春も本番を過ぎかけた頃の夜、おとめ座にある純白のスピカが南東から南の空の中ほどに輝いています。この星が南東の空で高度を上げてくるとともに、気温の方もぐんぐんと上昇し、春も後半戦を迎えます。
星名 | 学名 | 星座 | バイヤー符号 | フラムスティード番号 | 赤経 | 赤緯 | 実視等級 | 絶対等級 | 距離 | スペクトル型 |
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スピカ | Spica | おとめ座 | α星 | 67番 | 13h25m12s | −11゜09’41” | 1.04等 | −3.38等 | 250光年 | B2 |
おとめ座には農業の女神デーメーテルの姿が描かれていますが、スピカはデーメーテルが左手に持った麦の穂の穂先にあたります。
スピカはラテン語で「穂先」を意味します。
スピカは日本では真珠星とよばれています。スピカが放つ凛とした青白い輝きは清純さを連想させ、真珠の輝きに通じるところがあるのでしょう。
スピカはしし座のデネボラ、うしかい座のアークトゥルスとともに春の大三角を形作っています。冬の大三角と比べると春の大三角はひとまわり大きな三角形です。
北斗七星の柄の先にある3つの星のカーブをそのまま延長すると、春の大曲線になります。春の大曲線をたどると、まず最初にアークトゥルスが見つかります。そしてそのカーブをそのまま延長すると、スピカに当たります。さらに延長すればからす座に行き着いて、春の大曲線は終了します。
だいだい色のアークトゥルスと、青白色のスピカはよい対比をなしています。そこでアークトゥルスを男性に、スピカを女性に見立てて両星合わせて「春の夫婦星」と呼んでいます。
スピカは表面温度が2万3千度もある高温星です。その光度は太陽の13400倍もあります。そのおかげで250光年も離れているにも関わらず1等星として輝いて見えているのです。
実はスピカは連星で、わずか4日の周期で2つの星が互いに回りあっています。そのためスピカは0.1等星ほどですが変光します。周期が短いのは主星と伴星の距離が非常に接近しているからです。おまけに主星の赤道付近では太陽の100倍、伴星の赤道付近でも50倍というすごいスピードで自転しています。さらに最近の観測によると、スピカは四重分光連星の主星と伴星からなる五重星だということです。スピカの実態は、清純な印象とはかけ離れたものです。