ベガ

 こと座のベガは織姫星として有名です。七夕伝説のとおり、夏の天の川のほとりにあって、彦星(アルタイル)の対岸に位置しています。実際にベガを見ることを考えた場合、七夕の頃よりも夏本番を迎えてからの方が高度が上がってきて見やすくなります。

星名 学名 星座 バイヤー符号 フラムスティード番号 赤経 赤緯 実視等級 絶対等級 距離 スペクトル型
ベガ Vega こと座 α星 3番 18h36m56s +38゜47’01” 0.03等 0.60等 25.0光年 A0

ベガの位置

夏の星座の最輝星

 ベガは夏の夜空で最も明るく輝く1等星なのですぐにそれとわかります。それというのもベガの明るさは0.0等星ですから、普通の1等星よりも1ランク明るいことになります。夏の星座の星はいずれもベガより暗いので、夏の夜空の一番星はベガになります。しかも高度が最も高くなった時には頭の真上で輝いて、まさに夏の女王といった感じがします。

織姫星

 ベガは七夕の星の一つ、織姫星として知られています。お相手の彦星(アルタイル)とは1年に1度、7月7日の七夕の夜にしか会うことが許されないという、とても可愛そうな夫婦です。
 
 七夕伝説は奈良時代かそれ以前に中国から伝わったと言われています。その中国では七夕伝説のとおり、ベガは織女と呼ばれています。日本では織姫の他、棚機(たなばた)、織女(たなばなつめ)、織り子星(おりこぼし)などとよばれます。
 
 しかし実際には、織姫星と彦星の距離は14.8光年も離れていますから、光の速さでも片道に14.8年もかかってしまう計算になります。あまり夢のないことを言ってはいけませんね。

落ちる鷲

 ベガはアラビア語でアン・ナスル・アル・ワーキとよばれ、「落ちる鷲」を意味します。アルタイルが「飛ぶ鷲」を意味しているのとは対照的です。アラビアではこと座とわし座を合わせて「二羽の鷲」とよんでいました。

こと座の一部

 ベガの近くに3等星と4等星とで構成された小さな平行四辺形が見つかります。これがこと座になります。これはギリシャで一番の音楽家オルフェウスが奏でた琴だといわれています。

ベガと夏の大三角

 ベガは、わし座のアルタイル、はくちょう座のデネブとともに、夏の大三角を作っています。冬と春にも大三角がありますが、濃い夏の天の川を背景にした夏の大三角は、一番優雅で華やかなものかもしれません。また、星の色が3つとも白っぽい色をしていのも特徴です。

1万2千年後の北極星

 地球の自転軸は、歳差運動によって約2万6千年の周期で回転しているため、地球自転軸の方向は現在の北極星の方向から次第にズレていってしまいます。今から約1万2千年後にはベガが天の北極に5度まで接近し、現在の北極星に代わって北極星となります。

※つるぷらが描く珍しい天文現象の中にある12000年後の日周運動を参照してください。

高温星で高速自転

 ベガの表面温度は9600度もあり、太陽の51倍の光を放っています。半径は太陽の2.7倍で、太陽の2.6倍ほどの重さがあります。ベガは非常に速い速度で自転しており、自転周期は12.5時間です。これは、星が遠心力で壊れてしまうスピードの、なんと94%に達するのだそうです。

惑星があるかも?

ベガのまわりのチリのディスクの温度分布 ベガには惑星が存在する可能性が指摘されています。海王星くらいの重さの惑星が、太陽−海王星間くらい離れた距離を回っているかもしれません。右の図は、ベガの周りに広がるチリのディスクの温度分布を示した図で、*がベガになり、×は予測される惑星の運動を示しています。(提供:PPARC)