6月の星空 梅雨の合間に夏の星座を

 6月といえば、すぐに思い当たる言葉は梅雨ですが、雨が降っては天体観測はできませんね。でもあきらめるのはまだ早い。意外と梅雨入り前や梅雨入り直後の頃は晴れの日が多くあり、しかもびっくりするくらいに透明度が良くて驚かされる場合があります。こんな時は星空を見るしかありませんね。

注)このページの星空の様子は6月15日21時を基準としていますが、下の日時でもほぼ同様の空を見ることができます。また、東京以外でも日本国内であれば、見え方にそれほど違いはありません。

   5月15日23時
   6月 1日22時
   6月15日21時
   6月30日20時
   7月15日19時

西の空

 さすがに6月となると、冬の星座は西空からすっかり影をひそめてしまいました。ただひとつ、ふたご座のカストルとポルックスだけは、しぶとく北西の低空でかろうじて見えていますが、地平線へ沈んでしまうのも時間の問題です。それにしても、冬の星座が6月に見えるというのは不思議な感じがします。

 春の星座も西の空へと傾いてきました。春の星座の先頭バッターであったかに座は、もう西の空へと沈みかけています。また、東の空から昇ってくる時には、あんなに威勢のよかったしし座ですが、西の空へ傾いてくると、地平線を目指して一目散に退散しているように見えるので、ちょっと楽しくなりますです。一時期は南の空を覆いつくしていた大きなうみへび座もすっかりと高度が低くなり、地平線に這いつくばっているように見えます。

6月15日21時 西の空

南の空

 今月の南の空は、春と夏の星座が同居しています。真南からやや西より(右側)には春の星座のおとめ座があり、青白色をした美しいスピカが輝いています。おとめ座の下にはうみへび座のしっぽの部分やからす座が見えています。先月のこの時間、ちょうど南中していた春の大三角は南西の空へと移動しました。

 一方、真南よりもやや東より(左側)には、「く」の字を裏返しにしたように見える、夏の星座のてんびん座があります。また、南東の空低くからは赤い1等星アンタレスのあるさそり座が昇ってきて、いちおう全体が見えるようになりました。とはいえ、まだ高度が少し低いので、さそり座の美しいS字カーブの全容をはっきりと捉えるのは、もう1ヶ月先になりそうです。

 さそり座の左上方向には、医神アスクレピオスを描いたへびつかい座が見えています。へびつかい座は比較的明るい星が大きな将棋の駒のような形に並んでいますので、これを目印にするとよいでしょう。今月になると、へび座の尾の部分も見えてきましたので、へび座の頭部とへびつかい座と、3つ合わせて見るた方が、その形がわかりやすいと思います。

6月15日21時 南の空

さそり座

 黄道12星座のひとつとして有名な星座で、歌のタイトルの一部に採用されたりすることもあります。好きな星座をひとつ挙げるとすれば、さそり座を挙げる人も多いのではないでしょうか。大きなS字型のカーブを描きながら、しっぽに毒針まで備えたその均整の取れた形は、非常に印象的です。おまけに、さそりの心臓部には赤い1等星のアンタレスがあり、さそり座をさらに印象深いものにしています。さそりのしっぽの部分はつり針のようにも見えることから「さそりのつり針」と呼ばれたりする場合があります。

 さそり座は南東の空から昇ってきます。ギリシャ神話では勇者オリオンを刺し殺したのが、このさそりです。そのため、さそり座が昇ってくるこの季節になると、オリオンはこそこそと西の空へ逃げて沈んでいくのだそうです。

 さそり座にはM4、M6、M7(Mはエムまたはメシエと読みます)などの大きな星団があります。双眼鏡などでも見えますので、星図を頼りに一度探してみると楽しいですよ。

北の空

 北の空では、5月の空で紹介したりゅう座がグッと高度を上げてきました。星の並びがグネグネしている上に暗い星も多いのですが、ていねいに形をたどってみてください。頭からしっぽまで、きれいに竜の姿が浮かび上がります。

 おおぐま座にある北斗七星の大きなひしゃくと、こぐま座でできた小さなひしゃくは、今月は縦方向を向いています。

 一方、カシオペア座ですが、横向きやM字型になっておらず、ちゃんとW字型に見えるカシオペア座を見ようと思えば、今月あたりがベストなのですが、いかんせん、高度が低い位置にあるのが残念なところです。北の空が地平線付近まで開けた場所で、本当の意味でのW字型をしたカシオペア座が見えるか挑戦してみてください。

6月15日21時 北の空

東の空

 6月になると、東の空からは夏の星座が続々と登場してきています。真東の空低くに見える1等星は彦星で有名なアルタイルです。アルタイルは大わしの頭部に位置するのですが、羽を拡げたわしの姿を想像するには、少しまだ高度が低いようです。

 北東の空からは、はくちょう座の十字形が昇ってきました。今の時期の白鳥は、右を向いて横向きに飛んでいる姿をしています。こと座は先月よりも高度を上げてきて、小さな平行四辺形が目につくようになってきました。

 南東の空の中ほどにはへびつかい座が横向きになりながら、「よいしょ」と昇ってきているところです。へびつかい座のアスクレピオスと頭をつき合わせているのはヘルクレス座ですが、今月は高度が60度付近にまで高くなってきました。天頂付近にまで上り詰めるのももうすぐです。

6月15日21時 東の空

へびつかい座

 へびつかい座は将棋の駒のような形をした大きな五角形の星の並びが特徴です。この時期の将棋の駒は横になった形で東の空から昇ってきます。へびつかい座は単独で見るよりも、へび座といっしょに捉えた方がわかりやすいかもしれません。将棋の駒の部分はアスクレピオスで、その両側からへびが取り巻いている姿が浮かび上がります。

 実は、黄道12星座に含まれていないへびつかい座にも天の黄道が通っています。しかもさそり座よりも長い距離を通っていますので、本来ならへびつかい座も黄道12星座に加えられていなければいけません。そんなわけで、星占いではへびつかい座も加えた黄道13星座が採用されている場合もあるようです。

 ギリシャ神話ではへびつかい座は医神アスクレピオスが蛇を持った姿だとされています。なぜ蛇なんかを持っているのか、と思われるかもしれませんね。実は昔のギリシャでは、蛇は健康のシンボルとされていたので、医神のアスクレピオスが蛇を持っていたとしても不思議なことではないのです。

こと座

 こと座が東の空から昇ってくると、夏も近づいたなあと思います。こと座の最輝星は0等星のベガですが、ベガは織姫星として有名ですね。織姫星の相手の星である牽牛星(彦星)はわし座の1等星アルタイルですが、高度がまだ少し低いので、こちらは来月に紹介しましょう。

 こと座は小さな星座ですが、ベガと小さな平行四辺形の4つの星が目印です。特に小さな平行四辺形はとても可愛らしくて、印象に残ります。

 こと座には環状星雲(またはドーナツ星雲)として有名なM57という惑星状星雲があります。小さな星雲なので見るのには天体望遠鏡が必要となりますが、いびつな唇のような姿は実に印象的です。つるちゃんが自分の天体望遠鏡で見た初めての天体は、実はこの環状星雲で、最も印象に残っている天体のひとつです。

 ギリシャ神話では、ギリシャで一番の音楽家であるオルフェウスが奏でた琴だと言われています。オルフェウスが琴を奏でると、岩も柔らかくなり、冥土の番犬ケルベロスもおとなしくなったと伝えられています。

天頂の空

 6月に天頂の空に見える星座はうしかい座です。1等星のアークトゥルスから北の方向へ大きな「のし」のような形をしているのが特徴ですが、少し暗い目の星が多いので、普段はなかなかわかりにくいものです。天頂付近にくるこの時期なら、大気の影響を受けにくいので、最高の条件で見ることができます。

6月15日21時 天頂の空

<恒星の凡例> <星雲・星団の凡例>
大きさにより1等星から6等星までを分類しています。 銀河、散開星団、球状星団、散光星雲、惑星状星雲、超新星残骸などを分類しています。