心距離

明るさ

 ジャコビニ・チンナー彗星は6等台後半まで明るくなります。しかし、肉眼で見える最微光星は6等星です。夜空が暗い山間部で空気が澄んだ夜など観測条件が整ったとしても、肉眼で見つけるのは難しいでしょう。それでも双眼鏡なら十分観測できる明るさです。双眼鏡をお持ちの方は、ぜひ挑戦してください。

日付 明るさ(等)
8月21日
7.4
8月26日
7.1
8月31日
6.9
9月5日
6.8
9月10日
6.7
9月15日
6.9
9月20日
7.0
9月25日
7.1
9月30日
7.4

移動経路

 ジャコビニ・チンナー彗星は冬の星座を背景にして、北から南へ南下する経路をたどります。下の星図をご覧ください。9月上旬はぎょしゃ座にあります。その後、中旬から下旬にかけて南下し、ふたご座へ移動します。

移動経路

見え方

 彗星は恒星とは異なり、面積を持った天体です。光が拡散して、全体的にぼんやり見えます。
 双眼鏡で探すときは、とらえどころのないボーツと光る天体を探してください。尾は発達しませんから、期待しない方が良いでしょう。

ジャコビニ・チンナー彗星の見つけ方

 ここでは地球へ最接近する9月10日の見つけ方を紹介します。2018年ジャコビニ・チンナー彗星の見つけ方のページでは、8月31日から9月25日まで、5日間隔で見える位置など見つけ方を解説しました。観測される際はこちらも参考にしてください。

9月10日

 今日は地球と最接近する日です。明るさは6.7等まで明るくなりました。新月で月明かりもありませんからベストコンディションです。街明かりの激しい都心では難しいかもしれませんが、少し郊外なら双眼鏡を使えば十分見つけられるでしょう。
 
 朝の3時ごろに北東の空を見上げましょう。空の中ほどに、ぎょしゃ座の1等星カペラが目にとまります。これを頼りにぎょしゃ座の五角形を見つけると、下側の辺の上に彗星があります。実際はカペラから探すよりも、五角形を構成する星の一つで最も右側に見える、おうし座のβ星(1.7等)からたどった方が良いでしょう。
 
 ここで一つ、注意点があります。近くに M36 と M37 と M38 という散開星団があります。いずれも双眼鏡では星雲状に見えてまぎらわしいのですが、ジャコビニ・チンナー彗星よりも明るくて大型です。しかも、M36 と M38 は五角形の内側で、M37は五角形の外側。彗星は五角形を作る辺の上にありますから、位置関係をしっかり覚えておきましょう。

概略位置

拡大図、移動経路も示した

最後は観測場所

 いかがでしたか? 彗星を見つけるには、何といっても空が暗い場所から見ることが重要です。都心よりも郊外。郊外よりも山間部。できるだけ人工の光が届かない、とっておきの観測場所からジャコビニ・チンナー彗星を見つけてください!